光田健一・Burning Pop Piano Trio+

光田健一(Vocal,Piano)、杉野寿之(Drums)、田中豊雪(Bass)、Cico(Per)

2004年3月22日(月) 渋谷7th Floor



 ここは渋谷の繁華街♪ 久しぶりに来た若者の街は生憎ながら雨模様というのにやっぱり人が多い。今日は初めての場所ですが、前来たことのあるON AIR WESTと同じビルにあって道順もわかっているから少し余裕。会場付近に到着すると、入場を待つお客さんであふれかえっていました。久しぶりといえば、歌中心の電気楽器バンド形態もしばらく御無沙汰していたんですよね。今回どうしても来たかったのはこの「バンドもの」が見たいがためでした。弾き語りや弦楽ももちろんよいのですが、初めて健ちゃんの世界を知った頃はバンド活動が中心で、なんと言ってもその時の楽しさが体に染み付いてしまっているものですから。今回は2年振りくらいで目にし、新鮮な気持ちでバンドならではのライブを存分に満喫することができました。

 ビルの7Fにあるこのお店、コンサートが終わってから打ち上げによく使っていた場所なのだとか。ピアノがあるので健ちゃんは前々から目を付けていたそうです。今日はライブのためテーブルは見当たらないけど、きれいに並んだ座席は籐を編んだものやら丸椅子やらソファやらまちまちで、そこらじゅうからかき集めたという感じです。

 客席がうす暗くなりメンバーが入ってきました。健ちゃんはピアノの位置につくと、まずはボイスパーカッションでリズムを刻み出しました。以前弾き語りツアーでもボイパはやっていましたが、それよりパワーアップしてる。とても真似できないような高度なものをいとも簡単そうにやっているので初っぱなから驚いてしまいました。

 ボイパのあとすぐさま演奏が始まりました。曲は『マド&レチ』や『ブリリアントリオ』からのものも多く、CDとは全然違った雰囲気になっていて「はっ」とさせられました。『愛に気付いた時』は、しっとり曲にメロディアスなベースがよーく響いて一層メロドラマ風に。また『SAME NAME,DIFFERENT GIRL』はラテンちっくなアレンジで、小太鼓(?)のぱりぱりと乾いた音が気持ちよかった。

 まだライブは始まったばかりだというのに、曲の途中で客席に向かってコール&レスポンスを試みたりして、ちょっとばかり強引な気もしたけれど、この先待っているものを思うと、早い段階からそのくらいは始めてないといけなかったんだよね。なんてったって今日は Burning Pop Piano Trio+ のライブだもの。

 MC第一声はこうでした。「みんな、もうフィッシュ・マック・ディッパー食べた?」 なんのこっちゃ!? (マクドナルドの新製品でアカペラ・グループのラグフェアが派手にCMやってるやつでしょ?知ってるよ、食べたことはないけど) 健ちゃんってたまにそういう突拍子もないこと言ったりするし、いつものことだと聞き流してましたが、よくよく聞いてみると、今ちょうどラグフェアのレコーディングに付き合っていてとても忙しくしてるのだとか。メンバーのことにも触れて、「音楽業界の宝を誰か育ててほしい」なんてことも言ってました。(あのぉ、自分で育てたりはしないの?もしや資金の問題!?なんてふと思ってしまった…って嘘です) じゃさっきオープニングでやったボイパは、ラグフェアの影響なのかな?若いメンバー達に刺激されて、健ちゃん自身もパワーアップしたのかも〜〜。

 MC第二声はこれ。「2月のライブの会場は原宿、今回は渋谷で、じゃ次は…代々木あたりでやろうか?」期待通り笑わせてくれました。ここまでくれば…そう、山手線。駅名を順番に早口で、何周かさせてましたよ。しかし早すぎてよく聞こえないんですけど〜。

 演奏した曲は『君に夢を伝えたい』『君の育った街へ』『Beginnings!』『いつか二人で』あたり。中でも、『いつか二人で』が印象に残ってます。健ちゃんはグランドピアノ弾きながら、右手側に置いてある鍵盤にも手を伸ばして両方同時に演奏、アルバムにそっくりなイントロが奏でられました。このイントロ、ギターの音だとばかり思っていたのでちょっと意外でした。あ、シンセでギターの音を作っていたということも考えられるか、そうかも。ほんとに久々に生で聴きましたが、やっぱり雰囲気がいいな。この曲は健ちゃんの歌声が光ってますね。

 4人だけでバンドなことをやるっていうのは大変なんだろうな〜。リードボーカルに2台の鍵盤とピアニカを駆使する健ちゃんがやはり一番だろうけど、多才なとっきーもベースを2本を使い分け、ピアニカでソロとったりもしてました。今回、Cicoさんはパーカッション兼コーラス担当で、わりと多めに歌ってましたよ。とっちんはドラム1本でしたが、見た目が昔と違っていてそっちのほうが気になってしまいました。かなり濃い目のサングラスにシャツの前ボタンを下のほうまではずして、ワイルド〜。
♪ジェントルズ情報
最近T-SQUAREで忙しい河野啓三さんが、この日少し前までいたそうで、啓三さんのうわさ話もありました。どうやら、今度の「T-SQUARE」のアルバムに啓三さんの曲が3曲入っているらしく、本人すごく喜んでたそうです。「T-SQUAREの サポートメンバーということなんだけど、実質はもうメンバーだよね?」なんて話も舞台では上がっていましたよ。そこですかさず啓三さんのものまねをする健ちゃん。「これはかなり似てる」らしいのですが、ご本人のおしゃべりをよく知らないもので何と反応してよいのやら。啓三さんにも出てきてもらって比べてみたいところです。

 今回CD未発表曲の演奏もありました。『Night and Day』は、元THE SQUARE 田中豊雪氏のチョッパーベースをフィーチャー。詞は少し聞き取ることができたのですが「表と裏」「すれ違い」なんかがテーマみたいです。年内にはアルバムを出すつもりだそうで、この曲も収録予定とのこと。

 新曲はもう一曲ありました。初めて聴いたのですが、これが良くってねぇ。 作ったのは少し前らしいのですが、『オレンジ』っていうタイトル。なんと言いますか、歌詞がずきずき来るんですよ。健ちゃんのまっすぐな歌を正面から聴いたら泣けて来るのは目に見えているので、ついそっぽを向いて聴いてしまいました。たちまちお気に入りです。これもアルバムに入るといいなぁ。

 休憩をはさんで、第二部の最初は健ちゃんひとりで現れて弾き語り。外は雨なので『優しい雨の中で』。先日亡くなった いかりや長介さんの著書の話で、「いかりやさんは高木ブーさんのことをいつも心配そうに見守ってたそうです」なんて歌詞にひっかけて話してましたよ。弾き語りはもう一曲あって、小田和正さんの『生まれ来る子供たちのために』でした。

 健ちゃんは、前回2月のBurning Pop Piano Trio+ ライブで歌ったらしい小田さんの『言葉にできない』を、「最近ラップ調で歌ってる人がいるらしいよ」なんていう強引な説明で、ほんのワンフレーズだけ ♪Yo〜Yo〜言葉にできない〜〜 とかなんとか、それっぽくラップ。不審に思いながら見てる人が多かったみたい。

 小田さん話はまだ続きます。なんでも、今年1月3日のこまばでのコンサートの次の仕事が小田さんのコーラスレコーディングだったそうで、「『まっ白』聴いたら、小田さんより自分の声のほうが大きいんじゃないかと思える」なんて。『たそがれ』のほうは、「まるで小田さんとのデュエットですね」ってうれしそうだったかも。

 (筆者の経験で話しますと、コーラスばっかりやってると耳がそっちにだけ集中できるように鍛えられてきます。特に自分が歌って覚えたコーラスは、出来上がった全体の音を聞いてもその部分だけ突出しているように聞こえてくることもあるんですよ。集中が解けたらなんでもなくなるんですけども。 あ、健ちゃんはそういう意味で言ったのではないのかな?どうなんでしょう。。)

 健ちゃん、歌うことが楽しいんだろうな。これまでいろいろやってきて、自信もついてきたんだろうな。「あの『まっ白』のコーラスの光田さん と言われるようになりたい」なんてことも話していました。これをきっかけに、コーラスや歌の仕事が広がるといいね。

 さて、メンバーがそろって演奏開始です。「僕のふるさとは東京じゃん?」なんて話しかける健ちゃん。これって東京弁?横浜弁?『帰郷』の時の紹介文句はこんな感じでノリを維持。でも歌はちゃんと真面目に歌うのだ(それが普通だって^^;)。

 このあたりから、本格的に盛り上がり体制に入ります。『Early Bird』では振り付け師とっきーが ♪ここん とリズムにあわせて軽く頭を叩く。『No Answer』『スクリーンの夢』と続き、次はマイナー裏打ち(?)のイントロ。ん?こんな曲知らないよ〜聴いていたら『English man in N.Y.』でした。レゲエみたいな曲だったのね。

 リズムはつながったまま転調があり、続いた曲は『東京エンプティタウン』。でも…完全にラップ調。歌うというより歌詞をリズムに乗せてそれっぽくしゃべってる。よく聞くと元の歌詞とは少しだけ変えてある。そして、ところどころでCicoさんも一緒に口調をあわせてラップする。それがまたおかしいんです、あまりにも揃いすぎていて。見ていて にやっ となっちゃいました。健ちゃんひとりだけなら、きっとそこまでおもしろくはならないだろうな。バンドの力だわ。

 この曲は長かったですよ。途中で山手線の駅をずら〜っとラップにしたり、メンバーに対して、口を突いて出るアドリブを演奏で返してもらうコール&レスポンス。演奏のほうはさすが ばっちりだったけど、山手線ではみんな苦労してました。Cicoさんには、健ちゃんはパーカッション対決を挑みまして、お得意のボイパで勝負。初め楽器で対抗していたCicoさんもボイパに切り替え健ちゃんに挑戦。難しくなるに従ってCicoさんは体張って はちゃめちゃになっちゃうし、健ちゃんにはどうにもかないません。一番最後のとっきーの「チョッパーベース選手権」にてやっと挽回することができたのでした。

 メンバーは一旦引っ込んだあと、お客さんの熱い拍手に迎えられて再登場。曲はとっちんの誕生日祝いの意味も込め、久々の『The Birthday Song』。「テレホーダイ」の詞が古くなってしまったので「IP電話」に替えて歌っていました。時代は移り変わってゆくものなんですねぇ。 最後の最後で歌った『誓い』。さきほどまでの大騒ぎはどこへやら。健ちゃんの叫びに、身をひきしめられる思いで会場をあとにしました。

 ライブ本編は、立ちたくて うずうずなんだけど立てないので、やたら体でのって聴いてました。今後もし同じようなライブをやってくれるなら、立って踊りたいな〜。 全体を通してピアノのアドリブ演奏も所々でありましたが、今回のソロはどれもジャズっぽかったです。
 記憶があいまいな部分もあり、間違っているところ、演奏曲の漏れもあるかもしれませんがお許しください。 長時間のご講読ありがとうございました。今回書くのに手こずった〜とは内輪の話。
 
(04.5.12〜16 そにあ)