欧羅巴研修


 ヨーロッパとはアジア西北に続く、ユーラシア大陸の西に位置する。東アジアと陸続きで、三方を海に囲まれているため、気候は海の影響を受けて緯度のわりには温暖である。ギリシャ、ローマの高度古代文明を経て、中世の約千年間キリスト教的統一文明圏を形成し、世界でもっとも早く産業革命を成し遂げ、近代文明をリードすると言われていたときもある。
飛行機による移動中、ヨーロッパの農村部を空から見ると、緑の牧場、手入れの行き届いた広大な畑と、直線上に区画された平地林が目につく。そしてまっすぐな長い長い道が走っており、道と道の交わったところに赤い瓦の屋根の家が集まっている。その中心部には教会があったり、広場があったり人々が交流する場となっている。日本との違いは平地がとにかく広いことである。畑が広い。区画された畑をトラクターが作業をしているのを見ると規模の大きさに驚愕してしまった。
 最初に訪れた国はオランダ。面積は九州と同じぐらいである。国土の周りを大国に囲まれており、長いものには巻かれろの精神で、話す言葉は実にいろいろである。
 オランダと言うと頭に浮かぶのはチューリップ、風車、運河、きぐつである。これらの事はそれぞれ関係があるとは私は知らなかった。オランダの歴史とは水との戦い、干拓の歴史なのである。人口の割に農地の少なかったオランダではすでに12世紀頃から堤防を築いて、湿地を干拓して農地を広げてきた。長い歴史を経て、海面より低い干拓地が広がっていった。
湿地を歩くのにふつうの靴では濡れてしまうので、木の靴を考え出した。干拓地なので水路が土地より高いところを流れている。水路に水を流し入れるため汲み上げるのに風車を使った。そして、その肥沃な土地にチューリップを栽培し、運河で球根などを運んだ。昔は小規模農業であったが今は、大規模農業が増えている。港を埋めた広大な土地が発生したためである。また、世界的な流れで大資本大規模大事業ではないと生き残れない時代なのである。 
酪農でも有名だが、今数多くの問題が存在している。GATTの政策、EUの政策として牛乳の乳量は制限され、売上減少している。肉牛も、イギリスの狂牛病の影響などを受け、卸値が下がっている。牛のふん尿の始末にも問題がある。酸性雨の原因のアンモニアのため畑に蒔く事はせず、土に埋めるのが基本である。冬は地下水を汚染するので畑に出しては行けない。
 今回訪れた酪農農家の話では、「現状維持が精一杯である。まだやって行けるだけいい方だ、周りにやめていく農家はたくさんいる」と、言っていた。週に60時間働き、休みも交替制で年に10日位だそうだ。長い夏休みをとり、家族で長いバカンスに行くのは農業従事者にとっては無理な話しなのであろうか。
1990年、ベルリンの壁が壊されというニュースが世界中に流れた。そして、その6年後のドイツを訪れた。白ワインの国ドイツである。ドイツワインの生産量は世界の約3%にすぎないが、知名度で言えばフランスと並ぶワイン大国である。
ラインガウと言う有名な栽培地域にあるリューデスハイムを訪れた。ラインガウは、ドイツの11のぶどう栽培地域の中で面積は3%を占めるにすぎないが、北風をさえぎるタウヌスの丘があり、南側には大きなライン河あり太陽の光を存分に受ける事ができる恵まれた土地である。そこには有名な畑や醸造がひしめき、知名度では最も高い場所と言える。
これほど恵まれた土地でも抱えている問題がある。ヨーロッパ統合で生産過剰
になりだし、生産量を調節するために休耕地に補助金を出している。日本で言う減反と同じである。そのため手入れしない土地が増え、その土地から病害や害虫が発生してしまう。更に農業経営者の平均年齢が高くなっていて、後継者がいない。
 風土気候文化の違いはあるけれど、どこでも同じような問題を抱えているものである。
アルプス山脈が南部を走り、風光明媚な観光地が多い永世中立国スイス。農家を守る事でそこの景観、景色が守られると言う。この短い文の中に意味するものは、途轍もなく大きいものがある。この考え方にカルチャーショックを受けた人は多いと思う。私もその一人である。日本の農業政策の根底を揺るがすような考え方、と言ってもいいだろう。人口減少で過疎に悩む町や村、観光客誘致に頭をひねっている町や村、この言葉から学ぶものは多々あると思う。
最後の訪問国は、華の都パリを首都に持つフランス。世界最大のイベント、サッカーワールドカップ、フランス大会が開催される2年前である。
 フランスでは、ファームステイをした。異国の文化を肌で感じる事ができとても貴重な体験をした。
 私の家は、リンゴ農家である。フランスとドイツのリンゴ農家を訪れたが、ヨーロッパのリンゴと日本のリンゴを比べると、味や大きさが違う。それは気候、土地、育て方が違うので当然かと思うがそれだけではないようだ。
 日本では見た目を重要視するところがある。大きいものを珍重する傾向がある。最近では、消費者の意識改革が進んでそれほど外観にとらわれなくなっていると言われているが、まだまだ外観重視である。更に糖度の高い、甘いリンゴを品種改良を重ね追い求めてきた。今現在も追い求めている。
 その点ヨーロッパのリンゴは、それほど大きくもなく見た目も決していいとは言えない。味も酸味のあるリンゴが多い。ヨーロッパの人達は見た目はどうであってもおいしさ重視ということになる。しかしそれだけとは言えない。根底にあるのはヨーロッパと日本の食文化の違いである。西洋的な食事はデザートに甘いものを食べる。さらに食後の果物として、甘いリンゴなどと言うのは必要ないのである。大きさも日本のリンゴより二回りほど小さい。ズボンのポケットに入らないとダメだそうだ。これもまたカルチャーショックである。
神武天皇建国の地とする倭の国、日本では農業を従事する人が減少している。経営者が高齢になり、後継者がなく、やめていく農家は多い。わたしは、これからは農業の時代であると信じている。異常気象や世界的な人口増加のため、今後農産物が今までのように、輸入できないかも知れない。そうなると国内で自給自足しなければならない。しかし、そうなってからでは遅いのである。
 広辞苑で「農業」という字を調べてみた。地力を利用して有用な植物を栽培耕作し、また、有用な動物を飼養する有機的生産業。
今回の研修を終え、ヨーロッパのすばらしい国々を訪れ思った事は、どこの国でも抱えている問題は同じようなものなんだと。でもそこで生活している人は陽気で気さくな人が多かった。私自身今回の経験を生かし将来進むべき道を、今後の農業のあり方を模索して行きたいと思う。ただ一つ言えるのは、地球に優しい農業を忘れない事である。


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