ダンス・ホール
「私は、ジルバの曲に合わせて、軽やかにステップを踏んでいた」、と言ったら、
たいそうきざな奴だと撮られてしまいそうである。
それはダンス・ホールでアルバイトをした時の出来事である。
そこは信陽舎のある武蔵境駅から、一つ東京よりに行った三鷹と言う駅の近くにあった。
今もあるかどうかは、分からない。たしか北口から歩いて五、六分行ったところにあった。
恐らく、私が入寮する以前から信陽舎宛に求人依頼が来ていて、
必要に応じてアルバイト学生のクローク係りを募集していた。
なぜか聞いたためしはなっかったが、とにかく朝方に電話がかかってきては、
「必要だから来て欲しい」とのことであった。
ちなみに公衆電話にかかってきたその伝言を受けると、
誰かしら大急ぎで暇な寮生に聞いてまわり、責任を持って対応していた。
非常に真面目で信頼に足りた。
でなければ電話でのバイト募集もとっくの昔に消滅していたに違いない。
口頭だけのやり取りではあったが、立派に信頼関係が出来ていた。
寮側にバイト番が居たわけではないが、そのような対応システムが、
言い伝えで長い間には出来上がっていた。
幾世代にも亘って、先輩達が信用を得てきたのであろう。
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