99/12/12 記
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99.12.12 星バウ『エピファニー』〜十二夜より〜

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 日程が短い上に、青年館『夢・シェイクスピア』と重なって、というのが個人的に(^^ゞきつかったのですが、駆け込みで9日18時半と、12日14時半(千穐楽)の2回を観てきました。

☆作品について

 「十二夜」よりとのことですが、オリヴィアに当たる鞠(妃里)のお父様に、森鴎外の「舞姫」の話を当てている様です。この二つの話を織り交ぜて、明治初期の時代の雰囲気も良く出ているし、作・演出の大野拓史先生がプログラムの言葉にも書いていた「あり得たはずの輝かしい姿としての女優の誕生」を描くことにも成功していると思います。1回目の観劇では、「十二夜」のどの役をどのように当てているのか?ということについつい気を取られてしまった上、微妙に役どころや比重が異なっている部分もあって戸惑ったりしたのですが、上手くこの時代の話に当ててアレンジして、ストーリーにも破綻なくテーマを描き切っている辺り、面白い、良いお仕事をされていると思いました。大野拓史先生は、これがデビュー作となりますが、今後も期待出来そう(*^^*)と、私は思いました。

 さて、その「十二夜」との対比で言えば、歌舞伎役者・来光屋高五郎の妹で、高五郎になりすました・おたか(=ヴァイオラ/彩輝直)と、そのおたかに恋心を持つ毛利鞠(=オリヴィア/妃里梨江)が中心となっており、鴛鴦座の座元・入谷成義(=オーシーノ公爵/司 祐輝)の比重は減っています。これについては、おたかが実は女であったということを明かすことによって、恋の成就よりも「女優の誕生」ということを、大野先生が描きたいと思っていたからでしょう。・・・ということで納得しました。
 鞠の父・毛利森太郎(夏美よう)に、ドイツの舞姫エリスへの憧憬を持つ「舞姫」の主人公を持ってきて、破門になった鴛鴦座の座元・入谷(司)や、おたか(彩輝)との間に障害を作ったのも、面白いな、と思いました。
 で、たぶん、サー・トービーが内務省官僚・福永桜助(朝澄けい)、サー・アンドルーが岡田(嶺恵斗)、マライアが毛利家の女中・丸井八重(美椰エリカ)だと思うのですが、こちらは何か面白いいたずらをしでかしてくれるかな?と結構期待していただけに、あまりそれらしいいたずらもなくてちょっと寂しかったです。でも、「女優の誕生」というテーマから見たら、実は重要な伏線を担っているのですね。福永がいちいち気障った振りをするのには、大いに笑わせて貰いました(^o^)。
 おたか(ヴァイオラ)の兄高五郎(=セバスチャン/彩輝直=二役)をかばう新五郎(=アントーニオ/真飛聖)が結局、決闘騒ぎの導線になって、この(ストーリーの)当て方も面白いな、と思いました。
 この他、鴛鴦座 の歌舞伎役者・三枡屋霧蔵(にしき 愛)と、如月十四朗(大洋あゆ夢)のコンビが、笑いを取りながら上手く芝居を締めていて、良い味を出しているなと思いました。
 笑いと言えば、決闘のシーンで、おたかが「大丈夫、私も長刀習っていたから」というワンポイントも可笑しかった(^^)。
 ラスト、ヒロイン役(?)の鞠が失恋しちゃう立場でどうなるのかなと、余計な心配(^^;をしていたら、そう言えば彩輝直さんが、二役でおたかの兄高五郎でもありました。おたか中心のお話を見続けて来た後に、和装の高五郎(彩輝)と洋装の鞠(妃里)としてのデュエットがあっても、そのまま続きとして違和感のない辺りが、私達観客も、さえちゃん(彩輝)の2面性にコロッと騙されているな〜(^^;;;; と思っちゃいました。で、この騙され方は、そのまま宝塚歌劇に通じるような・・・。
 反面、わかりにくかったのは、「子供の鞠(彩愛ひかる)」「ドイツ時代の森太郎(朝澄けい)」をわざわざ別キャストに当てたこと。違う人(役)が出てきたのか?と思って混乱してしまいました。「子供の鞠」は妃里さんで充分いけるしその方がわかりやすいし、「ドイツ時代の森太郎」の方は、ちょうど福永(朝澄)がいつどんないたずらをするのかなぁ?と思いながら見ていたこともあって、「福永」がドイツで何をしようとしているのかなぁ?なんて思って観てしまいました。あと、これはわがままですが、森太郎がこれほどまでに愛していたエリス(星風エレナ)は、ワンポイントとは言え、やはりもっと美しく出て頂きたかったです。
 シーンでは、おたかが迷う心の内を表現していると思われるシーン(二幕後半だったと思うけれど)で、おたかを巡る人物が、からくり人形の様な動きをしていたのが、雰囲気があって良かったです。
 また、音楽も「楽興の時」などピアノ曲の小品をいくつか使っていて、それがレトロ調の雰囲気とテンポ感があり、場面に合った上手い使い方だなぁと印象に残りました。
 あと、ラスト近くで、突然通行人の男女が「高五郎は女だって」みたいな意味の歌詞を歌い踊りながら出てくるところ、これって植田作品(例えば風共)のパロディ?と思ったのは、私だけ?

☆出演者について
 全般に、脇を締める上級生の好演で脇を締め、お芝居の厚みをグッと増しているな、という印象。下級生が下手と言うわけではないのですが、味わいを出せるには、まだまだ年季がいるということでしょうか。

☆おたか/高五郎<彩輝 直>
 上でも書きましたが、この女(おたか)と男(高五郎)の二役が違和感なくはまるのは、さえちゃん(彩輝)をおいて他にないでしょう。女性としても綺麗だし、おたかの内面性も良く表現しているし。ということで、やっぱり適役だと思います。

☆毛利 鞠<妃里 梨江>
 明治時代の良いお家のお嬢様という役が、本当にはまる人だなぁ、と実感しました。ドレスが似合ってとても綺麗です。さらに情感の幅を広げることが出来れば、言うことなしだと思います。あ、歌ももうちょっと、ですが(^^;。

☆毛利 森太郎<夏美 よう>
 いかにもハッチさん(夏美)な役だなあ、と思って安心して観ていました。

☆入谷 成義<司 祐輝>
 なんとオーシーノ公爵に相当する役!と思った割には、控えめな出番で寂しかったのですが(^^;、座元としておたかを見守る包容力がある上、森太郎の元を破門されながらも鴛鴦座座元として頑張る、青年らしいひたむきさ、清々しさも感じられて良かったです。

☆福永 桜助<朝澄 けい>
 部下の岡田(嶺 恵斗)を従え、いちいちオーバーな振りが、なんとも可笑しかったです(^^;。企みの内容が、自分の出世に関することになった部分が、いたずらのためのいたずらだった原作より(私的には)面白みが少なくて、ちょっと損したかな、という気もします。

☆丸井 八重<美椰 エリカ> 
 表情豊かで上手いですね。福永と同じく、企みの面白みが減った分が、もったいなかった気がします。いつかエリカちゃんがヒロインの作品も観てみたいなあ・・・。

☆三枡屋霧蔵<にしき 愛>&如月十四朗<大洋あゆ夢>
 良かったですっ!!!
 特に大洋さんの女形なんて、怖いものみたさ(^^;(失礼!)かな?と、観る前は思ったりしたのですが、お二人とも単にお笑いに走るのではなく、人情味ある歌舞伎役者ぶりを見せて下さいました。こういう人たちがお芝居を締めて下さるのね〜、と実感しました。

☆安東 新五郎<真飛 聖>
 「いなせ」という言葉がよく似合う、元巾着切りでした。お六(原 美笛)という女がいたり、良いよね〜。

☆(築地精養軒)支配人<千歳 まなぶ>
 千歳さんは、助高という来光屋にお仕えする人の役もやっているのですが、ここはワンポイント、築地精養軒の支配人の「お客様〜」が、大受けでした(^o^)。

☆小堀 <水城 レナ>
 純情生真面目、バイオリンの上手な書生さん(^^)。いわゆる美味しい役だと思いますが、良い味出していて、気に入りました。

☆玲<陽色 萌>&喜美子<毬乃 ゆい>
 鞠(妃里)のお友達で、ちゃっかりした玲と、ちょっとおとなしめの喜美子の対比が良く出ていたと思います。玲の方が断然目立っていたけれど(^^;。

 短い公演期間(そう言えば、千穐楽の組長夏美ようさんのご挨拶でも、「短いようで短かった」(笑)とおっしゃっていたような・・・)で、ご覧になれた方も少なかったかもしれませんが、なかなか面白い作品だったと思います。
 新しくデビューした大野拓史先生のこれからにも、期待したいと思います。
 あ、それともちろん、これから全員揃っての1月1000days公演に臨む星組の皆様にも・・・(*^^*)。

P.S.
 12日千穐楽のお客様・・・水瀬あおさん、涼紫央さんがご覧になっていました。

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    ゆい (GEA02432@nifty.ne.jp)