通勤冷房車登場
今年(2001年)の夏は暑い。去年も暑かったが今年に比べれば...、なんて事を毎年言いながら21世紀に入ってしまった。少し前までは冷房という環境はこちらから求めて行かないとその恩恵に与れなかったが、最近は冷房のない環境を探す方が難しい。
鉄道の世界も70年代に入ると冷房化の波が通勤電車にも寄せて来るようになった。その当時は人工的な涼しさに妙な新鮮味を感じたことをよく憶えている。今は冷房の有無などははなから問題にならず、その質が問われる時代となった。
振り返るとこの頃、お菓子は甘ければ甘いほど美味しかったし、冷房は強ければ強いほど快適だった。ノンシュガーとか弱冷房なんて概念はまだ市場に認知されていなかったのである。
72年、我らが西武電車もついに通勤冷房車を持つこととなった。その頃所沢駅の切符売り場の横に置いてあったのが左のパンフレット。記憶が正しければ新車のパンフレットとしては、この3年ほど前のレッドアロー登場以来ではないかと思う。
喫茶店の入り口などには「営業中」の札に並んで「冷房中」というのも掛けてあった頃で「おまたせしました」の一言にこの時代の空気と会社側の誇らしげな意気込みが凝縮されている。
性能的には今の時代の電車の方が数段優れているに違いないが、当時の表現を借りれば「通勤電車にクーラーが付いた」ということは旅客の日常における革命的な出来事で、シートピッチを拡げようが足回りがどうだろうが、これを凌ぐ旅客サービスは今日まで現れていない。
二つ折りのパンフレットを開いてみると、新型登場!、快適通勤!、強力冷房!、と大きな文字が並んでいて、車内見取りの説明と集中、分散の両冷房機の写真と一緒に家庭用クーラー(この頃エアコンとは言ってなかったと思う)84台分という説明が添えられている。
この冷房試作車は6本位が立て続けに作られ主に池袋、秩父線で運用されていた。当時は車両冷房機は分散式が主流で、今も特に民鉄はその傾向が強い。対して国鉄は通勤型に関しては集中式を貫いている。妙な例えになるが、分散式が魚の背ビレなら集中式は亀の甲羅のようで、スピード感がまるで違う。
個人的には分散式の冷房機が好きだ。これに少し遅れて101系の6連化に伴う改造冷房車が出たが、それは6両全部が集中式冷房機で、出場前に所沢工場の柵によじ登って覗いて発見したときの軽いショックがいまだに思い出される。
右はパンフレットの裏面だが、何ともシンプルだ。シンプルは良いが、車両諸元と社名しか書いてない。一般旅客向けにこんな事書いて誰が読むんだという気がしないでもないが、当時まだ「質より量」と揶揄されていた西武が狭軌bPのパワーを誇る101系を得て、それに冷房が付いたわけである。それだけに冒頭記した会社側の誇らしげな意気込みがこのパンフレットの表と裏から十分すぎるほど感じられるのである。