改修されたA-F88の解析


対象

サンプル

A

B

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型式


SN
BARCODE   
基板
HEAD
メカ

98年式A-F88
 メーカー改修後

1228****
T4904550557374
PB796170177825C
CHWA6QK-B2D90***   
81123***

98年式A-F88


7738****
T4904550447376
PB7961-70177825D
CHWA6QK-C2E81***
90624***

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改修内容、基板上面から

1.サンプルAではサンプルBに存在するインダクタL203(右写真右1/3)が無い。もともと基板に印刷されている事から、サンプルAでは生産工程で省略されていたようである。ただし基板の裏を見ると、後述の通りインダクタ?と思われる部品がL203の代わりにハンダ付けされている。

2.サンプルAではジャンパー312(メカの陰で写真では見えない)がカット(引きちぎる)されている。一方サンプルBでは基板印刷はあるがジャンパー312が実装されていない。これは検波用IC(T1251CF)周辺の回路変更に伴うものと考えられる。

また三次元DNR付近のジャンパー301(左写真右1/3下部)が除去されている。サンプルBではジャンパー301の基板印刷も無く、この部分も設計変更されている。


改修内容、基板下面から

1.まずサンプルAでは基板前部制御回路付近に0.1uFマイラーコンデンサーが追加されている。理由は不明だがノイズ対策と思われる。(写真には写っていない)

2.サンプルAでは基板中央部付近に2.2kΩ抵抗が追加されている。目的は不明だが、検波ICの追加回路の制御と関係があるかも知れない。(写真には写っていない)。

3.サンプルAでは基板後部、検波、画像処理用IC(TA1251CF)付近にトランジスター2個(C245,A1048),抵抗が3個追加されている。この動作を解析すると、抵抗2個はトランジスターC245のバイアス用であり、トランジスターC245は写真左よりビニール線で伝えられた制御電圧によってON-OFF動作をする。

次にトランジスターA1048はC245によって制御され、抵抗R226(1.4kΩ)に対して追加抵抗3.5kΩを並列に追加する働きがある。なお抵抗R226はTA1251CFのp55とp58の間でCR回路を構成している。

この回路の目的は不明であるが、レベルもしくは時定数切り替え回路と考えられる。なおこの回路に接続するジャンパー312が基盤表面でカット(引きちぎる)されている。

4.サンプルAでは基板後部の検波出力から三次元DNR回路へ至る部分で、抵抗R236が除去され代わりに型番不明のトランジスターが追加されている。トランジスターからは10pFコンデンサーとインダクタ?が直列に接続されている。また追加抵抗1kΩが追加されている。この周辺には前述の通りインダクターL203の代わりにインダクタ?が裏から追加されている。

この回路の目的は不明であるが、輝度検波出力から三次元DNR回路に至る回路において、何らかのフィルター(ハイカットおよびノッチ?)を構成しているように見受けられる。


総括

1.改修について

サンプルAのおもな改修として、検波用IC周辺で制御信号によってR226の抵抗値を修飾する回路が観察された。これはドロップアウト補完回路のレベルもしくは時定数を調節する回路と推察される。また三次元DNR周辺の追加回路はフィルターを構成すると推察されるが、いずれも回路図が不明のため確定的なことは言えない。

制御部でのコンデンサー追加はノイズ対策と思われるが定かでない。また制御部の抵抗2.2kオーム追加は不明であるが、検波用IC制御と関係あるかもしれない。

2.改修工作の品質について

改修のハンダ付け等の改修工作品質は劣悪である。基板には多数ハンダ屑の残留を認めた。

部品にはチューブなどの被覆はなされておらず、また接着剤による固定もなされていない。三次元DNR付近では部品同志が突き合わせハンダされ単にテープ被覆で固定されているだけであり、経年変化や輸送等で脱落する可能性がある。改修工作品質のレベルはメーカー改修としては劣悪としか言いようが無い。

3.99年式A-F88との違いについて

サンプルB(99年式A-f88)の検波回路周辺は、サンプルAの改修前と基本的にほぼ同じでR226の抵抗値1.5kΩも変更されていない。ただし、サンプルBではサンプルAに実装され改修でカットされたジャンパー312が基板印刷があるにもかかわらず最初から実装されておらず、この部分の動作条件が変更されている。

三次元DNR回路周辺ではL203の部分へサンプルAの改修で裏面で追加されたインダクター??と異なり、最初から他のインダクタと同じ形状の部品が実装されている。またジャンパー301が印刷とともに削除されている。これはこの部分が設計変更されたことを示している。

まとめると、サンプルAでは検波回路付近にスイッチングによる抵抗値修飾回路が追加されており、また三次元DNR付近においてフィルターと思われる回路が追加されている。

サンプルBでは、サンプルAのような追加回路は存在しないが、ジャンパー312の削除により同様の効果があるのかも知れない。またジャンパー301の廃止とインダクターL203追加により、三次元DNRに至る回路が設計変更されている。

これはサンプルAの不具合に対する改修の結果から、コストや改修に要する手間を勘案して設計変更が行われ、それがその後のサンプルBの生産に反映されたと考えられる。

なおサンプルAの改修工作のレベルは信じがたい程劣悪であった。

4.三倍速S-VHS再生について

サンプルA,Bともに三種類のS-VHSビデオ(SO社,V社、SA社)で録画したテープの通常の再生では問題なかった。ただしサンプルBにおいてSO社ビデオで極めて輝度が高い画像を再生したときに、接続した三次元Y/C分離回路付きテレビで垂直同期が不安定になる傾向があったが、通常のテレビではその現象は無かった。