● LL750/ は、生まれ持っての持病持ちだった?
DC出力電圧が15VのACアダプタを使用するこのシリーズのパソコンには、生まれ持っての「液晶用バックライト電源供給停止」という欠陥がある。この欠陥は、バックライト用スイッチング電源の平滑に使用されているコンデンサ(タンタル型)が使用経年を経て、特異な故障モードを現象させることにある。
その故障モードのメカニズムは明確に確認されていないが、このコンデンサのリプル電流耐性が経年により低くなり、この耐性の限界点で一時的にショート状態になると考えられる。このショートにより、このスイッチング電源の保護回路が動作して、出力電圧をゼロにするため、バックライトが点灯しないのである。
この現象は、バッテリー動作で発症せず、ACアダプタ動作で発症する。その理由は、バッテリーよりもACアダプタの方が供給電圧が高く、その分このスイッチング電源の動作でより高いサージ電圧が発生し、その結果のリプル電流の増大で先に説明したコンデンサがシュートに至ると推測される。このような理由から、ディスプレイの明るさを下げるとリプル電流も減少することから、例えば100%の設定なら75%にして回避できた実例がある。
ちなみに、このコンデンサの耐電圧は6.3Vであり、その印加電圧は5.3Vであり、余裕は1Vしかない。
さてこの故障の原因は、先の説明にあるコンデンサであるから、ディスプレイの明るさを下げることで解決しなければ、それの交換となる。交換するコンデンサはタンタル型の 330μF/6.3V であるが、本来なら10V程度の耐圧品が理想だが取り付けスペース関係で問題がある。それでも、明るさを下げて使用するなら、リプル電流の減少で寿命を確保できると思われる。
▲問題のコンデンサは、ヒンジ側のバッテリーカバーを外すスライドレバーの直下にある(NEW JN8 と印字された部品)。手前のコネクタは、液晶パネルに配線された信号線のものである。なお、この基板には黒い保護フィルムが貼ってあるので、それをはがさないと以後の作業ができない。
● コンデンサ交換の準備
コンデンサ (ヤフオクで入手) |
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半田こて先の形状 |
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ピンセットの形状 |
▲準備するものは、コンデンサ、セロテープ、半田(0.6ミリ径)、半田こて、ピンセット、アルコール、綿棒などで、半田こてのこて先は、広い面積を加熱できる形状と、ピンセットは、基板とその上に取り付けの部品との間に爪が入るような形状が最適に作業できる。なお、コンデンサの形状が大きいことと、基板の半田付け部分が面パターンで熱が逃げることから、半田こての発熱電力は30W〜40Wが必要である。
● コンデンサ交換
▲放熱ファンを取り外し、作業の邪魔になる手前のコネクタを抜き、ケーブルごとファン側に引っ張り固定する。基板のコネクタはセロテープで覆い、半田付けの際のフラックスが付着しないようにする。
▲問題のコンデンサを取り外した状態。取り外すコツは、コンデンサに向かって右側の電極の半田を溶かし持ち上げて基板から離す。左側の電極は半田こてが入り難いので半田は溶かさず、持ち上げたコンデンサを左右に揺さぶって電極の金属とコンデンサを引き離す。基板に残った電極の金属片は、半田を溶かしそのまま半田こてを横にスライドすればきれいに取り除ける。取り除いた後に残るフラックスは、綿棒にアルコールを浸し拭き取る。
▲補修のコンデンサを取り付けた状態。取り付けるコツは、コンデンサの裏面の中央一点に極微量の瞬間接着剤を塗布し、基板に固定してから半田付けをすることである。くれぐれも接着剤は微量に... また半田付けは、コンデンサと基板が十分温まるよう半田こてをしばらく押し当てて置いてから、半田を5ミリほどぐうっと溶かし込むときれいに仕上がる。
■交換したコンデンサの資料は こちら
以上、修理作業の内容は簡単なものであるが、修理作業以外のことで基板を破損する恐れもあることから、自信のない方は無理にチャレンジしないように!
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