安物デジカメの使いこなし (収差編) モデルカメラ FP6900Z (M 4)

 最近のデジカメは、コンシューマ向けでもレンズの性能を除けば印刷物に使える性能を維持している製品が多く発売されるようになった。

 性能の良いデジカメは、製造コストの多くが撮像素子関連と撮像レンズに消費されるが、価格を抑えたデジカメはこのレンズがコストダウンの犠牲になっている。コストダウンされたレンズは撮像周辺部にその犠牲が見られ、現象として、歪曲収差・色収差・コントラスト低下などのほか、組立精度の低さが原因の片ボケなどがある。

 デジカメで得られる「絵」はデジタルデーターであり、手軽に修正できるので、レンズに起因する問題を解決すべくその方法を探った。

歪曲収差(樽型、糸巻型)と色収差(にじみ)を解決する

 今回の作業では、アプリケーションに「Photoshop」を使い、フィルターに「PanoramaTools」というプラグインを使ってみた。

 「PanoramaTools」は http://www.all-in-one.ee/~dersch/ から入手(フリー)できる。
このリンクが消えて入手不可能な場合は管理人にお尋ねください。

 このプラグインは、QuickTime の360°パノラマ画像製作用に開発されたもので、高度な画像処理を行なえる。さらに、GraphicConverter、Windows 版Photoshop にも対応できるプラグインが用意されている。

歪曲収差の補正には、フィルター「球面」でもできるが、色収差の補正には大変手間取るので実用的ではない。


歪曲収差(直線の歪み)を補正する

サンプル A

広角補正前

広角補正後

の画像はレンズを広角にセットして、タイルの壁を撮影したものである。補正前の画像は中心部が膨張し、周辺部が収縮して全体の輪郭が樽型に変形している。



サンプル B

 

望遠補正前

望遠補正後

の画像は「サンプル A」を撮影したデジカメのレンズを望遠にセットし、タイルの壁を撮影したものである。広角の時とは逆の状態になり、全体の輪郭が糸巻型に変形している。


サンプル C

広角補正前

広角補正後

 タイルの絵ではどうもイメージがつかめないので建物を写したのがの画像である。
 ワイドコンバージョンレンズを装着した時など、さらに歪むので、色収差も含めて完璧に補正できる「PanoramaTools」は有用である。

補正結果の詳細画像を見る


色収差(色のにじみ)を補正する

サンプル D

補正前

補正後

 色収差の単純なものは、RGB各色の全体サイズの不一致が原因であるから、RGBのどれか一色を基準にして他の色を合わせれば解決になる。

 の画像はサンプル D の矢印部分を拡大したものである。補正前は輪郭部に赤色とシアン色のにじみが確認できる。この例の場合、R G B 各色の内、R が膨張してにじんでいるので、その逆の補正を施せば解決になる。補正後の例では G B 各色を 0.1〜0.2% 膨張させた。


補正の実際

 光学系の歪みの補正は「PanoramaTools」の4項あるメイン機能の内、 Correct を使う。さらにサブ項目の Radial shift が今回の補正の主役である。
 「PanoramaTools」は、画像の中心から外側に向かって、4ケ所のポイントで独立した補正ができ、ズームレンズで生じる複雑な歪みにも対処できる。

サンプルACの設定例

 糸巻収差の場合、b は周辺部を収縮させる設定になる。その結果、画像サイズは元画像より小さくなるので d の設定により元画像のサイズに拡大する。


サンプルBの設定例

 糸巻収差の場合、b は周辺部を収縮させる設定になる。その結果、画像サイズは元画像より小さくなるので d の設定により元画像のサイズに拡大する。


サンプルDの設定例

 色収差の場合、d の設定のみでほとんど解決できる。歪曲収差と組み合わせる場合は、歪曲収差の設定に、色収差の設定の変化率を加算すれば同時に処理できる。

ヒント! シャープをOFFあるいはSOFTに設定して撮影し、色収差補正後にシャープを施すと画像周辺部のシャープ感が増す。


PanoramaTools が良いのは分かるけどもっと簡単なソフトはないの!

 Win OS 版では庭師 芝達さんの「ImageFilter」があり、設定はレバー操作のみで簡単。ただし、色収差の補正はできない。

http://homepage2.nifty.com/niwashiclub/ から入手(フリー)できる。
(現在リンク切れ)

 Mac OS 版では、田中 康之さんの「Photonick」があり、これもレバー操作のみで簡単なのですが、色収差の補正はできない。

http://hp.vector.co.jp/authors/VA008636/から入手(フリー)できる。

何れも優秀なソフトですが、歪曲収差は必ず色収差を伴っているのに、色収差を補正できないのが残念だ。

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