● タナと当たりの出方

当たりの出方とタナとの関係について,あまり語られることが少ないので述べてみたい.

通常,黒鯛の当たりは前アタリの後,ゆっくりと浮きが入っていく,といわれる. しかし, これはタナが比較浅い,底を大きく切っている場合の当たりの出方である. 底付近を狙っているときは,むしろこういう当たりは少なく, 浮きがスーッと沈まず,ある程度入ってから止まってしまうことが多い. この当たりの出方の違いは,主に餌を加えた後の黒鯛の動きの違いからくるものと思われる.

タナが浅い場合
餌を加えた後,黒鯛は上下,前後左右に動き得る. 上下の動きなら,上で食いあげで,下なら素直な浮き入りとなる.
前後左右方向の動きならどうだろうか? よく”餌を先行させ仕掛けを張る”といわれるが,仕掛けを張った方向に黒鯛が走れば素直な浮き入りとなるだろう. それなら,張った方向と逆に黒鯛が動いたら,浮きに当たりが出ないことになる. 黒鯛が潮下で流れてくる餌を待ち構えて食べたとして,その後,張りの方向に移動するには黒鯛は反転しなければいけないことになる. これは不自然ではないだろうか.こんな馬鹿な? ...
さらには,張りの方向に対して,左右に動いたらどうなるのか?
私が”餌の先行と張り”の理論でもっとも疑問に思うところである. 抜けのある理論であること,甚だしいといわざるをえない.
とにかく,タナが浅い場合はこのように3次元的な動きの自由度があるから,ある頻度で下向きに移動することがあるので,ゆっくりと見えなくなるまで浮き入りしていくことも多くなるわけである.

タナが底付近の場合
底で餌を食った場合,黒鯛は上か前後左右にしか移動できない. だから,単純にいえば,浮きは下向きに引っ張られることはない. 餌を加えた後,ゆっくりに前後左右に移動すると考えるのが素直である.2次元平面内での動きが多くなる. 仕掛けは真横に引っ張られるのである.緩い流れで仕掛けが膨らんでいるとすれば,この真横の動きは浮きをある程度沈め,釣り糸の潮抵抗で”シモル”,”押さえ込む”と表現されるようなあたりとなるのである.
このようにタナが底の場合は, スーっと入って見えなくなるという当たりはあまり出なくなる. そしてまた, 上記のタナが浅い場合でもかなりの頻度でこのような当たりの出方が混じっているはずである.