035 落とし込み:当たりと合わせ

落とし込みを始めてはや6シーズン目となった。例によって教則本はあまり信用しない主義なので、自分でいろいろな釣り方を試して見て、いろんなことが分かってきた。特に、落とし込み特有の「当たりと合わせ」に関して、自分なりの考えをこのへんでまとめて置こうと思う。

■当たりに関して
まず、「当たり」に関しては、以下の1)〜5)が一般的に解説されている。
  1) 糸が止まる
  2) 竿先
  3)糸が震える
  4)糸が横に移動する
  5)いきなり引き込まれる
@)吸い込み当たり

4)5)はともかく、考えさせられるのは1)2)の違いである。

なるべく軽いガン玉を付け、糸を弛ませて落とし、糸の止まりで当たりを取る・・・と解説されているのがほとんどである。
竿先では違和感があって餌を離してしまうからだという。
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対照的に、重めのガン玉で餌を竿で落とし、竿先で当たりをとる・・という人も結構いる。私はいろいろ試してるうちに、どちらかというと竿先でアタリを取ることが多くなった。竿先はそんな悪いの?という問題を常々考えていた。で、糸止まりか竿先か・・、私なりの考え方をまとめてみた。


■ガン玉の重さと竿を下げる速さ
まず、当たりがどちらで出るかは、餌の落下の速さと竿先を下げる速さで決まる。軽いガン玉でも餌が落ちるのより竿が遅ければ糸が張り、竿先に当たりが出やすくなる。また、重いガン玉でも餌より早く竿をさげれば竿先の当たりはでない。つまりは、ガン玉が重いか軽いかの違いではなく、どちらが速く下がるかの相対的な関係なのだ。この点は意外に勘違いされやすい。結局、何を優先させて釣るか、つまり、落とす速さか、糸フケを作るのが先決なのか、竿先で当たりを取れるようにするのか、・・などでガン玉の選択や竿の下げ方などが決まってくることになる。

■餌の落とし方
自然落下がベストという話がある。ところが、カラス貝が自然に落下する早さは意外に早いものだ。貝の大きさにもよるが、1mを5秒ぐらいで落下するだろう。ガン玉をつけると3秒ぐらいか。ところが糸がついているので、実際には風や水の抵抗などで実際よりは遅い。ちょっと風があれば、3Bでも落ちないなど、誰でもすぐに経験することだ。自然落下の速さより遅く落としてる人の方が多いのではないだろうか。さらには、餌が落ちて行き、水面上の糸が短くなっていくと風の影響が無くなってきて、餌の落ちる速さはどんどん早くなる。餌は最初ゆっくりで段々早くなるわけで、“糸フケを作って自然に落とす”などという解説が全くデタラメであることは明白なことだ。
また、自然落下とはいっても、場所によっては障害物周りの水の出入りや渦などに餌が漂っている状態だって、自然な状態といえる。こんな餌の様子を演出しようとすると、竿先を下げるの止めて、むしろ竿を横に動かしたりしており、糸は張っていることが多い。だから、このようなフカセの状態では、糸を弛ませることにさほど拘ることはないのである。そしてこんな状況下では必然的に竿先の当たりが多くなるわけである。

■糸止まりと竿先当たり (違和感の差)
さて、これからが、核心に迫る考察である。糸が張っていると餌を離してしまうと言われるが本当か?
一見、当たり前のようだが、ここで反論である。落と込みの常套手段である「聞き合わせ」と絡めて考えてみるとおかしなことになってくる。

落とし込みでは「聞き合わせ」をやる。糸が止まったら聞き合わせをしなさい、と解説されていることが多い。
ある程度、知識のある人なら知ってるはずだが、この「聞き合わせ」は

当たりが出たら、竿をそぉっと上げて「聞く」。つまり、餌を加えているかどうかを確認するのである。
この「聞く」動作を行うと、黒鯛は本能的に餌を咥えたままその場を移動する。
この黒鯛の動きで竿を曲がり、いわゆる「乗った」ことになる。
「聞き合わせ」というと、つぎにビシっと合わせるという風に考えがちだが、
ここの「合わせ」はもっと消極的なもので、黒鯛が引くから対抗してテンションを張る程度のものでいい。

さて、この「聞く」という動作は落とし込みでは大変な重要である。これがすべてといっても過言ではない。糸が止まれば聞き、海草に引っ掛かっても聞き、着底したときも聞き、竿先に当たりが出たら聞き、糸が横移動しても聞き、糸が張っても聞くのである。(くどい ;**;)。この「聞く」という動作はまぎれもなく餌にテンションを与え、黒鯛に違和感を与えている。ここでよく考えて見てほしい、竿先で当たりを取ると違和感で餌を離すはずじゃなかったのか。なのに、「聞く」で違和感を与えると乗ってくるとはどういうことか。「聞く」動作で与えられる違和感と、竿先に当たりが出るときの違和感と、一体なにが違うのか・・・。 答えは同じはず。糸が張ってるとダメと言っておきながら、これはないんじゃないか。多くの人が、多くの名手といわれる人達がこの矛盾点に気づいていない。たしかに竿先に当たりが出た後、餌を離されることもあり、このときは糸が張ってたからダメだったんだと思いやすい。ところが、糸止まりで餌が潰されただけになってしまっても、或いは全く当たりのないまま餌を取られてしまっても、ついてないぐらいしか思わないものだ。心情的には理解できるが・・・。竿先でのあたりでは、当たりの後、間を置かずにそのまま引き込んでいくケースも多い。これも黒鯛が即違和感を覚えいるからだろう。竿先当たりの後、「聞く」動作が自動化されているようなものだ。

別の観点で、黒鯛が餌を吸い込む時に糸が張っていると食い込みが悪いという意見もありそうだが、15cm先の餌を一瞬で吸い込む吸引力は相当なものだ。糸が張る/張らないの微妙な差などまるで関係ないはずである。

「聞き合わせ」は非常に有効であり、ここで違和感を与えてはいるものの、黒鯛をフッキングさせる上では必要なものである。なにもしなければ、気づかずに飲み込むか、吐き出すかのいづれかで、5)のいきなり引き込まれる当たりしか取れなくなるのだから。

つまりは、!! 竿先で当たりを取ることは ちっとも悪いことではない!!(笑)。


■「聞き合わせ」と「即合わせ」

糸止まりの当たりの後、「聞く」動作をしないで、いきなりスナップを効かせた合わせを入れる釣り方もある。初心者は変化があったら何でも即、合わせないと・・、解説されている場合も多い。このあわせ方は、黒鯛が餌を口にしたとしても、すぐ吐き出したのか、潰しているところなのか、口の中でふわついている状態なのか分からないまま、合わせを入れてしまうので、空振りやすっぽ抜けが多い。また、無理やりフッキングさせるので、口内のどこに刺さるかバラバラで、歯の近辺に刺さる(引っ掛かる)ことも多く、バラシの一因になっている。また、海草や障害物に引っ掛かっている場合も多く、ここで無駄にビシコ合わせを入れると黒鯛が散ってしまう。
これに比べて、「聞く」動作から持ち込まれた時には確実に口に含んでおり、しかもしっかり口は閉じている。したがって、バラシの頻度はずっと下がる。竿先で当たりを取るのに慣れてくると、咥えた直後か、潰しているか、離したか、などがかなり分かるようになる。当然、「聞く」のは潰しているときである。ここで、黒鯛が動き出す時点では大方既に貝は潰されおり、ソフトな合わせで自然に刺さることが多い。しかも、9割以上が上唇にしっかりフッキングする。私はこのシーズン、この釣り方をずっとやってきたが、餌を離されることはあっても、いわゆる乗ったの状態からのバラシは、ハリス切れを除けば、ほとんど無くなった。タモ入れしたら、針が外れていたということもほとんど無くなった。よく言われていることだが、すっぽ抜け、針外れ7割、取れるのが3割、ベテランで5割だそうである。10回も20回も当たりがある釣り場ならこれでよいかも知れないが、数回しか無い釣り場ではこんなんでは釣れない。竿の硬さ、針の大きさ、合わせ方など、何かに問題があるはずなのに、これが当たり前という風潮には納得できないものがある。

■浮き釣りとの対比
黒鯛を始める人には、浮き釣りから始める人と落し込みから始める人とに分かれる。両方やる人は意外に少ないものである。ここでのテーマである「当たりと合わせ」に関して、浮き釣りと対比させてみると、なかなかおもしろい。
まず、浮き釣りでは浮き入りで当たりを取る。黒鯛は餌にぶら下がる浮きの違和感を感じる。ゆっくり引き込みなら、ほぼ浮きの残存浮力だけ考えればよく、B〜2B(0.5g程度)程度である。とにかく違和感を与えないと浮き釣りでは釣れない。一方落し込みで糸がふけてる状態と張っている状態の差はせいぜいガン玉1〜B程度である。また、竿先の当たりで竿先がが僅かに曲げる力はやはりB〜2B程度である。このように考えてみると、竿先や糸が張ってる時の違和感で釣れないというのなら、ほぼ同じような違和感のある浮き釣りでは釣れないことになってしまうではないか!。
浮き釣りでも全誘導や沈め釣りなどがあるが、ちょうどこれは、落し込みで糸フケを取ることと同じ考え方である。両方とも最新釣法としてよく知られているが、その効果のほどはどうだろうか、違和感がないというより、広くタナを探る効果の方が支配的なのではないかと個人的には思っている。
また、落し込みでは浮力のある小さな目印をつけた釣り方がある。関西の方では主流らしい。これは基本的に浮き釣りと同じで、目印は小さいながら複数個付けるので結構な浮力がある。目印がが入る時には黒鯛は浮力を違和感として感じるはずである。また、目印の浮力と餌・ガン玉の自重とで引っ張りあっているわけだら、どちらかというと糸を張って落してる状態に近い。糸ふけ論からすれば、これもだめだとかいうことか。
対比させて、もう一つ面白いのは、誘いである。浮き釣りではなかなか浮き入りしない時、誘いを掛けると浮きを持ち込んでいくことがよくある。これは落し込みでいえば、まさに「聞く」動作そのものである。魚は口の中にある餌に違和感を覚えると、反射的にその場を立ち去ろうとする。危険を感じて安全地帯へ逃避するのか、、あるいは餌を逃すまいとする行動なのかはよく分からないが、とにかく、しっかり口に餌を含んだ状態で引き込んでいくものである。この行動は浮き釣り、落し込みで同じ行動だと考えていいと思う。

最後に
思うに、もともと脈釣りやコスリ釣りが原形だった落し込み釣法で、糸ふけを作って釣る釣り方は東京湾で始まったと聞く。より繊細で先鋭化している釣法だと言われている。しかし、この糸ふけ論や、先調子・硬調・短竿のバラシまくる仕掛けなど、大いに疑問符の立つことが多い。おもしろい話がある。ガン玉はBでも重過ぎる、ノーシンカーが理想というヘチ名人が、前打ちでは5Bぐらいを付けますがなんでこれでも食うんですか?と聞かれ、"こればっかしはよく分からない、多分、ヘチの方が警戒心が強いためだと思う”、と答えていた。??????(^o^)。

私のホームで落し込みで数十枚釣る人が4人いる。各人各様で、みんな釣り方が違う。互いに真似ることはあっても、すぐに自分流に戻っていく。教科書に書いてある釣り方をする人も一人もいない。いろんなつり方で黒鯛は釣れるものだ。
私は、ベタ凪、無風のとき以外は、糸ふけを作らず、僅かながら糸を張り気味にして、繊細なアタリを竿先で取っている。荒れているときはどんどんガン玉が増え、3B5個つけたりもする。これで人並みには釣れている。この方が黒鯛と対峙してる、駆け引きしてるという感覚が強く、遥かに釣りが面白い。