| 癌、人工肛門のコーナー (38) 残尿検査 |
病名への疑惑 手術を終わってから1週間、そして10日と過ぎて行った。 ある日は真冬には珍しい柔らかな陽射しが射し込み、またある日は終日凍てついた空に雪が舞っていた。 この病気はほんとうに直腸の潰瘍なのだろうか? 「黒に近い灰色」というのはどう言う意味だろう。 今まで人工肛門のことばかりに気を奪われてきた。他のことにはてんで気が回らなかった。人工肛門が「厳然たる事実」となったからにはもうどうすることもできない。どんなに忌み嫌おうが、拒絶反応が強かろうが受け入れざるを得ない。 そう観念したのと同時に今度は別の恐怖が胸の中に広がり始めた。 手紙 今日は2通の手紙が届いた。 1通は20数年前の独身寮時代の先輩からで「天が与えた休息のときと観じて養生に徹するように・・・」と慰める文面が綴られていた。 もう1通は大学へ帰って行った長男から。「親父の人生はこれから。人生で一番楽しいのは50歳台からだと言う。これから訪れるであろう楽しい人生を考えて1日も早く心身とも健康を回復するように。親父の病気が再び家族の絆を強めてくれた。先日成人式を迎えました。20年間育ててくれてありがとう」そんな意味が書かれていた。 残尿検査 少しづつ体を動かすようにという指示を受ける。 10日ぶりにベッドから下りて洗顔し髭を剃ってさっぱりする。 手術の痛みは依然として強く、とても熟睡できるという状態にはほど遠かった。相変わらず慢性的な睡眠不足がつづいていた。 食欲もほとんど回復しない。抗がん剤の副作用のためだが、私はそのことを知らない。 1日の大半は点滴(抗がん剤投与他)でつぶれていた。 残尿の検査があった。 通常に排尿した後、どのくらい膀胱内に尿が残るかと言う検査だ。 尿道に入れっぱなしになっていた導尿カテーテルを抜いてもらうと、久しぶりにせいせいした気分になった。 この検査結果はこれからの社会復帰に向けて大変重要な意味を持っていた。直腸、肛門を切除する際、膀胱神経への損傷が免れない。そのためこのような手術を行なった患者はかなりの高い確率で排尿困難あるいは性機能障害を惹き起こすと言われる。 自力で排尿することができず、日常的にカテーテルによる導尿ということになると、社会復帰へ向けての道がさらに険しくなってしまう。 看護婦の指示で、一滴でも多く出して残尿量を少なくするため、お腹の上から膀胱を思い切り強く押さえつけて排尿した。 結果は合格ラインすれすれでクリアした。 この大きな関門を突破できたことは嬉しいが、これからその都度お腹を思い切り押さえておしっこをするのはちょっと難儀なことだ。 日を置いて行われた2回目の検査も辛うじて合格。膀胱神経の損傷度が小さかったということだ。執刀医K先生の技術と幸運に対し感謝。 晴れて導尿カテーテルが外され、手すりにつかまって廊下を歩けるようになった。自分の足ではないようだ。 もどる つづく |
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