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劇団110SHOWインターネット公演

ONE DAY

〜小山田羅一の場合〜


劇団110SHOW

登場人物
小山田羅一 ソラたちの担任
春日空 (ソラ)
笠木和輝 (カンフ)

机

 ある晴れた日の午後。ランドセルをしょった少年が家路を急ぎ走っていた。

「ただいまー」

 少年の名前は春日空。勢いよく玄関のドアを開けた空は、出てきた母親とぶつかりそ
うになった。

「あ、おかえりソラ」
 そう言った母親はいつもよりめかしこんでいる。

「何やかあちゃん、その格好」

 いつもは髪を束ね、化粧っ気のない母が、髪をおろし口紅なんかつけている。

「ちょっと今から学校へね」

「学校?何しにいくん?」

「…今日はORFの集まりがあるげん」

「何やそれ」

「えっと…Oは親やろ、Rは連絡…で、Fは…フェスティバル」

「フェスティバル?何すらん?」

「だから親との連絡フェスティバル」

「?」

「とにかく、お母さん行って来るし。留守番しとってや。おやつはテーブルの上にあるから」

 そう言い残し、母はそそくさと家を出て行った。

 春日空が家に着いた同じ頃、ソラの親友、笠木和輝ーカンフと呼ばれているー家に向
かっていた。家に着く手前で、カンフは母親と会った。

「あ、和輝。いいとこで会ったわ。留守番頼むわ」

  そう言って走り去ろうとする母を、カンフが止めた。

「どこ行くが?」

「ちょっとね」

「ちょっと…って、またパチンコか」

「違うわ、今日は学校でORFあるし…」

「ORF?何ねん?」

「ん…?Oは親、Rは連絡、Fは……フィーバー」

「フィーバー!?やっぱパチンコや」

「あ、フィーバーじゃなくて…ま、とにかく行って来るわ」

「おい、ちょっと待てや」

 呼びかけるカンフをおいて、母は走って行った。

 おはよう

「「「「「「立志小学校

 この学校の教師、小山田羅一は廊下で教頭に呼び止められた。

「小山田先生、今日はこれから保護者の集まりかね」

「はい。お母さん方が非常に熱心で、開いてくださる会なんです」

「君のクラスの母親は教育熱心だね」

「そうですね。この集まりも今は月1回のペースなんですが、毎週でもいいって言って
くれて」

「ほう、それはすごいな。そういえば、会に名前があったね、確か」

「ORFです」

「意味は?」

「親との連絡フェスティバルです」

「そうだったね。しかし、何でフェスティバルなのかね」

「さぁ…それは、皆さんでつけてくれたので」


 小山田羅一が担任のクラス、6年1組の教室はある意味異様な雰囲気だった。母親た
ちが8割方集まり、雑談している。みんながみんな少し着飾って… 。

 ガラッ。ドアを開け、ライチが入ってきた。雑談が止まり、静かになった。


                   ORF 表向きは親との連絡フェスティバル。
                    しかしその実は、小山田羅一ファンクラブ。
                     この事実、母親たち以外本人も知らない。
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