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   『ラッシュライフ』ネタばれアンケート
ざ・ねば〜えんでぃんぐ・みすてり〜 縮小版



※注意!
以下の文章には『ラッシュライフ』(伊坂幸太郎・著/新潮社)のネタバレが含まれています。未読の方はご覧にならないようお願い致します。




 ネタばれアンケート第2回。『ラッシュライフ』(伊坂幸太郎・著/新潮社)で、僕が特に気に入っている「ある伏線」について、どれくらいの読者が気がついているのかを調査するための、簡単なアンケートにお答えください。内容を覚えている方はここまで飛んで、Yes/No だけさくっと答えていただければ万事OKです。アンケートの内容は単純明快。貴方はこのネタに、気がつきましたか? 気がつきませんでしたか?



































 では、どうぞ。




■ どういう伏線かと申しますと

 女性画家・志奈子のパートを外枠に、一匹狼の空き巣・黒澤パート、新興宗教の信者・河原崎パート。夫の殺害を計画する精神カウンセラー・京子パート、リストラされた元サラリーマン・豊田パート、以上5人の物語を効果的に並べることにより、思いもよらない衝撃的な完成図を描き出す本書『ラッシュライフ』。物語が進むにつれ、バラバラ死体事件の絡みから「各パートの順番が必ずしもページ通りに配置されていない」ことがわかります。これにより、それまでの幻想小説的の装いが完全に剥がれ、極めてミステリ的な全貌が明らかになります。この仕掛けに途中で気がつく読者も結構多いようですが、僕はもう、サッパリわかりませんで。P.180過ぎになって漸く、「わからされた」次第。実際問題、中盤までの書き方は幻想小説、ミステリのどちらで処理しても問題ないような表現が多く、それが余計に読者を混乱させる要因となっています。デビュー作の『オーデュボンの祈り』を読んでいる人には尚更だったのではないでしょうか。

 しかし、これを最初からミステリとして読んだ場合、随分と前の方で、かなりあからさまな伏線が貼られていることに貴方は気がついたでしょうか? まず、黒澤パート。黒澤と同じ泥棒家業をしている“親分”の部下、黒澤が「瞬間移動できる」ことを本気で信じている風の若者との会話から。


「黒澤パート・P.37上段〜下段より抜粋」

 ベンチを立とうとしたところで若者が、「あ、猫、死んでますね」と言った。
 公園のベンチの側のツツジの植え込みを見ていた。
 確かに黒い猫が死んでいた。赤い首輪に鈴を付けている。口から内臓のようなものが飛び出していた。轢かれたに違いなかった。
 「可哀相に」
 「黒猫なのに『ミケ』って名前のようだな」と黒澤はそう言って、猫の首輪にかかった鈴に「ミケ」と書かれているのを指差した。
 「飼い主、探しているのかもしれないですね」
 「かもしれないな」
 「黒澤さん、生き返られませんか?」
 若者は言った。はじめは冗談だろうと思ったが、あまりに真剣な顔をしているので、笑い飛ばすこともできなかった。
 「黒澤さんならきっとできますよ」
 「そうだな、俺ならきっとできる」と答えていた。純粋で無邪気な若者の顔を見ていると、どんなことでも叶えられる気分になったのは事実だった。
 黒澤は両手を柔らかく前に翳して、黒猫に向かって目を瞑った。即席で祈ってみせる。
 黒猫に向かって伸ばした手の先をゆっくりと動かす。
 気功師が、直接手を触れずに相手の身体の調子を治すのと似ている、と若者が横から言った。
 しばらくそのままの格好をしていた。両手を下ろすと、深呼吸をした。
 「きっと生き返る」黒澤はそう言った。
 ですよね、と若者が嬉しそうに声を上げた。
 実際、黒澤は自分自身でも猫が生き返るような気がしてならなかった。



 これが普通のミステリであれば、死んだ黒猫“ミケ”が生き返るはずはありません。しかし、もしこれが幻想小説であり、黒澤が本当に「瞬間移動できる」のであれば、黒猫が生き返ることもあるのかもしれません。そしてこの後、黒澤が本当に「瞬間移動した」かのような演出がされます(実際にはパートの順番を巧みに組みかえることで、時系列のズレた場面を恰も連続しているかのように見せている)。黒澤は特別な能力を持っているわけではない。ところがところがあら不思議。なんとこの約60ページ後に、死んだはずの黒猫“ミケ”が元気な姿で再登場するのです。しかも黒澤パートではない、河原崎パートに。


「河原崎パート・P.101下段より抜粋」

 目の前を黒い猫が通り過ぎた。鈴の音が鳴った。首輪に付いているのかもしれない。真っ黒の猫は立ち止まると一瞬、河原崎と目があった。「ミケ!」と走ってきた女の子が呼んでいた。黒猫にミケという名前もあるまい、と思った。
 黒猫はしなやかに車道を駆けていった。きょろきょろとあたりを見回して走る猫は、誰かを捜しているようにも見えた。まるで自分の命を救ってくれた恩人の姿を必死に見つけているようだ、と河原崎は思った。



 「えっ、黒澤が命を救ったの!?」 本書がもし幻想小説だったなら、そういう展開もあったかもしれません。黒澤には不思議な力があって、瞬間移動もできるし死んだ猫を生き返らせることも、できたのかもしれません。しかし、後の死体バラバラ事件によって各パートの順番が明らかになることで、黒澤が「瞬間移動した」わけではないことも明らかとなります。そして同時に、P.37の黒沢パートよりも、P.101の河原崎パートの方が時系列的に前の出来事であることもまた、明らかになるのです。黒澤は、黒猫を生き返らせたわけではない。河原崎は、生き返った黒猫を目撃したわけではない。黒猫のミケは、河原崎によって元気な姿を目撃された後に車に轢かれた。そしてその亡骸を、黒澤によって目撃されたのです。

 これによって黒澤パートと河原崎パートの順番は逆転します。その気になればこの時点で、全パートの順序を推測することも可能かもしれません。さすがにそこまでやっている時間はないので省略しますが、とにかくこの「黒猫のミケ」は、本書におけるミステリ的な仕掛けを示唆する重要な伏線なのです。


■ アンケートです。

 貴方はこの、「黒猫ミケの生死から、黒澤パート、河原崎パートの時系列がページ順通りでないことがわかる」という伏線に、気がつきましたか? 気がつきませんでしたか?

 気づいた :   気がつかなかった :    

 他、ご意見ご感想などありましたらお願いします。
 

 ありがとうございました。結果は後日、集計した上で発表します。




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他言無用のこと。