演習: 貴方自身の自己概念の形成に影響を与えた人生のできごとをピックアップし、下の例にならって、職業選択準備過程の略年表を作りなさい。そして、作業療法士としての職業選択の必然性について、考えなさい。 職業的発達とは自己概念の発達と完成であるから、ハンディキャップのある者の相談においては、現実的な自己概念の発達を助けることが基本的な仕事である。 作業療法士として、障害者の職業復帰に関わるとき、彼の自己概念の現実性を吟味する事が必要となる。彼の真のニーズを見極めたり、彼の現実検討を支援する為には、支援者自身の自己概念の確立と成長が不可欠である。 自己概念があやふやな状態では、協力しながら問題解決にあたるパートナーにはなり得ない。 |
●生い立ち〜自己概念の形成期
・2才の頃に「肺炎」を患い、その後成人するまで「小児喘息」の発作が頻発する。
→病気〜患者の気持ちを知る。患者の立場に立つ。
→学校は休みがち=>「自由時間」がたっぷりある。読書で気を紛らわせていた。
(1)思索にふけり、自分の頭で考える癖がつく。
(2)健康のありがたさを知る。後の健康観に影響。
・毎年お盆になると、兵庫県城崎郡の父方の田舎に、帰省する。父の兄が、転落事故の後 遺症で、下半身麻痺で、離れでいざり生活をしていた。後年、車いすの存在を知った。 田園の環境・文化、時代状況が、労働を奪ったのではないか。
→「障害者の生活」と、「文化」「環境要因」の影響の大きさを知る。
・草野球では、いつも「2番バッター」で「キャッチャー」だった。
「つなぎ役」であり「陰の主役」である。
→パートナーシップの重要性を知る。
・学校の健康診断で色盲の検査があった。「赤緑色弱」の診断。ショック。
ショック期:見かけは同じように見えて、僕は他の人と違うんだ
受 容 期:「色」の見え方が違う。=>「色彩感覚」が違う。=>「審美眼」が違 う。=>「物の見方」「価値観」が違っても、生きていける。
→多義性の思想、共生の思想の芽生え
●職業選択への道のり〜自己概念の移行期
・神戸大学工学部…目標の見えない勉強、機械相手の実験に、興味減退。
→「ハイテック」(先端技術)への反動で、
「ハイタッチ」(人間的触れ合い)への欲求が高まる。
・留年時代 〜目標喪失の時代〜作曲活動(現実逃避、内化)〜
・宗教者との交流
→「理想社会(天国)の追求」への反動としての「多様性と選択の自由」
・卒業研究で、リハビリテーションと出会う。(兵庫県リハビリテーションセンター)
テーマ:「機能的電気刺激の臨床応用」「下肢FESによる立位機能の再建」
原体験:リハ従事者&脊髄損傷のjunちゃん(実験協力者)との出会い
→技術の直接的対人援助応用を体験 →技術の価値を再認識する。
・4月:富山県高志リハビリテーション病院研究開発部に就職。主としてFESの研究。
●転職の危機〜自己概念の確立期の始まり〜
・麻痺肢の機能再建から、生活再建への道のりの遠さに呆然とする。
入院患者は、人質。患者は、弱者。医師の言われるがまま。
・ある面患者を実験台としてしか関われない研究職からの出直しを誓い、自己都合退職。
・富山大学教育学部の研究生となり、家庭教師等のアルバイトで生計を立てる。
「工学」と「情報教育」と「リハビリテーション」の接点について、考察
〜夢多き時代〜作曲活動(関係性、外化)〜
・失業給付受給の為、職安へ出頭する。
→離職者の悲哀を知る。職業紹介行政(お役所仕事)の質の悪さと限界を知る。
・同じ患者さんとの仕事を離れた交流→ …応援歌「この足で立てたら」
→「ボランティア的ではなく、仕事として関わりたい」との思いが募る。
・名古屋市総合リハビリテーションセンターに就職。
職能指導員として、障害者の職業復帰への援助に携わる。
→「リハビリテーションは、男子一生の仕事である」との確信に至る。
(1)職業を通して、全人格的に、向き合う事が出来る。(離職の原因を克服)
(2)リハビリテーションの理念は、日本を救う。
・上司(九州出身)の母の訃報を聞く。 …追悼歌「線香花火」
この時、上司は、転職(名古屋を離れて、地元へ戻る)を考えていた。
「追悼歌が、転職の危機を救った」と、後日上司から聞かされた。
→部下=上司の縦関係ではなく、同志(戦友)的横関係構築の経験に力を得る。
・結婚披露宴「あなたに会えてよかった」の場を借りて、家族/親戚に、「リハビリテー ション」の思想を伝える。
・良いパートナーとは、基本的に「価値観」が一致し、心地よい「距離感」が保てる関係。
・モットー:「汝、隣人を愛せよ」「人生は、道場である」「創造力と先見力を磨け!」
・19951.17 阪神大震災→震災ボランティアを体験
(1)社会資源としてのボランティアの意義
(2)無償労働の価値 を学んだ
●現在 〜自己概念の確立期(継続)
・現実の壁の厚さに翻弄されながらも、クライアント(client、依頼人/顧客)を通して 様々な職業生活を共通体験しながら、自己概念の修正/拡張を迫られている。