脳外傷者の職場適応について、何が問題となるのか?
1.認知機能障害は見過ごされやすく、安易に職場復帰すると、職場で問題が露呈し、ドロップアウト する。
訓練室内でできていた作業が、職場では混乱してできないことがある。
→→「訓練成果の確認は現場で」原則の徹底
2.作業能力の低下 →→ 仕事ができないという烙印
- 指示の理解が悪い、指示を勘違いする。
- 新しい仕事がなかなか覚えられない。
- 同じミスを繰り返す。(学習できない。改善できない。)
- 作業速度が遅い。
- 仕事の優先順位がつけられない。
3.対人技能の低下 →→ 職場内の人間関係の破綻/人間関係が成立しない
- 些細な事で感情爆発。仕事を放棄することもある。
- TPOに合わない、相手に配慮のない言動で、同僚の反感を買う。
- 発動性の低下が著明な場合は、「やる気がない」等の職務態度にマイナスの評価を受ける。
4.まとめ…脳外傷者のこんなところが、職場で受け入れられない
- 一見すると障害が見えないので、職場に理解され難い。従って、適切な職場内配慮がなされない場合がある。
→必要な配慮が、周囲からは適切な配慮と映らなかったり、
→職業復帰当初設定していた配慮が、いつしか崩れてしまい勝ち。
- できる仕事とできない仕事のギャップが大きい。
→つい期待して仕事を任せると、裏切られる事の繰り返し。
できないことについては、何回説明しても「暖簾に腕押し」「糠に釘」状態で、なんとかしたいと思う熱心で良心的な職場の同僚や上司は、途方に暮れてしまう。
- 適切な感情表現ができない。他者との感情交流ができない。
→社内の人間関係が発展しない。
→職場内で気味悪がられる存在となる。
→職場の上司・同僚側に、情動変容・精神的影響が出る。
以上より、周囲が音を上げてしまう。支えきれなくなる。
*職業場面で現れる問題点は、
「本人の職業能力や障害特性」と、
「仕事の種類や要求水準」及び、
「それらを取りまく環境」との相対的な関係で変わることに注意。
*参考:フランス、赤毛ザルの実験 〜セラピストの燃え尽き症候群〜
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前頭葉と側頭葉の先端を対称性に切除したサルを群に戻した。
↓
★脳を損傷したサルは、
@身体的な差(優劣)を認識できなくなった。
周辺に強いオスが来ても気にしない。
A感情を適切に表す事ができない。
↓
適切な社会的行動がとれない。
★脳を損傷したサルを受け入れた群側の正常な動物達は、
相手の感情を予測できず、不安になり、情動の変容が起こる。
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第2回高次脳機能障害研究会(H5.11.20、東京)特別講演
「頭部外傷者の神経心理学的リハビリテーション
−アメリカにおける治療の実際と社会復帰の状況−」George
P.Prigatano
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