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    第1章

    「えっ、ホントなの??」
    「ホントだってば!!だって最近、私ツイてると思わない?」
    「うん。そうだね。」
    確かにそうだった。ここ1年で郁を取り巻く環境がガラリと変わった。10円のガム1つでも当たりが出るし、
    TVの“クイズ・マリオネア”では100万ゲットしちゃうし、懸賞でハワイ旅行が当たったし、ちゃっかりその旅行で見つけた彼氏と今年のクリスマスに結婚を控えていたのだった。
    「私を信用して飲んでみてよっ!!ねっ??」
    「分かった。郁が言うんだったら・・・・・。」
    華は、内心そんなの効くはずなんてないと思いながらも郁から“開運薬”をもらった。

    −ジリリリリリリリリリリッ−
    「あっ、やばっ。もうこんな時間。早く起きなくちゃ!!それにしても、今日の夢変な夢だったなぁ〜。。」
    「えっ!?まさか。」
    華は、自分の目を疑った。夢で郁からもらったはずの“薬”を華はしっかり握り締めていたのだ。
    「こんな事ってあるの??」
    しばらく華は呆然としていた。
    「は〜な〜、遅刻するわよ〜!!」
    母の声に我に返った華は、その薬を気にしながらも慌てて階段を下りて食事を始めた。
    「おはよう。」
    「おはよう。あらっ、どうしたの?冴えない顔しちゃって・・・。」
    「変な夢見ちゃって・・・。」
    華は、クロワッサンをほおばりながら答えた。
    「どんな夢?」
    「郁が出てきてね、うなされたの。」
    「郁ちゃん??」
    「そう。」
    「郁ちゃん最近、見なくなったけど、元気してるの?」
    「結婚する前に遊ぶって言って、旅行だの、なんだのって忙しいみたい。」
    「あっ、そうだったわね。式何月だったっけ?」
    「12月よ。連絡ないけど、アイツ何してんのかな?」
    華はTVのスイッチを入れた。
    「え〜っ!?最悪。今日の運勢、乙女座最下位だよ〜。」
    華は、“めざまそ!TV”の今日の運勢をチェックするのが日課となっていた。
    「結構、当たるんだよね、これっ。」
    と言いながら、朝みた夢の“薬”の事を思い出し、半信半疑ながらも飲んでみる事にした。
    「いい事ありますように・・・。」
    華はそうつぶやきながら、元気よく家を出て行った。
    「天気いい!!」
    まぶしい初夏の太陽が新緑を照りつけ、さわやかな風が吹いていた。

    第2章

    「はぁ〜、疲れた。今日も一日よく働いたぞっ!!」
    華は22歳。短大卒業後、今の会社に勤めて今年で3年目のOLである。3年目となると、仕事にも慣れてきて、最近変化と刺激がないマンネリした生活にちょっと飽き気味であった。
    「♪プルルルルッ・・・・・・」
    「もしもし?あっ、裕也?お疲れ様!!」
    裕也は2つ年上の彼氏である。裕也とも2年付き合っていて、こちらもマンネリ気味であった。
    「今、仕事終わったとこ。」
    「うん。あっ、今日だったっけ、宝くじの当選日って・・・?」
    「じゃー、帰ってみてみる。」
    「じゃーね。バイバイ」
    宝くじはだいぶ前に裕也とデートした時に、運試しにと2人で買っておいたのだ。もし、当たったら、2人で旅行に行こうと約束もしていた。
    足早に通りすぎる人々の間を擦り抜けて、華は大きく背伸びした。
    「やっぱり、あの薬効かなかったじゃん!!」
    「あっ。夕立だ。さいあく〜。」
    まるで、華の心を映し出すかのように雨が降ってきた。華は走って家路へ急いだ。

    「ただいま〜!!」
    「ずぶ濡れじゃないの〜。風邪ひく前にお風呂に入っちゃいなさい!!」
    「は〜い。」
    「チャポーン。」
    「はぁ〜。それにしても、あの薬飲んだからって全然いい事なんてなかったわ。」
    「やっぱり夢だもん。有り得ないよねぇ。」
    「あ〜ぁ。。」
    華は湯船につかりながら、宝くじの事を思い出した。
    「あっ、いけない、いけない。忘れるとこだった。お風呂から上がったら新聞みてみよっと。」
    「よしっ!!」
    華は、今日見た夢をかき消すかのように力いっぱい体をこすった。

    「あ〜、いい湯だった。」
    「お母さ〜ん!今日の新聞ある??」
    「テーブルの上にあるわよ!」
    「はいはい。さてっと、宝くじ、宝くじ。当選番号は、・・・・・・・・・。」
    華は、我が目を疑った。
    「お母さん!?これって、間違いなく今日の新聞よね??」
    「そうに決まってるじゃない!!どうしたの?」
    「ど、ど、どうしよう。。」
    「どうしようって、何をどうするの?」
    「わ、わたし、1億円当たっちゃった・・・。」
    「何馬鹿なこと言ってるの?」
    「みて。これ。」
    「・・・・・・・・。」
    「キャーッ!!!」
    「夢じゃないよね?お母さん。」
    「夢じゃないけど、夢みたい。」
    チックタックチックタック・・・・・・・♪ボーンボーンボーンボーン・・・・・・・・・・。
    2人もしばらくその場を動けずに、ただお互いの顔を見合わせる事しかできなかった。

    第3章

    時刻は、深夜2時。華は、依然何も手につかず、ボーっと窓の外を一人眺めていた。突然の出来事にまだ、信じられずにいたのだ。華はふっと思い出したように、裕也に電話した。
    プルルルル・・・・・・・・・・
    「・・・・・も、もしもし?」
    「あっ、私華。寝てた?」
    「当たり前だろ。何時だと思ってるんだよっ。」
    裕也は、ちょっと不機嫌だったが、華の様子がいつもと違う事に気付いて、すぐにきりかえした。
    「どうしたんだよ、華。何かあった?」
    「・・・・・・・・・・・・。あのね、裕也とこの前一緒に買った宝くじ・・・・・・・・、1億円当たっちゃった。」
    「夜中の2時に電話してきて、それはないぜっ。ほんとは、何があったのかよっ!」
    裕也はちょっとキレ気味だった。
    「だから、今言った事ホントなの。1億円当たったのよっ!でなきゃ、こんな時間にわざわざ電話しないわよっ!!!」
    「マジで?」
    裕也はまだ華の事を少々疑っていたが、華は今まで裕也に嘘をついたことがなく、又、嘘をつかれるのも嫌いな性分という事を十分知っていたので、今華が言ってる事は真実だと確信した。
    「なんだか今でも信じられなくて、裕也に電話してみたんだぁ〜。」
    「お〜、そりゃビックリするよなっ。俺だってお前が頭おかしくなっちまったんじゃないかと思ったくらいだったもん。でも今日はもう遅いし、明日も仕事だろ?」
    「うん。」
    「じゃ、早く寝ろ。明日会ってゆっくり話しを聞かせてくれ。」
    「そうね・・・・・・・・。そうするわ。じゃ、明日また電話する。おやすみ。」
    「おう。おやすみ。」
    裕也と電話を切った後、華は少し気が落ち着いたのか、気を失ったように眠ってしまった。

    華は、仕事を早めに切り上げ、裕也と待ち合わせのファミレスへ急いだ。
    「おせぇ〜よ!!」
    「ごめん、ごめん。」
    華は席につくや否や、出された水を一気に飲み干した。そして、すぐに宝くじの事を切り出した。
    「ねっ、すごいと思わない?まさか自分が1億円当たるなんて・・・・・。1億円よっ、1億円!!今でも信じられないわぁ〜。お父さんが亡くなってから、これと言っていい事なかったし・・・・。やっぱり生きてるといい事あるって、思っちゃった。で、私考えたんだけど、最近どこも旅行とか行ってないし、ここはぱぁ〜っと海外にでも旅行にいかない?」
    「お前、声がデカすぎるっ。そんな1億円当たったとか、大きな声で言うなっ!この世の中お前が1億円の大金を持ってるって知ったら、命狙われるかもしれないんだ。何が起こるか分からないからな。」
    「考えすぎよ。誰も私たちの会話なんて聞いてやしないわっ。ところで、何処に行く?アメリカ?オーストラリア?」
    裕也の言う事に全く耳を貸さない華だった。
    「お待たせ致しました。和風ハンバーグ定食です。」
    「あっ、私ちょっとトイレ行ってこよっ。先食べてて」
    小走りに華はトイレへ急いだ。
    「あいつ落ち着きねぇ〜な。」
    ボソっと裕也は呟いて、今きたばかりの和風ハンバーグ定食に箸をつけた。

    −15分後−
    「あいつ遅いなぁ〜。トイレで何やってるんだよ。」
    テーブルには、きれいにたいらげた、裕也の和風ハンバーグの皿と、華が注文した冷めてしまったエビピラフ。華は、まだ席へは戻っていなかった。携帯もバックも置いてあるまま・・・・・。最初、裕也は特に気にしていなかったが、30分たっても戻ってこない華を変に思い、ウェイトレスに尋ねてみた。
    「すいません。。」
    「はいっ、どうかされました?」
    「連れがトイレに行ったまま、30分経っても戻ってこないので、女子トイレの方見てもらえますか?」
    「かしこまりました。」
    裕也は、ウェイトレスの後をついて、女子トイレへ行き、おそるおそるドアを開けてみると、そこには華が倒れていた。。。。。


    第4章

    「キャーーーーッ!!!!」
    ウェイトレスの悲鳴がファミレス中に響き渡った。その悲鳴に辺りの客も騒ぎ出し、ただごとではない雰囲気に次第に客が集まってきた。
    「おいっ、華!!大丈夫か??」
    裕也の必死の呼びかけに、華は応答しない。裕也は少々荒々しく華を抱き上げて、軽く華のホッペタを叩いた。
    「おぉ〜い!!!聞こえてるんだろっ!!!返事しろよ、華。」
    裕也の声に華の体がピクリと動いた。
    「・・・・んっ。キャーーーーーーッ!!」
    意識が戻った華だったが、自分の周りに出来ている人だかりを見て驚いたのであった。
    「何!?どうしたの、私?」
    「どうしたのか聞きたいのは、こっちの方だよ。トイレに行ったきり、お前帰ってこないんだもん。」
    「・・・・・・」
    裕也と華は、ファミレスの従業員と駆け寄ってきたお客さんに詫びると、いそいそと席に戻ったが、周りの冷ややかな視線に居た堪れなくなり、2人は店を出ることにした。
    裕也の車に乗り込み、華は裕也にトイレで倒れていた事情を説明した。華の話によると、きれていたトイレットペーパーを上の棚から取ろうとしたが、足が滑って転んで気絶していただけだった。真剣に心配した裕也が、
    「初めお前見た時、死んでるかと思ったんだぜ。全く心配させやがって・・・」
    「ゴメン。だけど、私だってそんな気絶するなんて思わないもの・・・」
    裕也が黙りこんだ。
    「裕也、心配かけてゴメン。・・・・・」
    華は優しく裕也に声をかけたが、返事はなく、2人の間に気まずい空気が漂っていた。いつもなら、家の前まで裕也に車で送っていってもらう華だったが、今日は早く裕也と別れたかったので、駅まで送っていってもらうことにした。

    「今日はほんとにゴメンね。家に着いたら電話するから・・・。じゃぁ、気をつけて。」
    それだけ言うと華は足早に駅へ向っていった。

    華は次々ホームへ入ってくる電車を見送りながら、ベンチにしばらく座っていた。普段通りのたわいもない裕也との喧嘩だったが、華は別れを感じていた。その時突然、両目を覆われた。
    「キャッ。」
    小さく華は悲鳴をあげたが、周りに人はいない。グワングワンと頭を揺らされ、そのまま強くホームのコンクリートに頭を打ちつけられた。華は気を失った。


    つづく。