2003年1月の修行日記


2003/01/29
 致命的な設計ミスが見つかった。これを直すためにはシステムのあちこちに手を入れなくてはいけない。カットオーバーに間に合わない。だがこの欠陥がそのままではカットオーバーできない。もうだめだ。逃げたい。圧倒的な衝動。だが逃げて他の職が見つかるか? できない。何の問題解決にもならない。首をつるか。いや待て、そういえば祖母がガンで倒れたのだった。いま首をつるのはタイミングが悪すぎる。


2003/01/27
 とりあえず笠原弘子の「メモリーズ」くらいは聞いておこう。92年発売だからもう10年以上前の古典になる。なにしろ私が大学に入学したのが94年・・・・・・
 あまり変わらない・・・・・・もはや私も若くないのか。


2003/01/26
 ALTES第一巻、第15課、ガリボルディ ミニオンエチュード 作品131 H moll、を練習しているが、2オクターブ目のFisから3オクターブ目のFisまでスラーかつピアニッシモで上がるというのが非常に難しい。先生が手本を聞かせてくれたときはなんとも思わなかったのだが、実はかなり高度な技だった。

 チャーチルの『第二次世界大戦』も第三巻半ば。やはり実際の戦史はそのスケール、複雑性、ドラマにおいて創作を圧倒する。再版すればかなり売れると思うのだが・・・


2003/01/21
 20日は徹夜で、21日の夜19:00に帰宅。まだなんとか生き長らえてます。
 朝6:00から9:00までが一番辛かった。喉がひりひりするし、寒気がする。
 とりあえずすぐ風呂に入って寝ます。


2003/01/19
 遅く起きてフルートの練習に行ってから近くの洋食屋で食事。
 それから出社・・・・・・
 障害報告が来ている。以前にも2回来たやつだ。最新のAPでは直っているのに、いいかげん学習してくれ、と言いたいのはやまやまだが、そこは客だから丁寧に回答を書いて返送する。
 ちょこちょことSQLチューニングを行う。
 夜になったが腹が減らない。昼食の量が多すぎたせいか食欲がないのだ。(だから変に痩せるのかもしれないが)
 明日は徹夜確定。もう嫌だ・・・・・・耐えられないよ。


2003/01/18
 毎年恒例の全社会合。(いつもは年末なのだが2002年度は翌年初に設定された。)
 どうやらわが社にはうまくいっているプロジェクトもあるという強い印象を受けた。
 以前はいたわりの言葉をかけてくれていた同期もいまや、「まだ終わらないの?」」と厳しい。同期のほとんどは、少なくとも一回はシステムのカットオーバーを経験している。当然開発経験もある。
 それに引き換えうちのプロジェクト、そして私はいつまでも鳴かず飛ばず。


 「総理、プリンス・オブ・ウェールズとレパルスの両艦が、日本軍に沈められました。飛行機だと思います。トム・フィリップスが溺死しました」。「確かかね?」「まったく疑いの余地がありません」。そこで私は受話器を置いた。私は一人なのがありがたかった。すべての戦争を通じて、私はこれ以上直接的な衝撃を受けたことはなかった。
W.S.チャーチル『第二次世界大戦』


2003/01/17
 飛び石的な徹夜作業に心身ともに疲弊。
 バッチが数時間経っても終わらない⇒カーソルSQLからプランを採取⇒すごくコスト高い!⇒断腸の思いでジョブ中断⇒極度の緊張の中リカバリ作業、およびSQL修正⇒再実行⇒面倒な障害管理票記入・・・の繰り返しでぼろぼろになってしまった。
 午後4時に帰宅を許される。


2003/01/14
ひたすらに前に進むこと
運命(さだめ)を背負って
ただ 生きてゆくことが
いつの日か 本当の夢を
見えないものにしていたね
I've, "resolution of soul"

 同期入社し、このプロジェクトで2年半ともに働いてきたY氏より、結婚のお知らせと、この3月に新婚旅行に行くという便りがきた。
 素直に祝福したい気持ちはあるが、その反面、仕事ばかりに追いまくられている自分の人生の惨めさが、痛切に胸に込み上げてきた。

 苛酷な労働を際限なく強いるプロジェクトを呪い、
 人減らしの意思決定だけ早い無能なマネジメント層を憎み、
 システムの全体整合性を省みず無茶な仕様変更を要求してくる顧客を恨み、
 多忙な日々にもひとときの憩いと心の支えをもっているY氏を妬み、
 そして何より、自分の不甲斐なさに深く絶望した。


 だがこうしたどす黒いうねりに身を任せて15分くらい経つと、突然すっと胸が楽になってきた。

 実は仕事によって被害を受けているのはY氏の方で、私はむしろ恩恵を被っている方ではないだろうか?

 というのはこういうことだ。愛すべき妻子がいるとか、仕事以外に何かやりたいことがある人は、このようなデスマーチによってフラストレーションを大いにためざるを得ない。「この仕事さえなければもっと・・・・・・できるのに!」というわけだ。同様に、仕事に第一の価値を置いている人でも、具体的な技術的スキルの向上を目標にしているならば、やはり欲求不満に陥るであろう。
 ところが私の場合、この仕事が仮に暇になったところで、やるべきことがない。「本当の夢」がないだけでなく、もっと軽い意味でもやりたいことがないのだ。特定のスキルアップに執着しているわけでもない。もちろん漠然と、旅行に行きたいとか資格をとりたいとかいう願望はあるが、言ってしまえばそれらはそんなに強烈な欲求ではないのだ。
 だからもし仕事がイージーになれば、私は面白みがない人間、付き合いが悪い人間、向上心に欠けた怠惰な人間とみなされ、実際にそのようになるのがおちだろう。
 でもそんな私であろうと、火を噴いたプロジェクトのために夜間休日も働いている限り、たとえ付き合いが悪くて私生活が充実していなくても、周りからは仕方がないこととして認めてもらえるし、うまくいけば敬意すら払ってもらえる。それなりに成長もする。
 何も持たない人間が、与えられた運命に流されつつも、地獄の釜の底で安らかでいられる。ここにサラリーマン稼業の不思議さがある。


2003/01/06
 仕事始め早々頭痛に悩まされているが、その種のひとつは3月1日に予定されている大和銀行とあさひ銀行の合併だ。これは単なる合併ではなく、「分割・合併」である。つまり旧大和銀行の全支店は「りそな銀行」に移行するのだが、旧あさひ銀行については、埼玉県内の支店は「埼玉りそな銀行」に移行し、埼玉県外の支店は「りそな銀行」に移行するのだ。なぜ埼玉だけ?と疑問に思い調べてみたところ、あさひ銀行はかつて埼玉銀行だったらしい。どうりで埼玉県内の支店が110店もあるわけだ。(あさひ銀行の全支店数は300。)


2003/01/05
 恐れていたバッチジョブのトラブルに見舞われずに済んだため、年末31日から6日間に渡る長い休暇を堪能することができた。久々に父親と酒を酌み交わしたり、友人とビリヤードをするなど、普段はできない有意義な過ごし方ができたわけだが、とりわけ面白く有益な営みはウィンストン・チャーチルの『第二次世界大戦』を読み進めたことだった。
 1975年に河出書房新社より初版発行で、いまは絶版となっているが、それほど入手困難なわけでもなく、私は古物全般を扱う「EasySeek」というサイトで4巻セット計2000円(送料別)で購入した。そのボリュームと密度の濃さからすれば、安い買い物と言えるだろう。
 本書の面白さは、為政者の意思決定の過程が生々しく描かれているところにある。著者であるチャーチルはもちろん、フランス首相レイノー、ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、ルーズベルトが歴史の決定的瞬間において、どのように感じ、考え、そして行動したかが詳しく記述されている。彼らの意思決定は必ずしも合理的計算・打算だけによって構成されているわけではなく、不完全な情報や短い時間に制約され、国民感情や閣僚、将軍の意見の影響にさらされていた。
 戦時の宰相の責任たるや非常に厳しいもので、パリが陥落したときの英仏最高戦争会議の様子からは、閣僚や高級将校が受けていた重圧が伺われる。何しろ失敗すれば、国家が失われ、自らの名誉はもちろん財産や生命も奪われる可能性が大いにあったのだ。
 それに比べれば、サラリーマンの場合、どれほど責任が重くなっても、失敗時に奪われるものはたかが知れている。スケールの小さな仕事とその責任に打ちひしがれて精神を病むとしたら、しょせん私はそれくらいの器の人間ということではないか。


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