2003年9月の修行日記


2003/09/30
 うちのプロジェクトで働いていた学生インターンが、「雑用と単純作業ばかりで時間の無駄だった」というひどいコメントを残して去っていった。欝だ……
 思い起こせば2000年7月、新人の私に与えられた最初の仕事は、紙に書かれたデータベースの項目定義をエクセルに入力することだった。ある意味単純作業だったが、項目名に登場する業界特有の専門用語を読んであれこれ想像するだけで面白く、退屈しなかった。そしてこのとき得た知識が、後でデータベース設計や移行設計を行うときにどれほど役に立ったことか……
 しかし私自身、「雑用はいやだ」と日記に書いたことがあったな……

「HP pc square in 天神」がOPEN!
 「九州地区でHP製品を試せるのはここだけ!」とのこと。さすが天神。
 なにしろ東京では渋谷、原宿、表参道とあちこち回らないと揃わないものが、福岡では天神だけですべて手に入ったりするものだ。
 下は8月16日に帰省したときの写真。天神とはこんなところです。


2003/09/28
 キーボードで『痕』の『ためいき』を練習。(『ためいき』は知る人ぞ知るPCゲームの名曲。このサイトを訪れる方々はけっこう硬派なので、たぶんご存じないでしょう……)
 SC-8820は旧世代の音源だが、ピアノの音色は悪くない。ヘッドホンを付ければ夜中でも練習できる。仕事が忙しくならなければ、当分心豊かな生活が送れそうだ。


2003/09/27
MIDIキーボード"Roland PCR-80"を購入。
 とりあえずいじってみます。使用感などは後ほど……
⇒最初はMIDIケーブルで直接音源のSC-8820につないでみたのですが、SC-8820にもPCR-80にも電源供給が必要となるため、この構成は廃案。いろいろ試行錯誤した結果、SC-8820、PCR-80ともにPCにUSB接続(バス電源で稼動)という構成になりました。
 キーボード経由で音源をコントロールできることを確認。キータッチもきちんとベロシティーに反映されます。(あたりまえか…) コード・プログレッションを勉強するという当面の目的には十分な環境が整いました。
 費用は、PCR-80本体が29,800円、キーボードスタンドが3,480円でした。
 だんだん機材が揃ってきて、MIDI仲間が欲しいところです……


2003/09/26
 有給休暇。
 公園にフルートを吹きに行ったところ、閑散としている。平日と休日でここまで違いがあるとは……失業者になった気分だ。
 風もなくいい気持ちで吹いていると、幼稚園児くらいの男の子が近寄ってきた。
 彼はしばらく僕の楽器をじっと見ているようだったが、やがて「それ、フルート?」と声をかけてきた。
「そうだよ。」と僕は演奏をやめて答える。
「それ、どこから音が出るの?」
 素朴な質問に僕は困ってしまった。「どこから」という問いに正確に答えることは難しい。それでも不正確とは知りつつ歌口を指差して、「ここからだよ」と答えた。
 すると彼は足部管の穴を指差した。
「この穴は?」
「こ、この穴は空気が出るだけだよ……」
「じゃあ、この穴は?」
 次に彼は胴部管に並んだトーンホールを指差す。
「これは音の高さを調整するためのものだよ。」
 僕は苦しい言い逃れを続けた。
「それ、金でできているの?」
「いや、銀だよ……」
「ふーん。どこで買ったの?」
 子供の好奇心は尽きることがない。MURAMATSUの名前を出すべきか…
「えーと、楽器屋さん。」
 僕は答えを濁した、がすかさず彼はたたみかける。
「どこの楽器屋さん?」
「し、新宿の……」
 そこへ彼の母親がやってきた。
「ほらほら、お邪魔したらダメでしょう。」
 母親は僕に「すみません…」と言いながら彼の手を引いて連れて行こうとする。
「ありがとうって言いなさい。」
「ありがとう。」
 その言葉に僕は「どういたしまして。」とこたえた。
 演奏をして、お礼を言われた初めての経験だった。彼は僕にとって最初の「リスナー」となったのだ。


2003/09/23
 「YAMAHA MOTIF ES」の紹介セミナーに行く。
 軽い気持ちで見に行ったのだが、「MOTIF ES」はヤマハのシンセの中でも高機能、高音質を誇るハイエンドモデルであることが判明。とてもじゃないが私のような素人が使いこなせるモデルではない。定価も\270,000から\335,000という帯域でまいった。

 ここ数日でめっきり涼しくなったが、この気候は学生時代を思い起こさせる。学生時代、9月はとても暇で、そしてひときわ孤独を感じる季節だった。この4日間ふらふら暇な時間を過ごしたが、昔に帰ったような懐かしさがあった。


2003/09/20
 夢の4連休獲得。
 『フルート・レッスン』の「Lesson 4. Dトリルキー」をアップ。
 このコンテンツをつくりはじめてから鍵盤が欲しくなってきた。和声の勉強をするには鍵盤なしでは苦しすぎる。値段は5万円程度で良いものはないだろうか。どなたか詳しい方がいればアドバイスください。


2003/09/16
C言語教育ソフト 「Mission C」
「エイダは、目的を完遂することのみを主として結成された非営利団体である。」
「その目的は、民衆に圧制を強いる五代政権の妥当、及び、メインコンピュータ・アースラの機能奪還にある。」
「アースラは、その根幹がC言語により構築されているため、エイダの活動員(エージェント)は、C言語の習得を必須とする。」
 あの「日経ソフトウェア」監修。絵は萌え系とは微妙に違う。「なんだこのベタな企画は・・・」と苦笑しつつも、満足なプログラミング経験のない私は気になってしまうのだった。


2003/09/15
 新コンテンツ『フルート・レッスン』を開始しましたが、いかがでしょうか?
 やはり楽譜を使うと表現力がぐんと高まり、これまで伝えたくても表現できなかった情報が伝達可能になります。
 楽譜のイメージは白黒ですが、なにぶんタテヨコが大きいためサイズが気になっていたのですが、いざ作ってみるとLesson 3.の『コヴェントリー・キャロル』で20KBありません。閲覧にそうストレスは感じないと思います。
 まだネタのストックがありますので、来週にでもLesson 4.を掲載したいところです。

 そういえばムラマツのSRですが、まだまだ扱いに苦労しています。昨日ブックオフで立ち読みした『頭文字D』では、拓海がハチロクからインプレッサに乗り換えて戸惑っていましたが、これまでとは段違いに高性能のモデルに乗り換えて、それを使いこなすというのは意外に大変なものです。

 ところでこの頃ITやビジネスの話題が出ていません(もはや「ITやビジネス」という言い回し自体がうさんくさくなっている)が、ぼちぼちOracle Master Platinumの勉強を再開したところです。LRUラッチまわりのところは各種マニュアルや参考書を読んでも相変わらずよく分かりません。Oracle9iでは"DB_BLOCK_LRU_LATCHES"パラメータが廃止されたそうなので、もう不要な知識かもしれませんが……


2003/09/14
"Singer Song Writer Ver.7.0"入手!
 そういうわけでHPのコンテンツ作成に没頭。


2003/09/11
 仕事中に"Singer Song Writer"のバージョンアップ版が届けられたらしい……
 土曜日に再配達の手配を行った。


2003/09/10
 帰宅途中の電車の中で、一枚の吊り広告が目に留まった。
 『電池が切れるまで 子ども病院からのメッセージ』(角川書店)という詩集の広告だ。
 広告には以下のような詩が掲載されていた。
「命」 宮越由貴奈(小4)
命はとても大切だ
人間がいきるための電池みたいだ
でも電池はいつか切れる
命はいつかなくなる
電池はすぐにとりかえられるけど
命はそう簡単にとりかえられない
何年も何年も
月日がたってやっと
神さまから与えられるものだ
命がないと人間は生きられない
でも
「命なんかいらない。」
と言って
命をむだにする人もいる
まだたくさんの命つかえるのに
そんな人を見ると悲しくなる
命は休むことなく働いているのに
だから、私は命が疲れたと言うまで
せいいっぱい生きよう
 この詩の卓越したところは、「命をむだにする人」を戒めつつも、「命が疲れたという言う」最後の瞬間には、「せいいっぱい生き」るという神に対する義務から免除されるのでは……と読者を暗い深淵に引き込むところにある。


2003/09/07
「昨日から可愛いイラストアイコンが入りましたが、どこから調達してきたんですか?」
「ああ、これはフリー素材だよ。製作者のHPにリンクを貼れば自由に使用できるんだ。僕のような絵心のないウェブマスターにも都合がよい時代になったものだ。製作者には本当に感謝しているよ。」
「それにしてもあのジサ…じゃなくて会社を辞めようとした事件以来、HPに気合が入ってきましたね。」
「ははは…、『自殺未遂』で構わないよ。事実そうだったんだから。そうだね、端的に言って前より暇が増えたからHP更新にかける時間も増えているんだ。」
「トーンも明るくなったような気がします。」
「うん、以前のような独白調も受ける人には受けていたんだけど、読者が気軽にレスポンスを発信できるような雰囲気じゃなかったね。あんな鬱な日記に対していったいどんな書き込みやメールを返せと言うんだい?」
「そ、そうですね……。ところで今後は何か他のコンテンツを充実されることは考えているのですか?」
「もちろんさ。現在このHPの最大の欠点は、IT、ビジネス、音楽といった様々な領域の雑多な情報が、『修行日記』にのみ詰め込まれていて、とても偏ったつくりになっていることだ。ここからまずフルート関係の記事を抜き出し、加筆訂正して独立のコンテンツとしようと思っている。この計画のために"Singer Song Writer"をバージョンアップしているところだ。」
「"Singer Song Writer"を? 確か今お持ちのバージョンは"5.0"ですよね。最新の"7.0"特有の機能を活用したコンテンツを考えているということですか?」
「いやいや、バージョン"5.0"が"Windows XP"に対応していないというだけの理由さ(笑)。 利用機能は当面はスコアエディタだけ。MIDIやMP3コンテンツは予定していない。」
「なるほど。最初から大風呂敷を広げない手堅い方針ですね。 そういえば長らく連載休止になっている『ヴェンチャー・ラヴ』の方は継続されるんですか?」
「イタタ…(笑) えーと、『ヴェンチャー・ラヴ』はもともと僕が就職する前にもっていた夢や憧れを託した小説だったんですね。でも実際のプロジェクト経験はそういった夢や憧れを打ち砕いてしまったわけ(笑)。 そのため今ではあの作品を書き続けるのはとても難しくなってしまった。昔からの読者には本当に申し訳ないんだけれど、『西部警察2003』のように無期延期ということにしたいです。」
「あきらめてしまうというわけですか……『テクスト経営システム』というサイト名の由来は、ビジネスとITに関する小説や評論を掲載してゆくという意気込みを表現したものと聞いていますが、今後の『テ経』は音楽の方向にシフトしてゆくのでしょうか。」
「確かに今後は音楽がメインコンテンツの一角として主要な地位の一つを占めることになるだろう。でも経営とITに対する関心がなくなったわけじゃないよ。ただこれからはもっと地に足の着いた、渋めのコンテンツを作ってゆきたい。例えばデータベース設計に関する記事とかだね。」
「そうですか。なんだか難しそう……。では最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。」
「えー、これまで内向的で鬱な日記ばかり書いてきましたが、それにもかかわらず10000アクセスまで付き合っていただきありがとうございます。これからはもっと読者の側を向いたコンテンツ作成を心がけて参りますので、よろしくお願い致します。」


2003/09/06
 J.S.バッハ『無伴奏フルートソナタ イ短調』 解読(analyser)
 渋谷のヤマハでJ.S.バッハ『無伴奏フルートソナタ イ短調』の楽譜を買って開いてみたところ、(なんか単調な曲だな……)という印象を受けた。16個の16分音符で構成された小節がひたすら続いている。
 そのため(これはフィンガリングの練習に主眼を置いている曲なのか)と思っていたところ……
「バッハの楽譜にはテヌートやスラー、クレシェンドがついていないの。だから演奏者が曲を解釈して補う必要があるわ。」
 そう言って先生は吹き始めた。
 すると驚いたことに、機械的な音の並びが主旋律と伴奏に分かれた……!
 『無伴奏』とは文字通り伴奏が存在しないことを意味するのではなく、メロディ・パートとバス・パート、二つのパートを1本の笛で奏でるということだったのだ!
 音符4つか8つおきに現れる低音部、ここにテヌートがつくことによってそれらが主旋律から独立したバス・パートであることが表現されるのだ。
 そしてテンポとボリュームも決して一様ではなく、緩急のメリハリがついている。
 第一楽章まで終えた彼女は、あっけにとられた僕に構わず説明を始めた。
「この曲は『イ短調』という名前だけど、実際には幾度も転調を重ねているの。この転調のプロセスを正確に理解することが曲全体をうまく奏でるための鍵になるわ。」
 彼女はホワイトボードに以下のような図を描いた。
「最初から8小節目まではイ短調(A-moll)でここまでがひとつめの動機。低音部が『ラ→ファ→ミ→レ』と下がっている4小節目は、ややつまり気味のテンポでデクレシェンドするのがコツよ。その後の7小節目から8小節目までは低音部が『ドシ→レド→ミレ』と上がっているので、逆に駆け上がるようにクレシェンドして行くの。」
「次に9小節目から並行調のハ長調(C-dur)に転調するけど、ここは惜しまずに息をいっぱいに吹き込むこと。次の10小節目でシにフラットが付いて下属調のへ長調(F-dur)に転調したかな…と思いきや11小節目でドにシャープが付いてさらに並行調のロ短調(D-moll)に転調する…というあわただしい動きになるからよ。」
「それからしばらくロ単調が続いて……14小節目、ここで曲想が急に変わるわ。何か気づいたところはない?」
「えーと、ここまでは小節の頭はバス・パートから始まっていたのに、ここから急にズレています。アウフタクト(弱起)が解消されているような感じです。」
「その通り! あなたこのごろ感性が鋭くなってきたわね。アウフタクトが解消されているせいで、ここの2小節は曲の中でも浮いた感じになっている。他の部分を原色系に例えるなら、ここはパステル調なの。つまりメリハリが薄まっているのよ。」
「でもね、このほんわかした感じはすぐ後の16小節目から高まってゆく緊張感を際立たせるために置かれているのよ。16小節目から18小節目まではクロマティック・スケールになっていて調を特定できないわ。こうやって聞く人を不安にさせてから、最後の19、20小節でホ短調(E-moll)に着地するのよ。」
「???」
「転調は普通、5度圏の輪の中で隣り合ったところ、つまり幹音が完全5度上の属調か、完全5度下の下属調か、長短をまたいだ並行調にしか移れないものよ。でもロ短調からイ短調を経由せずに一気にホ短調まで飛びたいからあえてクロマティック・スケールを使っているというわけ。」
「なるほど、そういう理屈があるんですね。僕がひとりで練習したときはこの箇所はシャープやフラットがたくさん出てきて旋律のイメージが全然つかめませんでしたが……」
「そうね、音楽の普通のルールから外れたことをするのだから無理もないわ。調(スケール)の壁を飛び越える、あるいは突き抜けるという強い意志をもってこの2小節を盛り上げていかないと、人に聞かせられる演奏にはならないわね。」
 レッスンを終え充実した気持ちで帰途につきながら僕は思った。
 彼女の活き活きとした演奏は、もちろんスコアのノートにそのまま従ったものではないが、自分勝手なアレンジや翻案ではなく、作曲者バッハの狙いに忠実なものだ。彼女自身が説明したように、それは音楽上の根拠に基づいているからだ。
 しかしこの無機単調な原譜をデコードし、先生と同様に表情豊かな演奏を出力するようなシンセサイザ・プロトコル変換をプログラムすることは、とうてい不可能だろう。
 「プロトコル変換」と呼びうるもの全てが、プログラム可能なものとは限らない。そしてそれは、音楽の領域に限らないのではないか……


2003/09/02
 SRを入手し、Altes第一巻も修了したということで、これまで得てきたフルートの奏法ノウハウと経験、エピソードをまとめ、サイトコンテンツに仕立て上げよういう計画を考えている。
 そこで手はじめに古い日記を紐解いてみたが、読み進めてゆくうちに目はフルート関係とは別のところに奪われていった。
 既に2000年の12月から、私は仕事の重圧にあえいでいたことが分かる。「今日は半徹です。タクシーで午前3:00に帰宅。」とか、「つばをはくと血が混じっているのはなんとかならないかね」とかいったキビしい記述がちりばめられている。
 それ以来、2001年、2002年、2003年とこのような陰惨なトーンは変わらない。
 これほど長期にわたると、2003年6月に会社を飛び出して自殺を試みたことも、短期的なストレスや衝動によるものとは言えない。
 そして今ここにある命は、かなり低い確率で確保された貴重なものなのだと思う。


2003/09/01
 秋の新入社員が入ってきた。
 わが社の慣習では、新人ひとりにつき4人程度の既存社員がチューターとして割り当てられ、研修期間中いろいろ世話を焼いたり相談に乗ることを義務付けられており(厳密には任意参加だがまあ必須と言ってよいだろう)、早速今日立食形式のランチ懇親会が行われた。
 当然ながら私にとって新人の相手などは得意とするところではなく、先週からそのことで上司に相談したくらいだった。
私:もし(私の担当新人が)バリバリの体育会系で、超ポジティブな人間だったらどうしましょうか? 僕は地味なタイプだからうまくコミュニケーションがとれるか心配ですよ……
上司:そんなときはスキルで圧倒するんだよ。
 ……というわけで(スキルで圧倒するぞ!)という意気込みで懇親会会場に向かった。
 取締役の挨拶のあと、人ごみを掻き分けて新人が着けている名札を手がかりに私の相手を探した。
 彼は長身でメガネをかけ、ややくせのある髪の毛が特徴の男だった。
 とりあえず挨拶と握手を交わす。声にやや関西風の面影があるが……
 ロンドン大学のCSI(Computing and ...忘れた)で情報工学を専攻し、気象観測システムを作っていただと!
 どうやってスキルで圧倒しろっていうんだよ。○○(上司の名)さん!
 おかけで食欲も失せてしまった。

 いま23:30だがお腹がすいたな……冷凍しておいたご飯を解凍してお茶漬けでもするか。


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