ポップコーンをほおばって

伊藤と三咲で中篇(原稿用紙換算で100枚くらい)を1本づつ書いているオリジナルBOYS LOVE本。キャラがありふれてないのがいいと読者さまから褒められてとても嬉しかったです。

三咲が書いた話は、バイク便の兄ちゃんと在宅勤務のCGデザイナーの話。めずらしく九つも年の差があるカップルだった。元気で強気で自分の非常識さにはまったく自覚なしに他人に常識を求めるわがままな受と、日頃はぼんやりのほほんとしてるけど、いざってときは案外頼りになる攻。こうやって書いてみると、私ってば趣味が少し変わったかも。昔だったら、とにかく外見は美形でクールで理知的で、しかし中身がけっこう天然ボケで壊れた性格が好きだったんだけど、この攻様は見かけからすでにボケボケだった。受が女々しいのは嫌いなのでその点は昔も今も変わりないです。だからって攻が女々しくても困るけど。

伊藤の話はカミングアウトとか、色々考えさせられるシリアスなボーイズラブ。だと私は思った。しかし、あらすじとかあおり文句とか苦手なので、とにかく読んでもらえると嬉しいです。

 

晴耕雨読

ポストペットのお告げ(なんだそりゃ、と思ったかた。そういうメールソフトがあるんです。それで、ひみつ日記に書いてあったのですよ。唐突に、晴耕雨読って)によりこんなタイトルになりましたが、内容はあんまり関係なかった。アリスが静かな避暑地で原稿書きに励もうとしてリザーブした貸し別荘がダブルブッキングで夏期講習の小学生とその講師夫婦、手伝いのバイトまでが同宿することになってしまう。そこで子供が次々に行方不明になる。火村が夏休みを利用して合流したあと、電話線は切断され、下界との連絡を断たれる。別荘の近所にはあやしげな作曲家が住んでいたりする。例によって火村とアリスの活躍により強引に事件は解決する。見所はやっぱり、無邪気に川遊びする二人。大長編なのに、ほとんどこのシーンが書きたかったために考えた舞台設定だった。

 

エスカレーション

アリスは仕事でその出自どころか性別までもが謎とされているカリスマデザイナー衣津美と対談する。火村は学生に、その友人がバイトの高層ビルの窓拭き中に転落死した事故について事件性の確認を依頼される。調べるうちに衣津美の周辺に死者が相次ぐ。携帯持ってないし、意地でも持たない決心(いつまで続くかは不明)だが、この話では持っている会社の友人にリサーチしつつオリキャラの着メロに凝ってみた。衣津美に好かれているらしいアリスに嫉妬している助教授が見所、かも。私としては、高層ビルのあちらとこちらで携帯でやりとりしながらアリスで遊ぶ火村が楽しかった。

火村になつく学生二人。オリキャラの義方と観山のコンビが、思いのほか好評だったのに気をよくして、彼らは『晴耕雨読』のほうにも特別出演することに。うちの本は、基本的には一話完結なので、他の物語とは続いていないことになっているのだが、彼らのおかげでこの本の話と晴耕雨読の話だけは地続きということになった。

 

Paradox

一大決心をして火村のダークな部分に向き合ってみよう、と思って書いた長編。火村が過去に関わった事件。その犯人の身内の逆恨みから監禁され、自らの殺意と対面させられる火村。すごいシリアスで、痛い話になるか、と思ったら玉砕。所詮は私の書くものなんてこの程度。結局はアリスとのらぶらぶぶり全開。なんだか幸せそうな話になってしまった。

 

さいくる・ひっと

再録本。『Secret Gig』という本の掲載した『HERO』が大長編で本塁打。『Ouilaw』という本に掲載の『Someone Like HIM』が長編なので三塁打。『海のある奈良に行く』という海奈良ツアー本に書いた『人魚のしっぽ』というはちゃめちゃなパラレルが二塁打。よそさまのゲスト原稿として書いた『君が本当に欲しいもの』が短編で短打。ということで、野球で同じ人が同じ試合のうちにヒット、ツーベース、スリーベース、ホームランを全部打つことを『サイクルヒット』と呼ぶことから、本のタイトルにした。自分の作品にホームランとか言うの厚かましいとは思ったんだが、単に長さの問題だと思ってもらえると有り難い。それから、おまけの書き下ろしが3頁。これも、甘々な話。

初めて書いた大長編には、やはり思い入れ深いものがあるけれど、誰からも評価されなかった『人魚のしっぽ』も、自分としてはお気に入り。本来、パロディの醍醐味というのは、こういうところにあるんじゃないかと思うのだが、どうだろう?

 

有栖を乱読

本当は新刊見送ろうと思ってたのに、イベントに新刊ないのが寂しくて、無理やり発行した薄い本。オフセットだけどB6中綴じにしたから、コピー本と間違われているフシがある。内容は『雨天決行』と『人喰いの滝』のパロディ短編。短い話だけど、やおい本。「この火村おやじ入ってませんか?」というお手紙をいただいた。そうか。全然気がつかなかった。おばさんが書いてるんだからしゃあないじゃん。と、開き直る。三咲には耽美で美しいやおいシーンなんか絶対に書けない。と、改めて確信した一冊。

 

Crazy Season

三咲の原作で海月裕美の画による長編マンガ。原作を同人誌にする予定はないので、是非この本で読んでいただきたい。しかし、マンガの場合は長編でも文字で内容を説明してしまうといきなりねた割ってしまいそうだな。ええと、女性3人、男性1人というバンドのボーカルが死んだ事件で、そのダイイングメッセージらしきものをめぐって、火村が捜査をする。容疑者全部に当てはまってしまうようなダイイングメッセージものというのは、考えるのがとても楽しかった。まえにも一度書いてるけど、また書いてみたいと思う。

 

Strange City

サイキック編。二人の現在と、中学時代の出会いのシーンが出てくる。オリキャラも出てくるけど、ジョージや片桐も出てきて、三咲にしては、珍しくパロディの王道を行っているような気がする話。中学時代のアリスが可愛いというよりバカ過ぎて、まるで小学生のようだとあとから思った。けど、たいていの読者さんは優しいのでバカだと思ってるのは私だけかも。オリキャラで出てくる火村の同業者である女は、最初すっげーヤな女にするはずだったのに、書き終わってみたらそうでもなくなっていた。どうしてだろう? ヤな奴書くのって難しい。私が善人過ぎるから、じゃなくて自分がヤな奴だからさ。

 

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