ボーイズラブって呼び名はちょっと不本意

 

 流行のはじめは、本屋のコーナーの名前が確か『耽美小説』だったように思う。

 私が、最初に認識した言葉はジュネだった。

 でも、今はボーイズラブって言葉が定着しつつあるような気がする。いわゆる、男性同士の恋愛小説、のジャンルね。

 名前なんかどうでもいいの。面白い小説が読みたいの。というのが、本音でもあるのだけれど。でも、ボーイって少年でしょ? だから、直訳すると、ボーイズラブのなかにはおじさんの恋愛は、入ってないよね。それが、不本意だったりする今日この頃。

 確かに読者層は、十代から二十代前半のお嬢さんがたが主流なのでしょう。となると、登場人物は中学生からせいぜい大学生くらいの男の子が無難で。

 でもね。うちのサークルでアンケートをとった結果。うちの読者さまのなかには、三十代だって、けっこういらっしゃるのよ。

 そりゃあ、火村もアリスも御手洗も石岡も、とてもボーイズとは呼べない年齢だけどさ。いや、だからこそね。その手の小説を愛好しているのは、なにも若いお嬢さんばかりじゃないでしょ。それに、若いお嬢さんたちのなかにだって、大人のお話がお好きな方々もたくさんいらっしゃるはず。

 なのに、なんで子供の恋愛ばかり本になるの? 学園モノとか多過ぎない?

 そういう傾向を助長させるのが、このボーイズラブって呼び方のような気がするんだよね。だから、ファンとして不本意。

 学園モノだって、面白い作品もある。

 でも、知らない作家の作品だったら、避けるかな。どうせなら、サラリーマンモノとかね。医者でも刑事でもいいから、大人の話が読みたいと思う。文庫も新書も、その手の小説は山ほど出版されてるよね。どこの出版社もすごい発行ペースで、平積みになってる間は手に入るけど、一ヵ月後に本屋の棚に残ってることはほとんどないってのが現状で。それは、裏を返せば、新刊じゃないと販売スペースを確保出来ないということでもあって。だからこその、濫発、使い捨て。

 そうして、積み上げられる作品群は、どれも似たり寄ったりの、どこかで見たような設定。どこかで見たような展開。そして、お約束の結末。最初の数ページを読んだだけで、ほとんどそのストーリー全体の筋が解ってしまうような作品も少なくない。

 そうやって、活字はどんどんその信用を落としていく。プロ作家の作品だからって、いつも面白いとは限らないって読者に教えてしまう。

 子供相手なら子供だましで済むとでも思ってるのかな?

 それはとんでもないことだよ。子供の感性をみくびっちゃいけない。慣用句の使い間違い。誤字誤用の氾濫。そういう姿勢で、このジャンルを低レベルに落とすのはやめてもらいたい。

 

 それからもうひとつ。ちょっと話はズレるけど、私は現実問題として、同性同士の恋愛を否定しない。

 私はデブが嫌い。痩せてる人が好き。綺麗な顔が好き。鼻筋が通っていて、睫が長いのがいい。

 そういう好みのひとつとして、男が好き。女が好き。そういうのがあってもいいんじゃないの?

 ボーイズラブは好きだけど、現実のホンモノのホモはイヤ。とか、そういう小説のなかででも、真性ホモはパス。俺は男なんか好きじゃないけど○○だから好きになった。というパターンしか受け入れない。って、人がけっこういるらしいけど。

 そういう詭弁は嫌い。というか、そういうことがあってもいいけど、ボーイズラブの登場人物がみんなそんな奴らだったらうんざりだって思う。

 誰かを好きだと思う気持ちは理屈じゃない。それは、条件とか打算だけではどうすることも出来ない。

 だから、誰だっていつ、どんな相手を好きになるか解らない。

 今、私には女性で恋愛対象に見られる相手はいないけど、過去にいたこともないけど、未来がどうなるかは解らない。

 自分が同性を好きになる嗜好の持ち主だとはっきり自覚している人もいるだろうし、実はそうなのに一生気がつかないままの人もいるのかも知れない。

 でも、そう考えれば、そういう嗜好を持つということがまったく他人事とは言い切れないんだって解るはず。

 

 なんてことを思いつつ、昨今のボーイズラブ出版業界を憂えるのだった。

 ワンパターンにはまり込まないで欲しい。売れるからって、同じ路線ばかりでは飽きられるってことを自覚してもらいたい。

 ただ、面白い小説が読みたいと思う。そして、面白い小説が書けるようになれたらいいと思う。

1999.11.7

 

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