『うに』



ぼくがボーイスカウトの3年目のとき
夏のキャンプで瀬戸内海の無人島にいきました。
周囲1キロちょっとくらいのとても小さいほんとの無人島です。
島に水はないので本州の漁師さんにお願いして毎日運んでもらいました。

島に渡るのも漁船でした。
砂浜手前に船首を乗り上げ、ひざくらいまで水につかるくらいのところから
みんなで手分けして浜に備品を運びました。

とりあえずそこの砂浜で設営を始めたのですが
砂地にペグがなかなか落ち着かなくてだいぶ苦労しましたが
夕方までかかってやっとテントと食卓とかまどが出来上がりました。
何をするにも不安定でいろいろてこずり
夕食と後片付けを終えたらもう消灯時間で
みんなぐったりでその日は他に何もせずテントで寝ました。

ところが夜中、テントの外でリーダー達が騒いでいます。
叫び声でみんな目が覚めました。
叫んでいた内容は
「潮が満ちてきたぞー!」
外に出るとテント横10mくらいまで波が来ています。
よく考えたらわかるのに・・・
リーダーの言われるままにここで設営したことに何ともいえない脱力感を覚えながら
気合でテントを一段高いところに移動しました。
設営時は何時間もかかったのに、30分で移設できたことに驚きました。
火事場のくそ力ってやつでしょうか

話がそれましたが、キャンプ中は何回か自由時間があり
そのときは昼寝も海水浴もなんでもおっけいだったのですが
みんな水中メガネやヤスなどもって海で遊んでいました。

しばらくするとリーダーはバケツいっぱいのうにをもって浜に上がってきて
石の上で殻をわってうまそうに食っていました
ぼくはそれまでうにがすきではなく、
見た目が気持悪いと思っていました。
でも、ちょっともらってみたところ
口いっぱいに予想もしていなかった味がひろがりました。
正確に言うと、はじめての味で衝撃のあまりしばらく味がよくわかりませんでした。
でも、しばらくして海の塩味のなかにまったりした何ともいえない味と風味がひろがり
一瞬で病みつきになってしまいました。
ボーイスカウトに入ってよかったと初めて思った瞬間でした。

それからうには大好きになったのですが。
高い寿司屋でも料理屋でもあんなに風味豊かなうには食べた事がありません。
生といっても新鮮じゃないものは臭いです。
やっぱり漁れたてをその場で食べるのがいちばん。
海でのキャンプは大変だし危険もあるのですが、
ぼくは、うにがいる海が大好きです。