入浴剤

by 天羽

 

「うわっ!」
 浴室から響く間の抜けた声に、征士は驚いて駆けよった。風呂場で起こることなどたかがしれているが、当麻は妙なところで抜けている。
「どうかしたか?」
「あ、征士……。悪い、落としちゃって」
 そういって指差した先、浴槽の中は乳白色に染まっている。まるで入浴剤を入れた時のような状態だ。だが、このにおいは……
「セーター用の液体洗剤か」
「これ、ちょっとひっかけちまった」
「ああ、すまない。昼間使った後に電話があって、蓋を閉め忘れていたようだ」
「ま、中性洗剤だし、このまま入っちゃうよ。すべすべして気持ちイイかも〜」
 浴槽の中に腕を突っ込んで、当麻は暢気に笑った。
「そうか? お前がいいのなら私はかまわんが。……確かに今から湯を入れ直していると寒いだろうな、お前は」
「その通り。おれは自業自得だから全然いいって。それよりお前をこんな風呂に入れるのはどうかと思うんだが」
「私も、かまわん。たまには変わった風呂でもいいだろう。だがお前、落としたのが『カビとりハイター』じゃなくてよかったな」
 征士は浴室内の他の洗剤を見つけて、くすくすと笑い出した。
「うわ、たしかに」
 酸性の強力な洗剤などを落としたら、さすがに皮膚に支障をきたすだろうし、入れなくなるところだったかもしれない。
「では、ゆっくり入ってくれ」
「え〜せっかくだから征士も一緒に入ってけよ」
「……遠慮する」
「冷たいなぁ」
「お前が叫ぶから来たんだ。こちらも鍋が火にかかったままだぞ、まったく」
 呆れたように征士は浴室を後にした。

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本日(2001.12.17)の日記(笑)。日記帳に書くはずの話を当征に語らせてみました(笑)。なんか同居してます、この人達(笑)
風呂上りに10分でメモしたので会話シーンだけですが(^^;)。今日ほんとに洗剤入りの風呂に入ったので書いてみました(失笑)