いつか
by Nina(1998.12.18)
side Seiji
俺が、好き、か?
俺を、愛して、いる、か?
お前が囁いた。甘く。
お前はそうやってすぐ言葉がほしくなる。私を抱きしめて、自分の腕の中に収めてもなお、ほしくなる。
だが、私は言ってはやらぬ。
言葉は人を騙す。言えば言うほど不実に思える。
言葉が重なって、日が日に積ると段々淡くなる。やがて真実と嘘とは一つになる。
私は言わない。ずっと言わないでおく。
言えないものほど、真実なものはない。
日は東から昇っているのか、聞かなくても分かるように。
現せる真実は、ただ、一つ。
そうであろう、と、お前にもいつかわかる。
願っているのは私。
目が覚めたら、すべてが夢から覚めるのではないか、と不安に浸っている私をお前は知らぬ。
だから、
この世の終わりが来ようか、決して言ってはやらぬ。
side Touma
命は儚いもの。いつか消えてしまう。
命がある時に、大切なことはやるだけやろう。
お前は困っている。
俺が好きだと言う度に。
愛を繰り返す度に。
困惑している。
言葉でしか表すことが出来ないわけじゃない。
言わなくても分かる、とも、分かっている。
それでも、言葉までも、言う。
お前を見るこの瞳も、お前に触れるこの手も、自然にお前を追うこの足も、お前の息で動悸してしまうこの心までも。
俺を見て。そして。
お前もいつか分かる。
好きなら好きだと言え。愛しているなら愛をいう。
繰り返しても繰り返す。
俺の全てがお前を愛している。
この息が止まるまで。
[ END ]
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