Our mind keeps movin'  ”like a rollin” stone.





交差点で信号待ちをしていると、横断歩道の向こう側に、学生服の一団。
学ランを着た男子生徒も、ブレザー姿の女子生徒も、かなり大きい紙袋を手に下げている。

紙袋を持っていない奴も、手には茶色い筒を握って。

ああそうか。


「何だか卒業式の高校多いなぁ」


隣で走が呟く声が聞こえた。
どうやら、俺の出した結論と辿り着くところは同じだったらしい。


「高校の卒業式なんて何年前の話だ?」

「えっと………七年前?」


俺の問いに、奴は指折り数えて言った。


「って事は、俺は六年前ってわけか…」

もうそんなになるのか。

高校の卒業式は、部活の連中と騒いで、クラスメイトと打ち上げて海まで行ったっけ。

誰かの放ったロケット花火が足に直撃して脛毛焦がしたり。
クラスの男子と女子それぞれくじ引きで番号割り振って、同じ番号の奴同士がポッキーゲーム。
見てるだけでも寒々しかった、海岸での野球拳。(負けた奴は海へ入った)

合唱コンで優勝した時の歌を海岸で絶叫して、族の連中と喧嘩になったり。
酒呑んで酔っ払って、線路に入って電車止めたり。






――長いこと忘れていた筈なのに、どうして今になって思い出すんだ?




「お前、卒業式終る頃にはボタン全部無くなってたクチだろ?」

俺の問いに、奴はにやっと笑って。

「まぁね?」

「まずボタン無くなって、次にカフスだろ?」

「カフスが全部なくなると、カラーとか、名札とか、あと卒業生が胸につけるあの花、あれまで獲られたっけな」


はいはい。

「それはそれは見事ですね、カケル先生?」




――自衛隊に入って、ガオレンジャーになって。

高校生活の思い出なんて、すっかり忘れていた筈なのに。



――ああそうか。

俺の過ごしたこの二年弱。

それがあまりにもあの頃に似ていたから。


皆で一致団結。

そんなノリで過ごした二年弱だったから。


――だから、思い出すんだ。





ガオズロックを出て、日常の生活に戻って一ヶ月。
俺は走のアパートに半居候のような状態で置いてもらっている。
日用品や夕飯の材料などを買い込み、二人大きな荷物を抱えてアパートへ戻る。


炊事洗濯は交代制だ。
まぁ昔も一人暮らしだったし、一人も二人もそんなに勝手が違わない。

買ってきたひき肉と野菜でハンバーグを作り、デミグラスソースの缶のプルトップを引き抜く。



――思い出す理由はそれだけか?


高校生活と戦士としての生活が似ていたから。それだけか?



「岳、ソースついてる」

言うと走は、俺の頬に付いているソースを舌で舐め取った。




――ああ、そうか。


高校生活からこっち、人を好きになることなどなかったから。


高校生の時のような気持ち。


それを再び、持つことが出来たから。


そしてそれは他ならぬ、目の前にいるこいつに向けた感情であるから。



――だから。


――だから、思い出すんだ。






「岳、さっきのボタンの話な」

出来あがった煮込みハンバーグをテーブルに運びながら、走が言う。

「ああ?」

「俺、第2ボタンは誰にもあげてないよ?」





「でも、最近、誰にあげようか決まった気がする」

              





                END?




2002.03.07. 脱稿

マドレーヌ様からのキリリクで、お題は『獅子鷲』でした♪
「獅子鷲が両思いになったのは、最終回でオルグを倒した日以降のことである」というオプション設定です★
其の結果、両想いになる寸前の話になってしまいました(汗)
卒業シーズンという事で、卒業ネタを盛り込んでみました。
いつもとちょっと雰囲気違った鷲一人称、いかがでしたでしょうか?
それにしても…両想いらぶらぶ前に鷲のほっぺたを舌でぺろっとやる獣医…さすが獣医…(笑)
そしてそれに動じない鷲。夫婦の素質ありありです(笑)

しかも背景まで自作するという凝り様…『中』ってはいってますがな…(汗)

獅子鷲〜獅子鷲〜まだまだ獅子鷲です♪
マドレーヌ様、リクエストありがとうございました!