其 ノ 心 、 其 ノ 輝 キ 、 一 隅 ヲ 照 ラ ス 。





『人というものはそう自由なものではない…』



『男であるという制約。力を持って生まれ落ちたという制約。』



『そして…今の此の世に生きているという制約…』



『様々な制約の中で生き…其の中で、俺達が出来る事を最大限してゆかねばならない』







ゆらゆら、ゆらゆらと水面が揺れる。


普段の自分の居場所が河川敷に落ち着いてからというもの、一人で居る時に水面を眺めてしまうのが癖になっていた。
ただ、いつもと違うのは、ここが海だという事だけ。


白い手すりの向こう側には漆黒の海面が広がっている。
京から相当な距離があったため、千年前に海を見たのはたった二回。
その時にみた『天橋立』も、白い砂浜もここにはない。


港には白い大きな客船が留まっている。
少し装飾過多とも思える華美な照明を纏い、賑やかな音楽に包まれてその船は未だ眠る事を知らないようだ。

右耳に潮騒を、左耳に街の喧騒と雑踏を感じながらゆっくりと歩いていく。


「シルバー!!」

耳慣れた声に振り向くと、赤い袖ががっしりと俺の腕を掴んだ。

「レ…レッド?!」
「どうせ一人で暇してるんだろ?ちょっと一緒に来てくれないか」

物言いは穏やかだが、これは強制だ。
レッドとの付き合いはまだ浅いが、こいつが言い出したら聞かない性格だというのは今までの遣り取りで、身に染みて解っている事だ。こういう時は、無駄に逆らわない方が良い。

かくして俺は、レッドに腕を引かれ今来た道を逆行する事になったのだった。


   ※   ※   ※


「ここ、入るから」
そう言って立ち止まった建物を見上げる。
と、そこには…夜空に届くかのような、高い光の柱が聳え立っていた。

「大人二枚」
「ありがとうございます。千四百円になります」
などという遣り取りを交わし、上下運動を繰り替えす妙な箱(エレベーターというのだそうだ)で運ばれると、何時の間にか最上階と思われる部屋に着いていた。

「ここは……」
「ほら、シルバー、もっとこっち来なって」
言われるまま、窓の傍で手招きをしているレッドの隣に立つ……


紅、青、黄、白、色とりどりの光の洪水。

夜空では収まりきれずに零れ落ちてしまった輝きが、黒い空間を飾り起てている。


「綺麗だろ…?」
「ああ…」


   ※   ※   ※


「平安時代みたいに…夜は真っ暗で静かなものじゃないんだ…もう…」

「自然じゃないかもしれない…眠らなくちゃいけないのかもしれない」

「だけど…この光は、何百万という人々が生きているしるしなんだ」

「人々の…命の光なんだ」

「俺達は…万能じゃない…弱いし…力だって限られてる」

「だけど…その限られた力で、俺達は精一杯やらなきゃいけないんだ」




そう言ったレッドの横顔は…千年前のあいつにひどく似ていて。
しかし、レッドにしか持てない輝きを確かに纏っていて。









蘇芳…お前の…生まれかわりかもしれないこの男に…







俺はまた…惹かれている……

              





                END?




2002.01.24. 脱稿

じょにぃ、HAPPY BIRTHDAY!!
君との付き合いも長くなって…おねぇさん嬉しいよ(にやり)
ともかくも。これからも変な方向に突っ走って行きましょう★
何だか変な話になっちゃってごめんよぅ…
赤銀むずいよ!!いや自分がだめだめなのです。
何しろ初赤銀だし…今銀のお相手としては奴がブームだし…
すみませんです…

そしてすみません某マリ○タワーは遅くても夜10時までの営業です。
こんな深夜までやってるわけありませんね★