I see the sunshine when I look into your eyes.





海岸沿いの歩道に出ると、海からの風を真正面からモロに受けた。
手に持っていたスーパーの紙袋が、ガサガサと音を立てている。

「お〜ぞらのかな〜たへ〜♪ひかりをあびな〜がら〜♪」

「随分ご機嫌だな……しかもそれ、俺の持ち歌じゃねぇか」

「だって、イエローとふたりっきりになれるの久しぶりじゃんか。夜以外」



ここのところのオルグの出現率には目を見張るものがある。
余りにも頻繁だったので、買い物にも行けなかったし。
食事はといえば、テトムの『千年の秘薬』とかいうまっずい携帯食と、カップラーメンのみ。
全く、こんなんで良くオルグ倒してきたよな。

んでもって、今日は久々に何もない休日。
俺とイエローは、買い出し当番。

「まぁな。最近忙しかったからな」

ポケットに手を突っ込んで、俺の前をのらりくらりと歩くイエロー。
何だか、まんざらでもない様子。

嬉しいなぁ〜♪


俺達が歩いている海沿いの国道からは、砂浜と海岸線が一望できる。

「もうすっかり春の海だね。三月って感じ」

三月の海は、別れの季節らしく、何だかやっぱり淋しそうで。

「そういうのって解るもんなのか?」

「そりゃあ『怒涛の鮫』ですから♪イエローが空の事何でも解るのと一緒でしょ」

「そういうもんか?」

「そういうもん♪」



春の海。

…そういえば…


「俺、高校の卒業式の日に、学校の近くの海で告られた」

「…は?」

「『ずっと好きだった』ってクラスメイトの女の子に言われて、そういう気分じゃなかったから断って。そしたら、『思い出にするから一回だけキスして』って…」

「……いきなり何だ」

「や、丁度こんな季節だったなぁと思って。今、シーズンじゃん?」

「ああ、そうかもな」


あれ?
イエローの声音、いつもとちょっと違くないか?
濁ってる…不機嫌?
もしかして…

「イエロー、妬いてる?」


前を歩かれているから、表情は解らない。
何も言わないイエローの背中に視線をぶつけていると、それは突然振り向いて。

「誰が妬いてるって?」

言って、イエローは俺の唇に触れた。


短く、軽く触れるだけのキス。
だけどそれは、俺を動揺させるのに十分だった。

「…ッはっずかしいやつ……」

「お前の思い出話の方がよっぽど恥ずかしいぞ、このお子ちゃまが」

何事もなかったように、また前に向き直って俺の前を歩き出す。


「そういうもん?」

「そういうもんだ」


ふーん…そっか。
そういうもんなのか。



「イエロー」

「何だ?」

「イエローの卒業式ってどうだったのさ?」


「………」


あれ?
てっきりすぐに切り返して来ると思ったのに、無反応?

「…もう、忘れちまったな」


喋りたくない事があるならそう言やいいのにさぁ。
まぁ、そこがイエローらしいっちゃらしいけど。

と、ふいに立ち止まって、海を見て。
何をするのかと思ったら、柵を乗り越えて砂浜に飛び降りやがった。


「おい!?」

「俺の高校も、お前んトコみたいに海に近かったんだ」

後を追って飛び降りた俺が、ズボンにはねてくっついた砂をはらっていると、イエローはまた歩き出し、喋り始めた。

「教室の窓から海が見えて、授業中ずっと空と海ばっか見てた」

「イエローらしいね」



「特に…午後の海が好きだったな。太陽が高く上って、空が明るくて」

「太陽の真下の海が、反射してキラキラ光んだよ。すげぇ綺麗だったな」


「それ思い出すんだ。お前の、見てると」


また立ち止まって、振りかえりもせず。








―――…やっぱりイエローって、恥ずかしい奴だよ。

              





                END?




2002.03.24. 脱稿

綾代直哉様からのキリリクで、お題は『鷲鮫』でした♪
リクを頂いてからSSをアップするまで時間がかかってしまいすみませんでした<(__)>
大人な鷲さんを鮫っ子の視点から語らせてみましたが…いかがでしたでしょうか?
三月中はまだ卒業シーズンということで、学園ネタと卒業ネタを少々盛り込んでみました。
鷲さんの卒業式に何があったかは…そのうち明かされるやもしれません(笑)

今回書いてて実感したのは、私はやっぱり鮫と鷲が好きなんだなぁ…という事です。
鷲鮫では鷲が格好良く、鮫鷲では鮫が格好良く。
同時間軸にはありえないカップリングですが、このサイトには両方同時に存在するようです(笑)
(鮫鷲はまだはっきりした作品がありませんが)

綾代直哉様、リクエストありがとうございました!