Scene 2.  誰よりも、何よりも。





ひとしきり泳いで、仰向けに浮いて空を相手にすると、紺色の夜空に満月が怖いくらいはっきり見えた。

そんな月も…なんだかぼやけて…まだ俺泣き足りないのかな。

と、ガオシャークと並んで浮かんでいる俺の反対隣に、紫紺の影が見えた。

「ガオハンマーヘッド…?」

呼ぶと、奴は俺の身体にすりよってきた。しかし、その動作は普段と違い、とても静かで穏やかだった。
まるで、俺の気持ちを見透かしたかの様に。

「お前…なぐさめてくれてるのか……?」

「ありがとう……」


     ※    ※    ※


熱いシャワーを浴びて、冷えた躰を暖める。
眼の周りがひりひり、熱をもっていてかなり気分が悪い。もう少し湯気にあたっていた方が良さそうだ。
けれども、動かないで何かを考えているとまた泣き出してしまいそうだったので、これくらいで上がる事にした。


洗面所に出て、持っていたタオルを水で冷やし、瞼に当てる。


     ※    ※    ※


自室に戻る途中、台所に人の気配を感じ、思わずそっちに足を向けた。

片目だけでもはっきりと解る金髪が忙しく、しかし決して無駄のない動きで台所の中を動き回っている。



「イエロー…?」

「ブルーか。もうシャワーは浴び終わったのか?」

「…何で?…イエローこそ、明日の朝食当番はレッドじゃなかったっけ?」

「俺は夕食当番。仕込みを今からやっといた方が美味しく作れるからな」

「仕込み…って…?」

「シチュー。食うか?丁度今煮込み終わったところだからな」

「うん。泳いだらお腹すいちゃった」


味見だからな。そう言うにはいささか大きすぎる器に盛られたシチューにスプーンを差し込んで、湯気の中に顔を突っ込んでいると、イエローが俺の目の前の席に座った。

「……っうまぁー…」

「そうか?」

「うん。どうしてこんなに美味しく作れるのさ?」

「…シチューをつくる時のコツは二つ。『決して煮立たせないこと』『ルーを入れるときは一回落ちつかせてから』それさえ守ってりゃ、美味しいシチューが出来る」

「そっかぁ…」

自炊はお手のもの、炊事洗濯超手際良し、応急処置まで任せられるこの男が自衛隊出身なのだと、今更ながら思い出した。


「イエローさ……この戦いが終ったら…どうするつもり…?」


俺の質問に、イエローは少し時間をおいて、ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。



「…俺は…また…空に戻るだろうな…」

「空に…?」

「ああ…空が好きだからな」

「空かぁ……俺も…海が…好きだな…」




「あんまり…無理してんじゃねぇよ」

「え?」





「海と同じ位好きなもの、もうひとつあるんじゃねぇのか?」








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2002.02.01. 

鷲キャンペーン中のようです(笑)
自分の牛鮫世界での鷲はかっこいいです。
でも鷲鮫(リバ可)(笑)
さぁこれで話が動くのか…どうなるのか牛鮫!(いきあたりばったり)
明日1限テストなのになぁ…(爆)


……そしてまた。


鮫っ子に愛を……!