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SMALL TWO OF PIECES 〜軋んだ破片〜 綺麗だと思った。 意志の強い目、日に当たると橙色に輝く髪、高めの声、紅い唇、…彼を創る全てが、綺麗だと思った。 そして、欲しいと思った。彼の全てが欲しかった。彼とひとつになりたいと思った。 自分の腕枕で眠る海は、とても神聖で犯し難い。本当に、天使の様だと思う。22歳の男が19歳の男に向かって使う言葉に相応しいとは言えないだろうが。 愛してる 愛してる 誰よりも。 だから、言えない。 『だいすき』 海にそう言われた時、正直自分はどうすればいいか解らなかった。恋愛感情を抱かれている事も、自分が抱いていることも解っている。だからこそ、答えられなかったのだ。 大人になってしまった自分には、十分過ぎる程解る。 出口の見えない関係、必ず終わりがやってくるであろう。泣くのは相手か、自分か、はたまたお互いか。 いつからこんなに臆病になってしまったのだろう。 何とか上手く答えなくては… 『自分も、だいすきだよ』 抱き締めて、眠る。 --------------------------------------------------------- 閃光で一瞬、何が起きたのか解らなかった。 飛び散ったプロテクターの蒼い破片。それがいやにきらきらと光っていた事は覚えている。 蒼い破片 破片 破片 そして崩れ落ちる蒼。 抱き締めた躰が熱を失ってゆくのがスーツ越しに感じられた時、思わず叫んだ。 『おい!ブルー!! 眼を開けてくれよ!』 その後の事は、あまり良く覚えていない。 視界が暗転して、どれくらいたっただろうか。眼を覚ました自分は暗闇の中にいた。 妙に冷静で、辺りを見渡す余裕さえあった。そして、見覚えのある影が、三つ倒れているのも確認できた。 覚悟のできた自分は、胡座をかき、この暗闇に来る前、何を考えていたかを考え始めた。 --------------------------------------------------------- 海の首筋に残る、桜の花びらのような紅い跡を人差し指でそっと撫でてから、キスをする。くすぐったそうに笑う海が、耳元で呟く。 「…っん…も…しないよね…?」 「うん…ごちそうさま…」 「何だか、その言い方えっちくさい」 言いながら自分の首にきゅっとしがみついてくる。「…でも、念願叶って嬉しい」 「念願…?」 不思議そうに尋ねる自分に、海はふわっと笑って、そして真っ直ぐ自分を見つめて、言った。 「…ずっと、草太郎が欲しかった」 その言葉が自分の耳に届いた瞬間、瞼の裏で、あの蒼い破片が輝いたような気がした。 海の背中に回した手に力を込めて、言う。 「自分も…ずっと…海が欲しかった」 ずっとずっと言いたかった言葉。吐き出せなかった思いをようやく吐き出し、緊張のせいか震えている自分の手を握って、海は続けた。 「…草太郎さ、俺達が男同士だって事とか、19歳と22歳って事とか色々考えちゃったんだろ?」 「…!」 図星をさされて無言になってしまった自分を無視して、続ける。 「まったく…大人ってこれだからなぁ…俺だってそう思わなかったわけじゃないけどさ…でも、今日…あの世界で1人で皆がやられてくの観て、心底後悔した。」 「海…」 「欲しいもんは、手に届く所にある時にねだらなくちゃいけないと思った」 そこまで言って、また自分の胸に顔を預ける海の言葉を受けて、自分も喋り始める。 「自分も…暗闇の世界…あの世で考えたんだ…自分はなんで、ウラに向かっていったのか…って…」 「なんで…って…?」 「海と一緒じゃなきゃ嫌だったからだ」 敵討ちのためなんかじゃない。取り残されるのが嫌だった。海をひとりにしておく事が耐えられなかった。死んだら同じ場所にたどり着けるかどうかなんて知らなかったけれど。 そこまで言って、海の唇に自分のそれを合わせる。しばし唇の感触を味わった後、目を閉じ海の頭を丁寧に撫でながら、呟く。 「良かった…一緒で…」 「ん…だいじょぶだよ…俺達なら、へぇき…」 同じタイミングで目を閉じた海が、うっとりしながら呟いていた。 ―――Broken mirror, a million shades of light. The old echo fades away. But just you and I. Can find the answer. And then, we can run to the end of the world. We can run to the end of the world. 百億の鏡のかけら ちっぽけな命のともしび 遠ざかる懐かしい こだまよ だけど あなたとわたしだけが 『答え』を見つけ出せる いつか 銀の道はどこまでも まっすぐのびて 走ってゆける 世界の果てまでも――――――――――――― END 2001.10.16. 脱稿 初ガオ。初牛鮫。HPにアップする事なんて考えもしなかったので粗い荒い…(あは) 元ネタは同名の曲から。 歌詞等、こっそりアップしてます。何か問題があったら下げます。 そういや書きあげた日ってブルーが死んだ回の一ヶ月後だ… ⇒戻る
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