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問1. 次の極限を求めよ。 数学V 〜無限数列〜 極限 x→+∞のとき、関数f(x)がある一定の値Aに限りなく近づく場合、このAをx→+∞のときの関数f(x)の極限値または極限という。 また、無限数列は極限が存在するものとしないものに分けられる。極限が存在し、極限値をとる数列は『収束』。極限が存在し、極限値をとらない場合、また、極限が存在しない場合は『発散』と呼ばれる。 「あ、この数列、収束しねえみたいだ」 「どれどれ…よし、正解。正しくは、『正の無限大に発散する』だけどなー………」 素早く松山の横にまわり、頬にキスする日向。 「……ッ日向!…何…!?」 キスなんて、慣れている。不意を突かれるのも、慣れている。 …の筈なのに、松山の反応はいつも初々しい。 「…俺の気持ち♪」 トントン、と、プリントの一箇所を人差し指で叩きながら、日向。 「…お前の……って…『正の無限大に発散する』…?」 「そ♪」 松山はしばらく考えていた。が、そのうち、意味が解ったらしく耳まで真っ赤になった。 「……ッ」 そんな松山を、めちゃくちゃ愛しいと思いつつ、耳元で低く囁いてやる。 「…すげぇ、好きだぜ…松山……」 ※ ※ ※ …カチャリ。 部屋のドアが薄く開き、そこから廊下の明かりが細い線となって伸びている。 ドアの隙間から顔を出したのは、反町。 「日向さーん!…数V教えてくださぁーい!」 大声…とまではいかないが、小声でもないその声。それに、裸で日向のベッドに寝ていた松山が反応する。 「……んー……?」 その松山の隣に、同じく裸で寝ていた日向が、上半身だけ起き上がって涼しい顔で返事をした。 「…反町か、何だ?」 「え…あ……ちょっと……すいません…」 2人の仲も、そういう事をしているというのもずっと前から知っているものの、こういう場面に出くわしてしまうと、ちょっとやり辛い。 「いいから、こっち来いって。急ぎだろ?」 躊躇する反町に、おいでおいでと手招きをしながら、日向は言った。 「う……」 更に躊躇。更に一押し。 「来い」 …反町は、プリントを持ってしぶしぶ日向の横まで歩いていった。もちろん、某数学教師お手製のプリントである。 「…で、どこだ?」 「あ…ここの問4なんですけど…極限を求めよってやつ…」 日向の肩の向こうに、松山の幸せそうな寝顔が見えた。と、松山が寝返りを打ち、その額を日向の腰の辺りに、こつり、と、ぶつけた。そんな松山の頭を、一度、二度、優しく撫でている日向を見ながら、反町は言葉に詰まってしまった。 「…関数か…『tanx分のsin2x、xを0に限りなく近づけ、極限値を求める』ってやつでいいんだな?」 問題を一瞥して、日向は反町の方に顔を向けた。 「…これはまず、分子のsin2xが二倍角の公式で崩れるだろ」 「え…と…2sinxcosx…かな」 数Uの記憶がしっかり残っている反町。上出来である。 「そうだ。んで、分母のtanxがsinとcosで書き換えられる」 「…cosx分のsinx」 「そしたら、分母分子にそれぞれcosxをかける」 「……あ!…そっか!…それで、分母と分子に共通に残ってるsinxが消えて、cos二乗x」 「xを0にもっていくと?」 すらすらと、解法を唱えていくのにつられ、反町は回答を導き出した。 「1!1×2で2かぁ…やったぁ!ありがとう日向さん!…あ、と、それから…」 「何だ?」 「松山の事、大事にして下さい。…ずっと、お幸せに♪」 「ああ」 「…じゃ!失礼しました!」 軽いウインクをひとつ。満足、というような顔をして、反町は部屋を出て行った。 …バタン。 「…んー…?」 「悪いな、起こしちまった」 「…ひゅーが…?だれか来てたのか…?」 「反町。数学教えてくれって」 「ああ…高3最初のテストで、赤点やら青点やら取る訳にはいかないだろうよ」 「…や…賭けだろあれは」 「…あ!そっか」 「…やっぱり知らねぇのか…」 「…へ?」 「反町が今度の中間、数Vでお前を抜く、って賭け」 「な、何だよそれ!」 「結構、噂になってるぜ」 「やばいなぁ…反町に負けたら、俺の面子丸潰れだ…」 「あいつ、『極限』のとこかなり頑張ってる…まぁ、あと一週間あるし、明日から俺がまた付きっきりで見てやるよ★」 「…有り難いことだな」 「まぁな。俺に任せろって」 「あんしんあんしん…ん……じゃ、もいっかいねる…ねむい…」 「ん…おやすみ」 「おやすみー…」 ぎゅっとしがみ付いてくる松山の背中を撫でながら、日向も今夜2度目の眠りについた。 一瞬一瞬の極限。 一瞬一瞬の幸せ。 ――――――――――――それは、相手を好きだと感じる時。 2000.10.06.(2002.02.18. 改稿) ひぃぃぃ… もう見るのも恥ずかしいです。でも我ながらよくこじつけてあるな(笑) 松小次でヤってるのを読むのは久しぶりなんで非常に恥ずかしい… ホントに松小次でやる必要はなかったような…(言うな) ⇒戻る
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