tu mia luna,mio sole. 〜僕の月、僕の太陽〜 《COUNTDOWN ZERO》
 





耳を澄ますと、木々の葉ずれの音や、鳥たちのさえずりが聞こえる。
外の音がこんなにはっきり聞こえるなんて、ガオズロックでは珍しい事だ。

レッドも、イエローも、ブラックも。
ホワイトもテトムも出掛けていて、この中には俺一人。


静かだ。


どちらかというと淋しがり屋である俺が、此処に来てから自分だけの時間を持てるようになった。
少しだけ大人になったってのもあるかもしれないけど、やっぱり一番の原因は、アイツとの出会い。

あいつが…ガオシャークがいつも傍にいるから。

ポケットから蒼い宝珠を取り出すと、それは一瞬だけ、返事をするように耀う。
その光は、きらきらと輝くアイツの身体を思い出させて。

何だかとっても逢いたくなった。

宝珠を握り締めたまま、天空島へと強く念じ、精神を集中させる。


     ※    ※    ※


降り立った先は、深い深い森の中。
いつもは、ガオシャークのいる入江のすぐ傍へ照準を合わせてるんだけど、ちょっと見当が狂ったかな。
まぁいいや。時間はたっぷりあるし、散歩がてらゆっくり行こう。




「だぁぁぁ!!イテッ!痛えよ!つーつーくーな――!!」

……って…あの声…

…………。



……イエロー!?


声のした方へ眼をやると、ガオイーグルに髪を啄ばまれてるイエローの姿。
密度の濃い森林に阻まれて、はっきりとは見えないけれど。

やっぱり、『孤高の荒鷲』同士で仲悪いのかなぁ?
…や、違うな。イーグルはイエローに厳しいんだ。決して甘やかさないし。

それに、あの二人、あれで結構分かり合ってるみたいだし。

じゃぁねぇイエロー、無事に帰って来いよな〜。
そう心の中でエールを送り、先へと歩みを進めていく。

『ザシュッ!』って音とか『ぎゃぁぁぁぁ!!』って悲鳴が聞こえたような気がしたけど、考えないことにした。


     ※    ※    ※


ガオライオンが吼えると、天空島の空気も騒ぐ。
パワーアニマル達の長であるガオライオンは、日に何回か、島全体を見渡せる岩に登って、雄叫びをあげる。
その姿はまさに、百獣の王。

でも……


あれ……?


よくよく目を凝らしてみると、岩の上――ガオライオンの隣には、レッドが腰掛けていて。
きっと『この間の傷はどうだ?』とか『最近変わった事ないか?』とか、世間話をしてるんだろう。

俺とシャークも仲いいけど、レッドとガオライオンも相当だよなぁ〜…


     ※    ※    ※


「ツエツエったらひどいのよ!?」

バキッ!!

「あたしの事、『小娘ちゃぁん〜?』だなんて、馬鹿にしてるわ!!」

ゴスッ!!

「ふん!!そっちこそ、年増オバサンの癖に!!」

バキャッ!!


ホワイトの相当キてる声と、鈍い打撃音が交互に聞こえる方を見やる。
と……ホワイトがガオタイガーの前足に蹴りを入れたりパンチをしたり……

…やつあたりか…


ガオタイガーも良く付き合うなぁ…

でも、なんだかあれはあれで楽しそうだ。
タイガーも、面白そうな顔してホワイトの事見てるし、ホワイトはホワイトで、すっごい爽やかな顔してる。


…二人とも…女傑……


     ※    ※    ※


森を抜けて、小高い丘にさしかかる。
と、丘のてっぺんに生えている木の下に、見なれた灰色のジャケット。

「シル…」

と、声をかけようととして気付いた。
シルバー、寝ちゃってる。
出来るだけ足音を立てないように(っていっても、草の上だから足音なんて元々そんなに立てらんないけど)近づくと、

「し――っ」

俺が来た方向。そこからでは木の幹の影になって見えなかった所にテトムが凭れていた。

「さっきまで、ガオディアスに歌を聞かせていたんだけど…休憩時間って言って寝ちゃったのよ〜」

なんて困った顔で言うテトム。でも、幸せそうだ。

「ガオウルフも一緒になって寝ちゃってるのよ、ほら」

彼女が指差した方向には、地面に伏せてすやすやとまどろんでいるガオウルフがいた。
まぁ、この主人にしてこのパワーアニマルありってとこかな。


     ※    ※    ※


広陵とした丘を登りながら、考える。


ガオシャーク…ガオライオン…ガオイーグル…ガオバイソン…ガオタイガー…

ガオウルフ…ガオリゲーター…ガオハンマーヘッド…

ガオエレファント…ガオジュラフ…ガオベア―…ガオポーラー…

ガオライノス…ガオマジロ…ガオディアス…

そして、ガオファルコン…


ここへ来れば、皆に逢える。


だから…


俺達が離れ離れになってしまったら、この場所へ来てみよう。

きっと逢える。逢える筈。

レッド、イエロー、ホワイト、シルバー、テトム…


…そして…ブラック…


今までの人生で、これ程までに好きになった人がいただろうか。


『貴方が死んだら、私も死ぬわ』


そんなのは、ドラマや小説の中だけだと思ってた。


視覚も、聴覚も、嗅覚も、味覚も、触覚も。



五感全部でアイツが好きだ…


     ※    ※    ※




丘を駆け下りて、一気に視界が開ける。
俺の2.0の視力なら、はっきりと見える。

入江にいるガオシャーク、そして…そのガオシャークと、楽しそうに戯れているガオバイソン。

そして…その大きな身体の横に立つ、背の高い人物。

その背中に縫い取られている”IRON BISON”の文字。


「ッそうたろ――!!大好きだぞ――!!」

俺の声と、ガオシャークが俺に気が付き大ジャンプしたのと、どちらが先だっただろうか。


アイツは振り向いて、俺の一番好きな笑顔を向けてくれる。

俺の、一番好きな声で呼んでくれる。


「ッ海――!!」


その腕に飛びこんで、抱き締めて、抱き締められて。

こいつの匂いと、力強い腕に包まれて。

飽きるまでじゃれ合って、そして…


そして…唇を重ねた。


どちらからともなく、舌を絡ませ、互いの蜜を味わって。



…ほら…やっぱり。


―――五感全てで貴方を愛しています―――








                END



2002.02.09.   脱稿

只今、2月9日23時55分です。
明日の朝、ガオは最終回を迎えます。
そんなこんなで記念SS。牛鮫+ALLキャラ。
タイトルは名曲、『Time To Say Goodbye』より。

やっぱり自分、牛鮫好きです。
大好きです。

そして…ガオレンジャー大好きです。

カウントダウンに付き合ってくれた方々、どうも有り難うございました。
 

(キンケイギク 花言葉 『常に貴方を愛します』 『生きなさい』 『上機嫌』)