10月、就職が決まった瞬間、旅行する事を決めていた。
速攻でパスポートを取り、行く場所の選定に入る。目当てはもちろんミュージカル観劇である。好きな演目はロンドン・ウエストエンド産が多い。ブロードウェイにも惹かれるが最初の一人旅でもあるし、まだ安全な方にしておこうと思った。しかし、ここで意外な展開が。
祖母が私が一人旅をするというのを聞いて「わたしも行きたい」と主張。しかも、祖母の娘(私の伯母である)まで「わたしもつれてって」と言いはじめたのだ!
なに?私は一度ロンドンには行ってるから、今回は劇場街から一歩も外に出ない旅のつもりだったのよ?おばあちゃんとおばちゃんついて来るの?観光しなきゃいけなくなるの?でも、おばあちゃん孝行はしなきゃいけないよな?元気なうちに旅行しときたいだろうしなー。
それにしても予想外だ!
・・・とにかく、晩御飯を食べた後は私は観劇にいく、というラインを確保して、この旅行は3人で行くことが決まってしまった。
しかたがない。あとはもう、無事に帰ってこられるように祈るしかなかった。
水戸黄門ツアー(もちろん伯母が助さん、私が格さんである)出発の日。
関西国際空港から英国航空でロンドンへ直行する。機内食が不味い以外はなにごともなし。現地の夕方に無事に着いた。
ホテルはキングスクロスst.駅から歩いて7分のとても便利な所である。スーパーマーケットの場所も確認して地下鉄のワンウィークチケットを買い、部屋に落ち着いた。
で、お風呂に入って今日はゆっくり休むことにしたのだが、ここでアクシデント発生。伯母がお風呂でこけて一歩も動けない状態になった。
様子を見ると、伯母の顔はみるみる青ざめて尋常ではない。救急車を呼ぶかどうしようか迷う。こんな時に限って添乗員のついていないツアーで来ていた。しかし、伯母が旅行保険のエマージェンシーオフィスの事を思い出して、そこに相談する事にする。ここでまた、部屋の電話が使えない。ホテルの交換手に一度繋がる形式だったので、私の英語力では思う所に繋げてもらえなかった。ロビーの公衆電話からダイレクトにかけるしかない。
24時間態勢のオフィスはヨーロッパ地域に一つ。パリである。国際電話。がっちゃんがっちゃん減っていくテレフォンカードの度数を気にしながらも、何とか話をつけてお医者さんをホテルに派遣してもらった。お医者さんが来てくれたら今度は状況と様態について説明しなければいけない。またロビーに走っていって保険オフィスの人に通訳のために部屋に電話をかけてもらうように頼んで、部屋にかけ戻る。
さいわい、注射と薬を処方してもらって何とか落ち着いた。しばらく安静にしていれば、日本に戻るぐらいは自力でできるようになる、という事だったので一安心。
午前中は祖母と一緒に伯母のための湿布を探しにいく。しかし、向こうの薬屋には湿布がない。探し方が悪かったのか、それとも英国人は腰痛に湿布は貼らないのだろうか?しょうがないので三越の店員さんに代わりになりそうな薬の名前を教えてもらう。
「Blues」。ブルーズと発音したらわかってもらえなかった。ブウゥズの方がまだマシみたいだ。RとLの発音なんて!
今日は伯母さんを一人にしておけない、ということで食料を補給したところで二人をホテルに残して私だけ劇場へ行く。
いや、劇場街に来るのは私一人の予定だったので、私は予定に変更なしなのだが。
昼は「レ・ミゼラブル」を観る。この作品は主役クラスはもちろんだが、特にアンサンブルの力量で面白いかどうかが決まる。キャストバランスのとれた、いい舞台だった。それぞれが調和しつつ脇役たちも存在を主張していた。レ・ミズの真骨頂だろう。