つまらない夢
幼稚園の頃はずいぶん夢のある子でした。
絵本が好きでどっぷり世界に浸って楽しむ子で、
中でも好きだったのが「赤い靴」、「ゆきしろちゃんとばらあかちゃん」
で、特に好きだったのが「うさこちゃん」。
うさこちゃんシリーズはいくつか出ていて、家に有ったのはセット販売されていたもので、
厚紙の箱(?)の中に数冊のショートストーリーが入っているもので、
箱のイラストも原色を使っていて可愛らしく、中の絵本たちも全て原色でした。
その数冊の中でも一番すきだったのが「ゆきのうさこちゃん」(確かこんな題名)で
内容はうさこちゃんが雪の降る日に外で寒そうに凍えている鳥さんを見て
可哀想だといって涙を流し、鳥さんが雪に当たらないようにおうちを作ってあげるという
お話。
一見単純そうだけれど、あの無表情なうさこちゃんが純粋に涙を流したのに感動したのか
何なのか分からないけれど、今でもなぜか思い出すと感動できます。
で、月日が流れに流れて、引越したり両親が離婚したりで、家に有ったうさこちゃんの絵本はどこかに
いってしまいました。
中学の時、もう一度みたいと何度も思い、本屋に行くたびに捜したけれど、見当たらず、
「そうだ、自分で探せないのなら彼ができたらこの事を話してプレゼントしてもらおう、」
と、いもしない想像の彼に買ってもらおうと決めこんでいました。
高校在学中の有る日、ふらふら町を歩いていたら、「うさこちゃん」がファンシーショップ
に溢れているのに気づきました。
「えぇ?!どうしてうさこちゃんがこんなにメジャーになっているの??」と驚いて見てみると、
うさこちゃんは「うさこちゃん」とは書いてなく「ミッフィー」という洋モノの名前がついていました。
そのとき始めて「うさこちゃん」は日本生まれではない事を知りました。
なんだか淋しくなって商品の一つでも「うさこちゃん」と表記してはいないかと探しましたが、
どこにも「うさこ」という名前はありませんでした。
それと同時に「あぁ、もうミッフィーと云う名でメジャーになった今は[雪のうさこちゃん]は
買ってもらうどころか二度と見ることもできないんだ。」と悟り哀しくなりました。
と、いうわけで、廃刊になった筈の絵本なので、叶わない夢なのでした。