赤枝戦士団の時代より300年後
 さらに組織化されたフィアナ騎士団が成立します。
 昔の赤枝戦士団が国王に臣従していたのに対し
 このフィアナ騎士団は国王に雇われる職業軍人の集団で
 傭兵団とも言うべき存在でした。
 しかし、フィアナ騎士団は忠義と誠実を重んじる戦士達の集まりで
 国王達から信頼と尊敬を集めていました。
 そのフィアナ騎士団の心意気を物語るのは
 「心に信念、腕に勇猛、口に誠実。」と言う言葉です。

 

 彼らはフィアナ騎士は約束を必ず守り
 さらに入団の際に、個人的な誓約を立てました。
 この誓約には「猪を狩ってはいけない」など
 奇抜な物も多いのですが
 彼らはそれを一つの宗教的儀礼として守り
 その守る精神が彼らをいっそう強い戦士にしました。

 

 また、フィアナ騎士団に入団するためには厳しい試験が行われ
 それが騎士団の精鋭ぶりに磨きをかけていました。
 そして、その試験の内容はと言いますと
 まず、詩歌や武芸に通じているのは当たり前とされ
 その上に、野外活動に必要な身軽さをも要求されました。
 その実例(の一部)としては次の通り。

1.試験者は地面に掘った穴の底に膝をついて足さばきを封じ
  その下半身を埋めた体勢で盾と棒を構え
  その上で9人の騎士が投げてくる槍を防御する。

2.森の中で走り、完全武装の騎士から逃げ切る。
  ただし、髪を結わえている紐が切れたり
  恐怖で手が震えていたりした場合には落第。

3.自分の額の高さの枝を跳び越える。

4.自分の膝の高さまで身を屈めて坂を駆け抜ける。

 これらはあくまでも一部ですが
 野戦にも強いフィアナ騎士団の団員としては
 是非とも欠かせない資質の試験であるのは
 想像してもらえると思います。
 また、彼らフィアナ騎士達の間では乗馬の習慣が盛んになり
 伝統的な武具であった馬車は野外活動に不利なので
 あまり使われなくなりました。

 

 そして、この野戦に徹した戦闘集団は
 団長フィン・マクールの時代に最も勢力を持ちました。
 フィン自身が野外活動のエキスパートであっただけでなく
 騎士団員の選抜制度や訓練法に見るように
 フィアナ騎士団は組織としても統制されていました。
 これは必ずしもフィン一人の功績とは言えないのかも知れませんし
 フィン・マクールについて伝えられているエピソードには
 曹操やカエサルを彷彿とさせる狡猾さが微かに感じられますが
 それでもフィンが優れた運営手腕と武勇を兼ね備えた
 英傑であったのは、ほぼ間違いないでしょう。

 

 それでは、そろそろ、このフィアナ騎士団の代表者
 フィン・マクールの伝説をお話ししましょう。

 


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