このバイトを何度か経験をしているうち、ダンス・ホールの空気が加熱し、膨張し続け、
どっと自分に押し攻めてくるような気配が感じられるようになった。そんな時気が付くと、
私はまるでじっとしていられないかのようで、
目の前の人に合わせてステップを踏み出していたのであった。
これこそ「門前の小僧・・・・」とでも言うべきものであろうか。
このダンス・ホールの中では、人それぞれ目標は違っていたとしても、
学生であった私にとって、見たものは果たして「サラリーマンの放課後」の様子であった。
追記になるが、これまで、色々なテーマでいくつかのエッセイを綴って来た私は、
ロンドンへの出張の折々に機内でこれらエッセイを記すのが、習慣化してしまっていた。
9月の出張は、JAL401の機内で、役所広司、草刈民代、主演、原日出子、竹中直人、
共演の「シャル・ウイ・ダンス?」という日本映画に出っくわす事となった。
ちょうど、このエッセイを書いている最中であったので、大変懐かしく、
また楽しく鑑賞する事が出来た。
人生とは、まったく味な物である。
(1996年9月)
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