針の姿勢

 5年前・・・、このHPを立ち上げるために仕掛けの沈降速度の実験を行った時の話です 。通常ハリスに結んだ針は流れに対して針先を上に向ける「垂直の姿勢(右図)」で水流の中で漂っていましたが 、時々「水平の姿勢」で漂うことがありました。垂直と水平では針にかかる水の抵抗が異なるので、使い分けができれば沈降速度を調整できるはず!と思いながらもそのまま頭の中に放置してい ました。最近ようやく実験を行いましたのでその結果をアップします。

 

1.結果

 判りにくいと思うけど、まずは結果から・・・

(1)流れの中ではハリスに結んだ針の姿勢は一定している。

(2)ハリスのカール(糸癖)の方向性により流れの中での針の姿勢が決まる。

(3)カールの方向性を意識して針を結ぶことにより針の姿勢をコントロールことができ、
   餌の沈降速度を調整することが可能。 

(4)ハリスをしごく(新たなカール状態を形成させる)ことにより針の姿勢をコントロール
   することもできる
 。

 

2.詳細

(1)流れの中の針の姿勢

 ハリスに針を結んで水流の中に入れて針の姿勢を観察する。針を何回も結び直して観察を繰り返すと、針は右図に示しように垂直を向く場合(@、Aあり)、水平(これも右向きと左向きあり)になる場合、いろいろなケースがあ った。もちろん水平と垂直の間の斜めの姿勢のこともある。

 

 しかし、一度結んだ針の姿勢は水流中では安定した姿勢を保つ。例えば水平の姿勢で漂っている場合、針の姿勢を垂直にするためハリスをゆっくりと回転させた時、針は垂直の方向に変わろうとするが、垂直に近づくと、くるっと一回転して、元の水平の姿勢に戻ってしまう。


 針の姿勢は針の上20−30cmのハリスの何らかの状態によって決まるようだ。

 

(2)ハリスのカール(糸癖)と針の姿勢

 ハリスの姿勢を変える何らかの状態(因子)としてハリスのカール(糸癖)の方向性が考えられる。そこで針とハリスのカールの方向性に気を付けながら針を結び、針の姿勢を観察した。私は いつも下図左のように針の曲がりと反対側にカールの方向性がくるように針を結んでいる。この通常の結び方と針の向きを変えた逆の結び方(下図右)で針を結び 、水流中で針の姿勢を観察した。


いつもの結び方  


逆の結び方 慣れていないのでやりづらい。

  いつも以上にカールの方向性に気を遣いながら15回程度結び直して針の姿勢を観察した。結果を下表に示す。通常の結び方の場合、針先を上にした垂直の姿勢 (垂直@)が約6割と多く、残りは水平、垂直Aであった。逆の結び方では、針先を下にした垂直の姿勢(垂直A)が約5割と多かった。

針の姿勢

垂直@ 垂直A 水平(右+左)
通常の結び方 6割 1割 3割
逆の結び方 1割 5割 4割

 

  この結果から水流中の針の姿勢を決定する因子とはハリスのカールの方向性と推測される。針(重いもの)が沈もうとする時、針を沈みやすくさせる方向(右図)にハリスのカールが向く のであろう。現実は「針の姿勢」というより「ハリスの姿勢」と言う方が妥当であ った。

 尚、100%同じ姿勢とならないのは 針を結ぶ時に針とハリスのカールの方向性が微妙にずれるためと考えられる。

  尚、ハリスを引っ張っても、カールは完全には取れないので上の結果に変わりはなかった。

 

 

(3)針の姿勢と沈降速度

 では、垂直と水平で沈降速度にどの程度の差があるか?調べてみたが、当然ながら垂直の方が水平より沈降速度は速かった。わずかな差のようだが、この程度の差があれば釣果に差が出ても不思議でない?

 

針の姿勢 沈降速度(秒/40cm・生データ) 沈降速度(秒/m)
垂直 3.0 9.9
水平 3.8 12.5

    条件:ハリス:フロロカーボン1.2号
       グレ6号
       沈降:扇状、40cm

       用水:水道水 
 

(4)ハリスの姿勢の調整

 ハリスのカールの方向性を考えて針を結ぶことにより針の姿勢を調整できることは判ったが、腕が悪いのか?、思った通りの姿勢になる確率は5〜6割と低い。
 そこで、ハリスにカールを強制的に付けたら?と考え、右図のように棒(*)を使ってハリスの針から30cm程度までを「しごいて」本来とは逆向きのカールを与えてみた。すると、針の姿勢は見事逆向きとなった。この方法で針の姿勢を自由に調整可能 である!。尚、垂直@の姿勢は根掛かりも少なくなるという利点もありそう。

(*)直径2cm程度のステンレス棒で実験したが、竿、コマセひしゃく、バッカンの縁等でカールを付けることが可能。針の姿勢の確認はハリス(針の上50cm以上)を持ってハリスを水の中に入れ、手前にゆっくり引っ張ると判る。

 

注意点

 ・一度与えた新しいカールは1日経っても保持されているが、
  カールを取るためハリスを引っ張ると、元のカールの方向に戻ってしまう。
  大きな魚を掛けたらやり直すことが必要。


 ・力を入れすぎないこと。力を入れすぎるとハリスに傷が入るだろうし、
  ねじれ(キンク、パーマ)が生じる。力加減は自分で確かめて!

 

3.最後に
 表現力が乏しく判りにくかったと思いますが、暇なら読み直してください。針の姿勢については既に知られている事かもしれませんが、私としては聞いたことないオリジナルのアイデアのつもりです。ハリスをしごいて新たなカールを付けて、針の姿勢が変化した時は「やった!」という感じでした。
 針の姿勢はハリスのカールの方向性を使うと不都合なく説明できますが、まだ完全には証明できていません。「カールの方向性ではなく○○が原因だ」ということがあるかも?
さらに針を結んだ時、針の姿勢にばらつきが出ることも不満点です。結び方がへたなのか?、姿勢が安定する別の結び方があるのか? よく判らないところです。

  針の姿勢についての感想、情報がありましたらお気軽にメールをください。