くわせダンゴの科学  

 クロゲンさんからチヌパワーくわせダンゴを用いた練り餌釣りを教えてもらいました。くわせダンゴに寒梅粉を少量(雪がかぶる程度)加えるダンゴです。ダンゴの中に付け餌を包むのではなく、ダンゴ自身を食わせます。
水中で、ダンゴが徐々にバラケるため、魚の食いを誘います。
 尚、食いが悪い時、またはダンゴに粘りを持たせたい時は「チヌにこれだ」を加えます。

1.くわせダンゴ釣法の特徴(クロゲンさん談)

 くわせダンゴは餌取りが多く、オキアミでは餌が持たないような状況で真価を発揮します。コマセを撒くと餌取りが集まりますが、一瞬餌取りがパッと散ることがあります。これは下から良型が浮き上がってきた証です。餌取りが集まり、一瞬散るまでのほんの数秒間、付け餌が持てば良型の口に餌が届くはずです。オキアミではアタリも出ないまま瞬時になくなってしまうような場合でも、くわせダンゴでは、数秒〜10数秒持ち、さらにほぼ確実にウキにアタリが出ますダンゴ餌の場合、遅合わせが基本です。
 また、くわせダンゴは食い渋りの時にも効果があるそうです。

2.実験

 くわせダンゴ釣法はダンゴのバラケ具合の調整がポイントなのでバラケるために要する時間について調べた。

2−1 実験方法

(1)水分が飛ばないようにチャック付きビニール袋の中にダンゴの粉、水
  (水道水)を所定量入れ、混ぜてダンゴにする。

(2)糸の先端に付けたガン玉(6G)にダンゴ約0.7g(小さ目のダンゴ)
   を付ける。

(3)ダンゴを水(水道水)に漬け、ガン玉から完全に餌がなくなる時間を測定した。
   尚、ダンゴはパラパラとほぐれ、最後にポロっとガン玉から外れる。
   外れる時の大きさはまちまちなので、実験精度は余り良くない。

2−2 結果

 くわせダンゴの水分率、寒梅粉の使用比率を変えてバラケ時間を測定した
 (表1、図1参照)。

(1)ダンゴの水分率
 くわせダンゴのみ(寒梅粉なし)の場合、ダンゴとして使用可能な水分率は10〜60%であった。また水分率30%前後が最もバラケが遅い。
水分率10%以下では、ばらけてダンゴに出来ず、水分率60%以上では針に付けても投入のショックで落ちてしまうと思われる。

*水分率の目安について
(a)クロゲンさんから習った処方を自分なりに再現してみると、水分率
   10〜15%程度となった(バラケ重視)。これはくわせダンゴ1袋
  (500g)に対して水50cc〜90ccである。

(b)雑誌に載っていた遠矢さんの推奨処方(くわせダンゴ1袋にコーヒー
   ショート缶1杯:200cc)は水分率28%となり、最もバラケ難
   い配合に近い。

(c)くわせダンゴの袋の裏に書いてあるくわせダンゴ/水=5/1(容積
   比)は水分率40%となり、やや柔らか目のダンゴである。

(2)寒梅粉の効果
 クロゲンさんから教えてもらった寒梅粉の量(雪がかぶる程度)を自分なりに再現してみると、くわせダンゴ/寒梅粉=93/7(重量比)となった(どうも寒梅粉が多いみたい)。
 くわせダンゴに寒梅粉を加えることにより、バラケが抑えられることが判った。ただし、くわせダンゴだけでも水分率の調整によりバラケはコントロールできるという結果でもある(図参照)。

 この結果についてクロゲンさんより、「寒梅粉入れないともろい感じがするとのコメントを頂いた。そこで水分率25%(最もバラケ難い水分率)の場合にダンゴを流水中でバラケさせたところ、寒梅粉(93/7) を加えたダンゴの方がバラケ難かった(正確な時間は測っていないが、2倍位違った)。 
 餌取りが非常に多いことを想定すると、寒梅粉は使用した方が良いと思われる。

表1 ダンゴのバラケ時間(水分率、寒梅粉使用比率)

くわせダンゴ/寒梅粉

水分率

ダンゴの重さ

バラケ時間

コメント

(g/g)

(%)

(g)

(秒)

  

100/0

8

0.67

16

低水分率の限界

 

12

0.68

34

 

 

20

0.83

125

 

 

22

0.64

>720

 

 

33

0.70

>720

 

 

50

0.72

312

 

 

58

0.71

77

高水分率の限界

 

66

0.80

23

柔らかすぎ

93/7

11

0.67

46

クロゲンさん処方

  

15

0.73

570

 

  

21

0.75

690

 

81/19

9

0.72

175

ダンゴが白っぽい

 

14

0.80

>720

 

 

図1

3.用水(塩)の影響について

 クロゲンさんから、寒梅粉の粘りは海水では弱くなると聞きました。上記の実験はダンゴを練る水(練り用水)及びダンゴを漬ける水(バラケ用水)共、水道水を使っての実験であったため、水道水と3%食塩水の比較をした。バラケ時間の測定は振れがあるため、精度を高めるため3回測定とした
(表2、図2参照)。

(1)練り用水:水道水と食塩水で差が見られた。食塩水を使って作った
   ダンゴはややバラケ易い傾向であった。餌取りが非常に多く、くわせ
   ダンゴを硬く練る状況を想定すると、水道水を持参する方が良い?

(2)バラケ用水:水道水と食塩水で差は認められなかった。バラケ用水の
   影響の方が大きいと思っていたので意外な結果であった。

表2 バラケ時間(用水の影響)

くわせダンゴ/寒梅粉

練り用水

バラケ用水

ダンゴの重さ

バラケ時間

(g/g)

 

 

(g)

(秒)

93/7

水道水

食塩水

0.73

9.7

 

 

 

0.68

11.9

 

 

 

0.73

15.5

93/7

水道水

水道水

0.66

7.9

 

 

 

0.72

15.6

 

 

 

0.73

7.6

93/7

食塩水

食塩水

0.69

8.7

 

 

 

0.71

6.9

 

 

 

0.64

6.4

100/0

水道水

食塩水

0.71

5.4

 

 

 

0.74

8.8

 

 

 

0.66

7.7

100/0

水道水

水道水

0.78

5.9

 

 

 

0.70

5.8

 

 

 

0.71

7.8

 

図2