ラインの引張り強さ 

 自分が持っているラインの引張り強 さを引張り試験機を使って測定してみました。
 尚、ハリスには引張り強度の他に根ズレの強さ、結節強度も求められます。引張り強さだけの結果であることを踏まえて参考記録として結果をご覧ください。



 
私はラインの強度を測定しただけですが、私のデータを使って気侭な釣り人のSIGEさんがデータの解析をしてくれました。
私もそうだったのですが、ハリスにばかり目が奪われていました。しかしSIGEさんの解析を読むと道糸の重要性が再認識できます。この解析は凄いの一言です。SHIGEさん、ありがとうございます。 

1.測定したライン

 今回の測定に使用したラインです。
 

シーガー
グランドマックス
(クレハ)
シーガーフォース
(クレハ)
スペクトロン
ハイパー
(ダイワ)
POWER
(上州屋でもらったもの)
フロートラインEX
(ゴーセン)
フロロカーボン フロロカーボン ナイロン 多分ナイロン ナイロン

 

 

2.測定方法

引張り試験機を用いて測定しました。一定速度でラインを引っ張り、ラインの物性データを測定します。得られるデータは以下の通りです。

 
(1)最大点荷重:ラインが切れる時の荷重
   
この重さ(kg)の力が掛かるとラインが切れるということです。

 (2)最大点伸び:ラインが切れるまでの伸び。
 
  伸びの測定結果(生データ、mm表示)はラインの伸びとワイヤーサポートの伸びの
     合計なので、ワイヤーサポート分の補正を行い、更に%表示に改めた。
    ・シーガーフォース1.2号、15cmをメジャーにあてながら手で引張って切り、
      ラインの伸びを実測すると24mm(*)であった。
    ・引張試験機でのシ−ガーフォース1.2号の伸びの生データは58.5mmなので、
      58.5−24=34.5mmがワイヤーサポートの伸びに相当する。
       従って、ラインの伸び(%)=(生データ−34.5)/150×100 となります。

    (*)正確な値とは言えず、さらに生データに占めるワイヤーサポートの伸びの割合も
     大きいことより、ラインの伸びの絶対値に関しては誤差がある可能性がある。
    尚、伸びの相対比較に関する限り問題はない。

 (3)最大点エネルギー
       :ラインを切るために要するエネルギー(仕事量)

  
最大点荷重より最大点エネルギー(仕事量)の方が重要と考えられるが、
     測定精度がいまいちだった。
  (シーガフォースの1号は1.2号より強いという結果が出たりした。)

 

測定条件
 ・ラインの長さ:15cm
   短い気はしますが、がこれが限度です。
 ・
引張り速度 :10cm/分
   これは引っ張り試験機でのMAXスピードです。
   本当はもっと速いスピードで行いたかったのですが・・・

  ・ラインの結び方:??結び(*)

(*)私はいつも右の図のような結び方をしています。結び方の名前は知りません(誰か教えて!)。
 この結び方は実釣では問題になったことはないのですが、今回引っ張り試験機で引っ張ると、かなりの確率でラインが解けてしまいました。そのため、瞬間接着剤で結び目を固定して測定しました。
 北陸の西野さんから、あの鵜沢さんが「「フロロカーボンハリスの場合,結び目にアロンアルファをつけると結束強度が上がる。ナイロンは化学変化を起こしダメ」と言っていたとのメール情報をもらいました。今回の実験で瞬間接着剤を結び目に着けてもナイロン(スペクトロンハイパー)もフロロカーボン(シーガー)もハリスは結び目ではなくラインが切れました。しかし、道糸(フロートラインEX)のみは結び目から切れました。同じナイロンでもハリスと道糸は違うのかな?道糸についても瞬間接着剤を付けなければ切れるより弱い力で解けてしまうので、瞬間接着剤は使用した方が好ましいという結果でした。
 尚、西野さんの話は気になっていたので、今年の釣り博でアロンアルファの人に聞いてみたのですが、「接着剤を付け過ぎない限り、ラインのラインの材質により強度が低下することはない」と言っていました。

 

3.結果

3−1.各種ラインの比較

 各ラインは基本的に2回測定とした(1点測定のものも含まれる)。
測定結果のまとめ(平均値)を表1、および図に示す。尚、生データはこちらへ。

結果
・グランドマックス、シーガーフォースの1〜2号に限定すると、ラインの強度は表示号数にほぼ比例する。
 
ハリスを1号から2号に変えると強度は2倍になるということです。

・グランドマックスはシーガーフォースより約10%強度が高いが、伸びは15%小さかった。
 
クレハのカタログ通り、強度のグランドマックス、しなやかさのシーガーフォースということでしょう。

・スペクトロンハイパー(ナイロン)はグランドマックス(フロロカーボン)より2割強度が高く、伸びも大きかった。
 ナイロンはフロロカーボンより強いというのは本当だった。

・ラインの切れ方に以下の特徴が見られた。
  シーガー:ほとんどの場合、結び目から1〜2cm以内のところが切れる。下側が切れる方が多かった。
  ナイロンハリス(スペクトロン、POWER):ほぼ真ん中から切れることが多かった。
  道糸(フロートラインEX):全て結び目で切れた。結節強度が弱い(瞬間接着剤の影響した可能性あり)。

・道糸(フロートラインEX)はハリスと比較して強度が大幅に劣った。
 
フロートラインEXの結節強度が弱いので強度が低く出たと考えられる。ライン自身の強度はもっと高いと考えられる。
 結び方の変更でもっと強く出来るはず!?

・ラインの号数が大きくなると伸びはやや大きくなる傾向にある。
・最も細いPOWERは伸びが極端に小さかった。ラインが細くなると急に伸びなくなる?
 
ラインが太くなると伸びのキャパシティが大きくなるようだ。ハリスが太くなると強度向上への相乗効果も出てきそう。

     表1 各種ラインの引張り試験結果

ライン  号数 最大点荷重 最大点エネルギー 最大点伸び
(kgf) (N・mm) (%)
シーガー
グランドマックス
1.2 2.46 74.1 13.6
1.5 3.10 98.0 14.1
1.7 3.48 119.1 14.6
2 4.27 130.0 15.1
シーガーフォース 1 1.92 73.4 14.5
1.2 2.20 70.1 16.0
2 3.85 114.8 17.9
スペクトロン
ハイパー
1.5 3.80 123.1 23.2
       
POWER 0.6 1.10 36.2 3.9
0.8 1.79 66.1 14.7

フロートライン
EX(*) 

2 2.24 73.2 15.4
3 4.61 144.6 18.0

(*)フロートラインEXのみ結び目で切れたため、強度が低く出たと考えられる。

     

3−2.フロロカーボンとナイロンの比較

 以下の3条件でフロロカーボン(シーガーグランドマックス1.5号)とナイロン(スペクトロンハイパー1.5号)の比較を行った。結果を表2、図に示す。
(1)未処理(そのまま)
(2)食塩水への浸漬(4時間)
  ハリスを3%食塩水に4時間浸漬してから引張り強度を測定した。
(3)結び目(コブ)
  ハリス(15cm)の中央部に結び目(コブ)を1個付けて引張り強度を測定した。

結果
・スペクトロンハイパー(ナイロン)はシーガーグランドマックス(フロロカーボン)より約2割強度が高く、
 伸びも大きかった(3−1の結果)。
 ナイロンはフロロカーボンより強いというのは本当だった。驚きです。 

・4時間食塩水に浸漬すると、スペクトロンハイパー、グランドマックスは共に約20%強度が低下する。
 伸びについてはグランドマックスが約20%伸びが小さくなるのに対して、スペクトロンハイパーはほとんど
 変わらなかった。
 
フロロカーボンは吸水度ゼロと言うことだったので浸漬による強度低下はないと思っていましたが、ナイロンと変わりませんでした。

・結び目(コブ)があると、グランドマックスは1〜2割程、強度、伸びが低下した。
 一方、スペクトロンハイパーは強度で4〜5割と大幅な低下が見られ、伸びも約1/4になった。
 
コブが出来たときはすぐにハリスを交換しましょう(特にナイロンは注意)!
 ナイロンハリスは根ズレに弱いと言われています。根ズレを想定した実験もやりたいのですが、うまいやり方が思い浮かびません。
 コブを付けた実験でナイロンとフロロカーボンの強度の順位が逆転したことより、コブの実験により根ズレ時の強度を推測できる可能性があります(単なる結節強度かもしれませんが)。

  表2 フロロカーボンとナイロンの比較

  

 

未処理(そのまま) 3%食塩水に4時間浸漬 結び目(コブ)
荷重(kgf) Energy(N・mm) 伸び(%) 荷重(kgf) Energy(N・mm) 伸び(%) 荷重(kgf) Energy(N・mm) 伸び(%)
Gマックス1.5号 3.10 98.0 14.1 2.71 71.7 11.0 2.78 81.2 11.5
処理 / 未処理 100 100 100 87.5 73.2 78.0 89.7 82.9 81.6
Sハイパー1.5号 3.80 123.1 23.2 3.46 83.3 22.6 2.37 62.9 5.5
処理 / 未処理 100 100 100 91.0 67.6 97.4 62.5 51.1 23.7
GM/SH比 81.7 79.6 60.8 78.5 86.1 48.7 117.3 129.1 209.1

    処理/未処理:水浸漬、結び目の場合の強度比(対未処理)
GM/SH比:グランドマックスとスペクトロンハイパーの強度比

   

4.最後に

 実験を行って、ナイロンハリスの強さと結び目を付けた時の弱さ、この極端さに一番びっくりしました。道糸の弱さも驚きでした(ライン自身の強さはもう少し強いはず)。道糸とハリス、同じナイロンでも何が違うのかな?

 今後は各種ハリスの強度を測定したいと思っていますが、その時はコブの有無で比較したいと思っています