ラインの引っ張り強さ測定 ラインの結び方


 ラインの結び方による引張り強さの違いはどこから来るのか?ヒントとなりそうな記載がフカセジャパンのHPにあ った。ここには
糸やロープの強度を低下させないためには、できるだけ「切る方向」の力がかからないようにすればよい。サルカン(ヨリモドシ)の輪などのリング状のものに固定する場合、糸をリングに2回以上通して補強したほうがよい。 糸と糸の止め方は、すっぽ抜けさえなければ、糸の強度にはあまり関係しない。(適当に要約)と記載されている。確かにスイベルとラインとの接触部分はラインが引っ張られる方向と一致しておりライン の強さに大きく影響しそう。でもラインとラインの絡み合い(これが本来の結びの違い)もある程度は引っ張り強さに影響すると思う。

 まず、スイベルにラインを1回通すのと2回でどの程度違うのか?3回通せばどうか? について調べてみた。結び方はクリンチノットタイプでスイベルに通す回数だけ変えて引っ張り強度を測定した。さらに瞬間接着剤の効果についても検討した。 

ちなみに私はずっと右図のような結び方(ダブルクリンチノットもどき:スイベル2回通し)を使っている。実釣時にはこの結び方が弱いと感じたことはないが、ラインの 引張り強さを測定するためゆっくりとラインを引っ張るとズルズルと解けてしまうことがあった。そこで瞬間接着剤で補強して引張り強さを測定していた。

 

 

ラインの引張り強さと伸びの測定結果を左図に示す。 実際のデータも添付した。ラインは100円ショップで買った1.5号のナイロンハリスを使用した。引張り強さが弱いので結びの差も出やすいと考えてこれを選んだ。

通す回数を1,2,3回(図では1,2,3重)と増やすと引張り強さが高くなり3回通しが一番良いとの結果だった。さらに瞬間接着剤もある程度効果があることが判った。

しかし、各測定条件の最大値(赤字)に注目して欲しい。引張り強さが弱い1回通しでも最大値は2.5kgfであり、2、3回通しと遜色ないことが判る。1回通しは絶対強度が弱いのではなく、安定し た強度が得られないだけのようだ。 結び方が悪いのか?それとも解けているのか?のどちらかだろう。尚、通しの回数によってラインが切れる位置も変わった。1、2回通しの場合、ほとんどが下のスイベルの結び目で切れたが、3回通し、接着を使用した2回通しはハリスの中央、あるいは上のスイベルの結び目付近で切れた。

これらの結果より、このラインの引張り強さ2.5−2.6kgfが直線引張り強さ(ライン本来の強度)に近い値となっていると思われる。

 

測定データの詳細は以下の通り。赤字は各結び方の最大値を示す。

回とあるのは1回目が新品、2,3,4回・・・は切れたラインを結び直して測定したもので、回が進むとライン長さも短くなっている。ラインの劣化を 調べるためにこの方法を取っている。

結び方 ライン長 切断箇所 強さ 伸び
    (cm)   (kgf) (%)
1重 1 24.3 1.74 21.5
1重 2 22.3 1.41 12.9
1重 3 16.2 2.47 36.2
1重 1 26.8 2.20 22.4
1重 2 23.0 2.20 15.7
1重 3 20.7 2.02 20.6
1重 1 16.6 1.53 17.1
1重 2 26.6 1.69 18.1
1重 3 24.3 1.89 17.0
1重 4 19.3 1.95 19.7
1重 接着 1 23.0 2.26 19.9
1重 接着 2 19.5 2.50 28.7
1重 接着 3 17.5 1.96 20.5
1重 接着 4 13.9 1.94 23.2
1重 接着 1 30.9 2.58 28.9
1重 接着 2 26.4 1.87 21.1
1重 接着 3 21.1 中央 2.69 25.7
2重 1 30.3 2.35 26.4
2重 2 26.5 2.25 15.1
2重 3 20.4 1.90 15.7
2重 4 15.0 2.60 18.0
2重 1 23.2 2.14 19.5
2重 2 18.1 1.85 17.7
2重 3 12.6 1.92 16.3
2重 1 35.0 2.15 19.1
2重 2 28.8 2.51 18.0
2重 接着 1 29.3 中央 2.46 29.3
2重 接着 2 13.1 中央 2.58 27.0
2重 接着 1 27.2 2.45 38.6
2重 接着 2 24.7 2.08 22.8
2重 接着 3 18.2 2.34 25.9
3重 1 22.7 中央 2.60 33.0
3重 2 11.7 2.26 25.5
3重 1 36.0 中央 2.49 27.8
3重 2 24.0 中央 2.63 38.5
3重 3 11.1 2.32 29.4
 

結論:予想上に明確に差が出た実験だった。
   今後、私は3回通し(トリプルクリンチノット?)とすることにします!