ラインの引張り強さ測定

 〜フロロカーボンとナイロンの比較〜

 手持ちのフロロカーボン16種類、ナイロン14種類についてライン引張り強さを測定しました。データの数が増えたのでフロロカーボンとナイロンの相違点が明確になってきました。

1.測定条件、計算条件

 測定条件、計算条件は以下の通り。

(1)直線引張り強さ
 両端にスイベルを付けたラインを引っ張り、ラインが切れた時の強さと伸びを測定。一本のラインが切れたら結び直して再測定を2-3回繰り返す(伸びが掛かった後の耐久性を調べるため)。そのため、1,2,3回目と繰り返す 度にラインは少しずつ短くなる(例35→30→25cm)。これを基本的に3セット(計9回測定)行い、データの振れが大きいと追加実験を行う。直線 引張り強さは測定値中、上位5点の平均値を使用。伸びも引張り強さが良かったデータの平均値を使用。

(2)根擦れ引張り強さ
 根擦れを想定するために、ラインを
ヤスリ(ヤマグチ、丸ヤスリ中目200mm)に巻き付けて 引張り強さ、伸びを測定した。直線引張り強さを測り終わった短いライン(5−20cm)で測定しているので伸びの値は誤差が大きい目。引張り強さ、伸びの値は全測定値の単純平均値。

(3)引張り強さ/断面積
 ラインの太さにより引張り強さが違うので、ラインの真の実力を見るため断面積あたりの引張り強さを算出した。ラインの太さの影響を無視して引張り強さを比較できるはず(本当?)。

(4)保持率(根擦れ/直線)
 根擦れ時、直線引っ張りに比べ、どの程度引張り強さ、伸びが維持されるかを計算したもの。
 引張り強さ(%)=根擦れ引張り強さ/直線引張り強さ×100 

(5)保持率(2回目以降/1回目)
 
伸びが掛かった後の耐久性を調べるため1回目の測定値と2回目以降(一度以上切れるまで力が掛かったライン)の測定値の比。1回目、2回目以降のデータ計算には全データを使用しているため、直線 引張り強さ(伸び)データ(上位5点)との整合性が異なる場合あり。

(6)直径
 60cmのラインを5cm間隔で直径を測定し、その単純平均値を採用。さらに直径のばらつき度を算出した。ばらつき度の数値が小さい方が均質なラインと言える。断面積は直径(平均値)からの計算値。過斤率はライン直径の公称値よりどの 程度太いかを示す。

2.実測データ

測定したデータを表に示す。

*根擦れ時の伸びの計算に間違いがありました。表のデータ(灰色部分)より伸びはやや小さくなります。
 そのうちデータも訂正します。

   (1)フロロカーボン

ライン

号数 直線引張り強さ 根擦れ引張り強さ 引張り強さ/断面積(kgf/mm2) 保持率(根擦れ/直線) 保持率(2回目以降/1回目) 直径
    強さ(kgf) 伸び(%) 強さ(kgf) 伸び(%) 直線 根擦れ 強さ(%) 伸び(%) 強さ(%) 伸び(%) (mm) 断面積 過斤率(%) ばらつき度
A 1 2.22 21.8 1.60 15.1 87.4 62.9 72 69 93 94 0.180 0.025 8.8 0.4
B 1.2 2.11 22.6 1.51 22.9 74.5 53.1 71 101 110 94 0.190 0.028 2.6 0.6
C 1.2 2.15 24.1 1.44 20.2 72.0 48.1 67 84 103 80 0.195 0.030 5.2 0.6
D 1.2 2.17 20.2 1.43 17.1 76.4 50.6 66 85 105 84 0.190 0.028 2.7 0.6
E 1.2 2.19 22.0 1.52 19.5 72.0 49.8 69 89 104 87 0.197 0.030 6.5 1.6
F 1.25 2.28 18.6 1.78 19.3 71.8 56.2 78 104 99 97 0.201 0.032 8.6 4.6
G 1.2 2.34 21.7 1.51 16.9 75.3 48.5 64 78 100 103 0.199 0.031 7.4 0.5
H 1.5 2.62 22.2 1.79 22.5 69.0 47.1 68 101 105 82 0.220 0.038 7.2 0.3
I 1.5 2.73 20.6 1.79 20.6 74.4 48.9 66 100 108 92 0.216 0.037 5.2 0.3
J 1.5 2.88 20.8 2.06 23.2 79.4 56.7 71 111 95 96 0.215 0.036 4.7 0.3
K 1.5 2.88 24.9 2.00 19.8 75.2 52.2 69 80 102 84 0.221 0.038 7.6 0.4
L 1.5 2.94 23.1 1.72 19.3 77.4 45.2 58 83 99 88 0.220 0.038 7.1 0.9
M 1.5 3.15 23.1 1.79 15.0 82.8 47.2 57 65 91 89 0.220 0.038 7.5 0.3
N 1.5 3.26 23.2 2.13 18.2 78.7 51.5 65 78 89 83 0.230 0.041 12.0 0.7
O 1.7 3.03 20.7 2.14 19.3 81.2 57.4 71 93 84 80 0.218 0.037 4.8 0.2
P 1.75 3.16 20.7 2.20 22.1 72.8 50.8 70 107 108 81 0.235 0.043 7.9 1.1

   (2)ナイロン

ライン

号数 直線引張り強さ 根擦れ引張り強さ 引張り強さ/断面積(kgf/mm2) 保持率(根擦れ/直線) 保持率(2回目以降/1回目) 直径
    強さ(kgf) 伸び(%) 強さ(kgf) 伸び(%) 直線 根擦れ 強さ(%) 伸び(%) 強さ(%) 伸び(%) (mm) 断面積 過斤率(%) ばらつき度
a 1 2.37 25.5 1.43 22.4 94.1 56.9 60 88 102 95 0.179 0.025 8.6 0.2
b 1.5 2.43 26.4 1.41 16.1 66.4 38.4 58 61 90 68 0.216 0.037 5.4 0.6
c 1.5 2.52 24.3 1.53 23.0 70.0 42.4 61 94 97 95 0.214 0.036 7.0 0.7
d 1.5 3.43 26.7 1.92 23.0 89.4 50.1 56 86 104 108 0.221 0.038 9.2 0.3
e 1.5 3.44 24.2 1.92 18.7 88.8 49.7 56 78 100 103 0.222 0.039 8.2 0.4
f 1.5 3.55 32.1 1.79 24.9 93.5 47.1 50 77 99 105 0.220 0.038 7.3 0.3
g 1.75 2.80 23.2 2.16 25.4 68.6 53.0 77 110 110 101 0.228 0.041 4.6 0.3
h 1.75 3.34 29.1 1.61 31.2 83.2 40.0 48 107 98 95 0.226 0.040 3.6 1.6
i 2 3.21 25.3 2.13 26.9 66.0 43.8 66 106 78 86 0.249 0.049 5.9 0.5
j 2 3.81 31.0 2.28 29.3 79.6 47.5 60 95 109 87 0.247 0.048 5.3 0.4
k 2 3.82 31.2 1.65 22.8 83.0 35.9 43 73 103 80 0.242 0.046 2.9 0.4
l 2 4.07 30.2 2.22 30.6 85.6 46.7 55 101 106 91 0.246 0.048 4.8 1.4
m 2 4.10 25.6 2.00 21.8 92.2 45.0 49 85 108 94 0.238 0.044 1.3 0.2
n 2.5 4.79 34.9 2.62 26.7 76.7 41.9 55 77 102 92 0.282 0.062 8.6 0.2

 

ラインの直径と引っ張り強さの関係は以下の通り。
フロロカーボンは相関性が高いことが判る。ナイロンはやや振れているがこれは比重が違うライン(中空になっているので弱いとのこと)も含まれているためか?

    

 

3.フロロカーボン、ナイロンハリスの相違点

 フロロカーボン、ナイロンハリスの相違点をグラフから眺めてみた。尚、測定したナイロンラインはフロロカーボンより号数が大きいものが多いことをふまえて見てください。

 

(1)直線と根擦れの引張り強さ

 右上の1点(2.5号)を除けば、ナイロンのデータ群はフロロカーボンの真上に位置している。ナイロンは直線の引張り強さは強いが、根擦れ の引張り強さは変わらないことを示す。測定したラインはナイロンの方がやや太めが多いことに注意。

 

 

 


 

直線と根擦れ の断面積あたりの引張り強さの相関を示す。これでラインの太さの影響は無視できるはず。

 ばらつきはあるもの、ナイロンのデータ群はフロロカーボンの左上に位置している。これは同じ太さなら直線引張り強さはフロロカーボンよりナイロンが強いが、根擦れの引張り強さはフロロカーボンが強いことを示す。


 

 

 

 

(2)ラインの伸び

 ナイロンのデータ群はフロロカーボンの右上に位置しており、直線引っ張り、根擦れ引っ張り、いずれの場合でもナイロンの方がラインが伸びることを示す。

*根擦れ時の伸びの計算に間違いがありました。図のデータより伸びはやや小さくなります。尚、ナイロンとフロロCの位置づけは変わりません。

そのうちデータも訂正します。


 

 

(3)引張り強さ と伸び

 直線の引っ張り強さと伸びの相関を示したもの。ナイロンのデータ群はフロロカーボンの右上に位置しており、ナイロンの伸びやすい性質が引っ張り強さに寄与していると考えられる。

 





 

 

 根擦れ引っ張りの場合、ナイロンのデータ群はフロロカーボンのほぼ右に位置している。ナイロンとフロロカーボンの伸びの位置づけは変わらないがナイロンの方が根擦れによる引っ張り強さの低下が大きいことを示す。

 

 

4.感想

 1銘柄のラインについて一連の測定を行うには30分程度要するので頑張って測定しました。皆さんは「最強のラインは何か?」が一番知りたいでしょうが、銘柄を非公開としますのでそれは勘弁してください。

 価格が高く、高強度を謳っている銘柄(フロロカーボンA及びM)は断面積あたりの引っ張り強さが最も優れ、さすが○○○!と思わせられました。しかし、廉価品(フロロカーボンN)がフロロカーボンの1.5号ラインの中では最強でした。優れる理由はラインが太いこと。1.5号なのに2号の公称値に近い直径でした。このメーカーのラインは太めが多いのが特徴です。

 引っ張り強さを測定すること約400回・・・ついにバネ秤りが破損しました。
5kgに加え、10kgの秤りも再購入しましたが、衝撃対策の見直しが必要です。

 これからもデータを蓄積していく予定です。さらにひっぱり強さに加えてしなやかさ(柔らかさ)の測定もやってみたいと思います。方法の確立から必要ですが・・・

 私と一緒に釣行する際はラインのご提供をお願いします。1ヒロ程度でOKです。ご提供していただいた方には全データをお知らせします。