● 海中からの6つの証言 

1996年6月号 「チヌ倶楽部」からの抜粋.
水中カメラマンがチヌファンの疑問に答えるべく,海中に潜って検証したものです.
内容にほぼ忠実に記述しました.

Q1 チヌはいつも底を泳ぐのか?
底を狙うというのはチヌ釣りのセオリーみたいなものですが,チヌを水中で見かけるときは,たいていは底から50cmから1mほどの層を泳いでいます.ただし,これは春から秋に潜水した場合の例です.活性の低いシーズンには違うかもしれません.

Q2 チヌは岩の隙間や穴に隠れないのですか?
メジナは追いかけると,岩の間や穴に逃げ込んでしまいます.しかし,チヌは追いかけるとそのまま泳いで消え去って行きます.根などにかくれることはしません.
魚を掛けてのやり取りに関しても,根に入るようなことはありませんでした.
ミゾや藻の間の,比較的開けたところでじっとしているチヌをしばしば見かけます. ただし,昼間しかもぐっていないので,ひょっとしたら夜間に逃げる巣穴のようなものがあるかもしれません. ただ,テトラのように,自然にあるものと違う人工的なものは例外で,隠れ家と考えていいと思います.

Q3 チヌは溝伝いに移動するのですか?
チヌ釣りのポイント解説で,よく磯と磯の間のミゾでつれるといわれてますが,今までの度重なる潜水でも,よく溝伝いに泳いでいるのを目撃してます.チヌにとっては,安全に行動しやすいし,身を守るよりどころとなっています.藻と藻の間もミゾと考えてよいでしょう. よく見かけます.

Q4 チヌは浮くというのはほんとうですか?
条件がよいと浅いタナまで浮くといわれますが,これはほんとうです.濁りが回ったときや荒れているときなど,格段にチヌの活性が高まっていると浮くようです. 磯際にコマセを打って様子をみると,かなり濁りが入っていた条件でしたが,磯際に餌取りが集まり,その沖の方で,水面下1.5mぐらいのところまで浮いてきました.

Q5 チヌはコマセの筋の外にいるといわれますが?
コマセを撒くとまず小魚が群がりますが,チヌはすぐに寄ってきませ ん.マキエを続けることによって,どこからともなく姿を現わすのがチヌという魚です.マキエを食べたいはずなのに,磯近くに蒔かれるマキエにはなかなか寄ってきません.現れては消え,また現れては消えを繰り返します.かなり時間がたってから,やおら餌を食べはじめますが,餌取りをすり抜けて,流れ落ちてくるマキエを廻りを警戒しながら底の方で食べています.つまり,餌取り軍団のずっと潮下の底の方で広い食いしています.これがもっともよく見かけるチヌの就餌行動です.

Q6 チヌはオキアミをどうやって食べているのですか?
水面から落ちてきたオキアミをチヌがどうやって食べているかを観察したことがあります.オキアミが着底する間際か,底をふわふわしているオキアミに近づいて,一気に吸い込みます.その吸い込み方はものすごい早わざで,チヌの15cmほど前にあったオキアミが一瞬にして消えてしまうほどなのです.

 

SIGEからのコメント:

●Q4とQ5の証言から,たいていの場合はコマセの潮下の底で就餌しており,釣り場の条件やチヌの活性よっては浮くこともあると考えるべきでしょう.また,ヘチや藻場や入り組んだ磯場などでチヌが浮く,というのは適切な表現ではないと思われます.

●また,どんな場合でもチヌは コマセの中に突っ込んでくるようなことはほとんどないと考えるべきでしょう.これは餌をすぐにとられるようなところへ,いくらサシエを流してもそこにはチヌはいないことを意味しています. チヌにとって,コマセとこれに群がる餌取りは海中では滅多にありえない異常事態であり,危険な場所と感知するのかもしれません. この辺の話は餌をどのようにしてチヌの口元へ運ぶべきかを考える上で非常に参考になる証言でしょう.

●Q6の「一気に吸い込む」が,「アタリと合わせ」 で書いた,前アタリになると考えられます.