新潮文庫(上中下)/原卓也訳/1978年7月/41020101061422

 カラマーゾフの兄弟 ドストエフスキー
 村上春樹を読むと読みたくなる小説

 村上春樹の小説を読むと、外国文学が読みたくなる。他にもジャズやクラシックが聞きたくなったり、煙草が吸いたくなったり、アルコールが飲みたくなったりするのだが、なんといっても外国文学。登場人物が外国文学を読んだり、考えている場面が出てくると、そこに出てくる外国文学を読めば、その世界がさらに広がりを見せるのではないかと期待してしまう。

 作中に出てくる多くの外国小説の中でも、「カラマーゾフの兄弟」は特別だ。
 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」「ねじまき鳥クロニクル」に出てくるということはもちろんなのだが、「カラマーゾフの兄弟」の登場人物である「スメルジャコフ」がタイトルに入っている、「スメルジャコフ対織田信長家臣団」という本まで出しているのだ。
 この本の中で、「カラマーゾフの兄弟」について読者とメールでやりとりをしている部分がある。その中から「カラマーゾフの兄弟」に対する村上春樹の言葉をいくつか拾ってみると、

いいですよねえ。僕は大好きです。
登場人物がえんえんときりなくしゃべるところが、19世紀ロシア小説のとんでもない魅力のひとつです。
ドストエフスキーの小説の素晴らしさはやはり、神の存在を痛切に根本的に疑うことによって、神を作り上げた人間という存在の根っこに迫ろうという姿勢にあると思います。
偉大な作家ですね。ドストエフスキーを前にすると、自分が作家であることがむなしくなってきます。
僕もこれまで実にいろんな本を読んできたけれど、いちばんすごい本というと、この『カラマーゾフの兄弟』をあげないわけには行かないと思います。
難しいことが書いてある面白い本って、そんなにはないですよね。

 など、この本に対する愛情すら感じられ、かなり読みたくなる。



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