Scene 1.  もう少し、このままで。





部屋を出る時に視界に入ったデジタル時計の数字は確か、

『2:38』

泉の間まで、膝裏の筋肉を使ってゆっくり、静かに歩みを進める。

精神を集中し、一筋の蒼い光となって飛んでゆく。



「ここまで来ればもう大丈夫かな?」



スニーカーの底をタンッと鳴らして走り出す。

頬の横を冷たい風が翳めてゆく。

塩分を含んだ少し重い風の匂い。


俺の大好きな、海の匂い。


「ガオシャーク!!」


入江の傍まで来て叫ぶと、蒼い身体がすぐに浮かび上がってきた。

俺が来る事を知って、待っていてくれたみたいだ。

パシャパシャと水面を鳴らす仕草で、『おいでおいで』と言っているのが解る。



服を身に着けたそのままの姿で水に入り、ガオシャークの身体に額をコツンとぶつける。





「ありがとな」


「ありがとう」


「決戦が――終わりが近いのは俺だって解ってる」


「なんか…急に…不安になった…」


「おまえの事も…ジュラフの事も………草太郎の…こと…も…」


「全部が終わったら……あいつはきっと……あの人の所へ……行っちゃ…ぅ…」


「俺んとこから……行っちゃぅ………」


「だけど…俺は……草太郎のこと拒めなかった……」


「してる…時…は…俺の事だけ見ててくれる……から……」



「好きだ………っすきなんだ……」




「愛……して…る…」



「失うのが…怖い……笑って…『良かったな』っなんて…言う自信な…い…」


「離れたくない………」



「…好きなんだよぉ………っ」




だから……



「もうすこし……このまま……で……」








                 NEXT   The scene shifts.....




2002.01.30. (2002.01.17.)

新連載!?
結構前に書きあがっていたのですが、続ける自信がなくアップしませんでした。
っていうか心の準備小説(別れ話)にするか慰安小説(らぶらぶ)にするかはまだ決めてません★
小説といえるほど長くないしな。一場面ずつ。
書き始めたのがちゃんこ屋より前だったのでこのエピソードに絡めるか絡めないか…どうするかなぁ…


……とりあえず。


鮫っ子に愛を……!
(ついでに私にも愛を…)