なんでこんなはめに?

これまで観た国内での舞台の感想。役者さんは敬称を略すところあり。

CRAZY FOR YOU(1993年 劇団四季:大阪近鉄劇場)

どんな演目でも、最初に観た舞台の呪縛というのはあると思う。もしくは、最初に感動した舞台か。
これは最初に観たのが四季の舞台だったので先入観なしに見られたのと、あとで冷静に考えても日本語訳がしっくりとくるものだったので、素直に楽しめた。アンサンブルのタップダンスのレベルも当時の私には日本人がここまで踊れるようになったのか、と思えるほどよくそろっていたし、芝居のテンポもよし。
主役ボビー加藤敬二は切れがよく、ニュアンスのあるダンスと安定した歌唱力があり、ポリーの保坂知寿も昔のアメリカ西部の勢いのいい女性を気持ちよく演じていた。
この二人は劇団四季の看板役者さんで、普通は安心してみていられる・・・が、私が見ることになる四季の舞台はこの「普通」のレベルが保たれる割合がちょっとばかり少ないことになる・・・それはまた別のお話で。
近鉄劇場はちょっと天井が低めの劇場だが、この作品には特に支障は出てなかった様子。

オペラ座の怪人(1995年 劇団四季:旧大阪MBS劇場)

この舞台は春から秋にかけて計9回見に行く羽目になった。
つまずいて坂を転げ落ちた、その足下の石のような位置づけの舞台。
役者の歌唱力におもいっきり左右される演目なので、日によって天国に行ったり地獄へ行ったり。
このころはいわゆるフリーターのご身分だったので、平日の朝にふらふらと大阪に行き、何時間か当日券待ちをしていい席が残っていたら見るという・・・贅沢な時間の使い方をしていたな。しかし、金はなかった。
今なら18回ぐらい行っていただろう。

私が見たキャストは
怪人クリスティーヌラウル
沢木順、鈴木京子、石丸幹二。
山口祐一郎、井料瑠美、柳瀬大輔。
そして沢木、井料、石丸という3つの組み合わせ。

話の筋はこちらで見ていただくとして、まず、舞台装置からいってみよう。
「最初に見た舞台」シンドロームが起こっているものと思うのだが、私が見た中で一番なめらかに動いていた。
装置が動くときに音がしない。ドライアイスの煙も十分だった。これをケチると湖のシーンでろうそくの仕掛けが見えてしまって幻想的などというものではない。怪人が消えるシーンも煙が多めで奈落に降りるのが見えにくい。
プロセニアムアーチ(舞台にかかっている額縁のような効果の装飾)の天使像が動かないのも、私はその方が好きだった。
音響は生オケではなくテープなのは予算上仕方のないところか。ときどき音量ミスあり。マイクは普通の台詞のところではスピーカーの存在を意識しないでいられた。まだ、今の四季の舞台によくある爆裂マイク(どこぞのコンサートのような音量で出るのだ)はなかったように思う。

怪人役について。
このときの沢木氏の演技はどちらかというと余裕たっぷりの落ち着いた怪人だった。私はこのハイブロウ(笑)な中年男性の魅力に取り憑かれてしまったと言っていい。最後のあたりの取り乱しっぷりも異常性を強調するというよりは、あんなに信じていた女に裏切られて一世一代のご乱心、というように見受けられてつい、同情してしまう。ここらへんちょっと色眼鏡かかってるかもしれない。
手の動きと間がいいので、安心して観ていられた。「この公演は」。後に福岡で観たときは・・・調子の悪いときもありますね。
それに対して山口氏は完全な精神異常者のものだった。動作も声の調子もそうだ。年寄りくさく見えたり、子供のように怒ったり。前からの山口氏のファンの一部には大変評判が悪かったらしい演技である。しかし、私は役の解釈として納得できた。歌はさすがにすごく声が伸びる。が、ちょっといらないところまで伸ばすきらいあり。
クリスティーヌについて。
鈴木氏は・・・喉の調子がものすごく不安定。最悪の時に観ると目もあてられなかった。ただし演技は常によい。あんなに綺麗に動く人を他に知らない。映画「王様と私」(古い方)のアンナの動きを見て感動したのと同じくらい。クリスティーヌという役はヘタをすると頭の悪い打算的な小娘、というだけで終わってしまうのだが、それだけではない様に見える。自分を取り巻く現実に対応しきれない世間知らずな娘だったところから、怪人との歪んでかつ純粋な依存関係を終わらせるに至るまでを細やかに見せてくれた。それでなくても、あんなに可憐なクリスティーヌなら許す!(超ひいき目)声さえ調子がよければ、私にとって最高のクリスティーヌだった。
井料氏はこの時点ではかなりバタバタとした印象の演技だったが、歌の安定感があった。印象はそれだけである。
ラウルについて。
石丸氏はもう、文句なしの貴族の若様である。「甘いマスク」という言葉がこれほど似合う人はいるまい、と思ったものだ。金持ちのボン。若いからこその怖いもの知らずで傲慢である。どこまでもさわやかくさい。で、嫌みな感じが一つもしないというのはどういうことか。怪人に感情移入するとラウルは好きになれないはずだが、この人のラウルは平気。ていうか素敵。
柳瀬氏は石丸氏と比べてしまうと、印象が薄い。演技は無難な、でもなんだか梨園系なラウル。ちょっと声がこもってしまっていた。まだ姿勢も悪かった。このころ、初めてラウル役に挑戦していたのかな。

初めて観たのは忘れもしない7月18日である。これが、最悪だった。クリスティーヌの声があまりにひどい、という印象しかない。衣装や舞台装置は確かに一見の価値があるが、それだけだと思った。そのせいか(ホントは理由は別にもあるが)怪人にも今ひとつ感情移入できない。で、特にどうとも思わずにいたところ、妹の友達が行けなくなったので私にもう一度チケットがまわってきた。
その2回目が大変よかったのである。一回目と同じキャストなのに全然違う。ラストシーンで泣けました。前は何とも思わなかったのに。
さて、これでようやくCDを買う気になって、オリジナルロンドンキャスト版を買いまして。それに全台詞と歌詞がついてて日本語訳もあり
、劇団四季ではずいぶん端折っている歌詞があるのを知ることになる。
以降、日本語で舞台を観ていても私の頭には英語詞の日本語訳が浮かぶようになるのである。
強い思いこみの賜物、おかげでかなり演歌っぽい(と私は思っている)日本語詞があまり気にならなくなった。
ただし、ある歌詞の変更でそうも言っていられなくなったが。

前のページへ