遍路道中記―4 (16日目〜20日目)

・・・・距離は概算です・・・・
16日目

行動時間 6時30分〜14時50分 45738歩 (8時間20分 33km) 天候=晴・風強し

足摺岬へ

土佐入野のリゾートホテルを出発、足摺岬への長い長い道程の始まり。 37番岩本寺から次の足摺岬先端の札所金剛福寺までは80キロもある区間なのだ。

四万十大橋

爆弾低気圧名残りの強風が吹く四万十大橋を渡る。風圧と戦うような歩き。雨上がりでも四万十の流れにはまったく濁りがなく澄んでいる。さすが“わが国最後の清流”と言われるだけのことはある。

立寄ったコンビニ2店でそれぞれお接待と言われてお茶のペットボルをいただいた。ありがたいが、これで荷が1kg重くなる。1kgは大きい。

足は軽いが、遍路開始当初の無茶歩きを反省し、早足になりすぎないよう自重。

金剛福寺からの打ち戻しに便利なY民宿に立ち寄ると満員お断り。仕方なく10キロ先のH民宿まで足をのばした。

一日中太平洋を見ながら歩く

H民宿は洗濯もお接待としてやってくれて、しかもきれいに畳んで返してくれる。歩き遍路にとって洗濯は重要な日課だが、疲れた体にはけっこう負担になる。こうしたお接待はありがたい。

足裏、指の付け根にマメの兆候、まさか。ハードな登山でもマラソンでもマメなんかできた記憶は一度もないのに・・・・。

この日、民宿Hの泊りは私だけだった。

17日目

行動時間 6時20分〜15時10分 46236歩 (8時間50分 35km) 天候=晴

東海岸の道を南下、足摺岬先端の金剛福寺をめざす。不要の荷物は民宿へ置いてきたのでザックは空っぽ同然、いつもと同じに歩いているつもりでも、速度はかなり速い。

≪38番金剛福寺≫

行動時間 6時20分〜15時10分 46236歩 (8時間50分 35km) 天候=晴

東海岸の道を南下、足摺岬先端の金剛福寺をめざす。
不要の荷物は民宿へ置いてきたのでザックは空っぽ同然、いつもと同じに歩いているつもりでも、速度はかなり速い。

お花見の仲間に入れてもらい、
心安らぐひとときを過ごす

近道の表示が目に入り、山道へ入るとすぐに広々とした公園に出た。満開の桜の下で花見を楽しんでいる6人ほどのお年寄り夫人グループがあった。遍路道を尋ねると丁寧に教えてくれたあと、一緒に食べていきなさいということになって仲間入り。20分ほどご馳走をいただきながら歓談。信州旅行の経験者が多く、信州のことを良く知っていてうれしくなる。(帰宅後、お礼として写真をプリントしてお送りした。するとお礼のハガキが2人の方から届いた。感激してまた手製の絵葉書に言葉を添えて郵送させてもらった。)
教えられた道が何だか怪しい。薄い踏みあとはあるが遍路道という代物ではない。こんな道が遍路道?雑木を分けたり枯れ木をふんづけたりと不安は増すばかり。ときどき遍路道マークがあるから間違いはないだろうが、歩く人がいるのだろうか。

不安な山道から何とか国道へ降り立ってほっと一息。それから民宿までの道のりがことのほか長かった。遍路地図の距離表示が間違えているのではないかと思ってしまう。(清水港の東岸国道を歩かなくても、短絡の遍路道があったらしい。見落としてしまった)

指の付け根は完全なマメになって水ぶくれ、痛む。テープを買って早目に手あてしたいが店など見当たらない。荷物を減らすためにテープを家に置いてきてしまったのか悔やまれる。

民宿H帰着3時10分。けっこう時間をつぶしてきたのに「早かったねえ」と言われる。

18日目

行動時間 7時35分〜15時25分  41680歩 (7時間50分 32km) 天候=晴・強風

民宿Hから市ノ瀬まで宿の車で送ってもらう(約13K)

宿の主人曰く「打ち戻しで、すでに歩いた道だから車で戻る人も多いよ。接待で送ってあげる」という言葉に誘われて市ノ瀬まで車に乗せてもらった。民宿の主人は“お接待”というより、当たり前のことをさせてもらっているという感じだった。マメの痛む足には大いに助かった。

市ノ瀬から歩き始める。海岸を離れて桜満開の山里を行く。 清水川荘経由の道を選ぶ。 終日風が強くて菅笠もかぶれないほど。逆風はかなり体力を消耗させる。加えて足のマメが痛むのが気がかり。
四国は意外に山が多く、流れ下る川もまた多い。どの川も流れは澄み切っていて美しい。

≪39番延光寺≫

満開の桜・・・延光寺

境内は満開の桜。マメの痛みも忘れて癒される。
身障者用トイレのある札所がときどきある。延光寺にもあった。人工肛門のケアをするのに大変ありがたい。
宿毛のビジネスホテル着15時25分。高知県に入ってから、人のいない過疎地ばかり歩いてきたからだろう、商店街などの雰囲気が懐かしく感じられる。

19日目

 
行動時間 6時00分〜14時50分 47069歩 (8時間50分 33km) 天候=逆風強

今日も西の逆風強く難儀する。

  ≪純友城址(点名松尾峠)332m四等三角点≫

 
純友城址展望台からの宿毛湾 純友城址 332m 














宿毛の市街地ホテルからすぐ山間の道へと入る。

ひと汗かくと標高300mの松尾峠。さらに10分ほど登ると、四等三角点のピーク。宿毛湾一望の純友城址展望台がある。寄り道をして宿毛湾の美しい眺めにしばし見とれた。

松尾峠の県境をまたぐと高知県から愛媛県に変わる。長かった高知県がようやく終わった。ちなみに遍路道の距離は『徳島県220km、高知県385km、愛媛県359km、香川県153km』ということだ。愛媛県に入ったとたん、見違えるほど道がよくなった。

足裏のマメは体重を載せると痛いがもう気にしない。気にしたところでどうにもならない。マメを踏みつぶすようにして少し乱暴に歩く。

≪40番観自在寺≫ 

街中、平地にある寺。

観自在寺

観自在寺を打ったあと、通りかかった青年に「お接待させて下さい」と声をかけられた。青年は財布を開いて数えもせずに小銭を渡してくれた。「歩きお遍路さんは神様です」という。「こうしてご接待をして下さるあなたこそほんとうの神様です」と手を合わせて納札(おさめふだ)を渡し、“南無大師遍照金剛”を3回唱えて謝礼。(137円)

満開の桜を愛で、代かき、田植えの長閑な田園風景になごみながら足を運ぶ。ふと頭の中が空っぽになって、無念無想の境地で歩いている自分に気づくことがある。こんなとき、道案内の遍路表示を見落としてしまう。

山道はそれなりに覚悟して登るが、国道などのアップダウンは気持的に結構こたえる。今日も国道のアップダウン多い日だ。再び眼下に海が見えてきて、愛南町の旅館へ到着。

宿の窓からは明日越える太子峰がよく見える。遍路をしていても山が気にかかるのは“山好きの性”いうもの。

20日目

行動時間 5時55分〜15時50分 (9時間55分 39km) 天候=遍路日和

≪太子峰502m三等三角点≫

大子峰山頂あたり

今日は札所のない日、500mの山越え。軽快に足を進めて山頂手前の“いやしの椅子”と表示されたベンチから藪をかき分けて太子峰の三角点を目ざす。国地院地図と照らしながら三角点を探すものの、平坦状の広いピークから三角点標石を見つけることは至難、結局諦めざるをえなかった。

舗装道のわずかな割れ目でスミレの花が健気に咲いている。マメの痛みなんか我慢しろ、ガンバレと励まされている気がする。サクラ、タンポポ、菜の花…春爛漫の四国路。

ドラッグストアでマメ手入れのためのテープ、バンソウコウをようやく買うことができた。

今日の宿は宇和島市駅前ビジネスホテル。

時間が早かったので荷物をホテルへ預け、8キロ先の務田駅まで距離をかせぎ、宇和島駅まで電車で戻る。
人の気配の薄いところばかり歩いてきたあと、都会的雰囲気のある宇和島駅周辺は久々に文化の香りを嗅ぐような気分。

入浴後、バンソウコウなどでマメの手当。両足とも足裏指の付け根あたりに出来たマメがすでにつぶれていた。マメ以外は体調すこぶる良好。


  
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