オストミー(人工肛門保有者)の生活日記



2001.08.04〜10日
≪2001.08.04・・・・午後6時≫
振りかえって見れば、北海道での道中、パウチの中にウンコちゃんを溜めたという状況は1回も起こらなかった。奇跡的な快挙としか言いようがない。
昨日は長かった山旅から帰って、ストーマちゃんともども「ご苦労様の!!」の大乾杯。

おっ、ちょっと待った、その前にすることが・・・・・
何しろ北海道で洗腸してから既に3日と12時間、もうウンコちゃんはストーマの出口で外へ出たくてひしめき合っている。早く何とかしてあげないとかわいそう。それにしても3日半、良く頑張ってくれたよね。ありがとうよ。

勝手知ったる我が家の暑いトイレで洗腸。やっぱりやりやすいよね。
ところが排出が滞りがちで時間がかかる。椅子に座ってじっとしているのがいけないらしい。野天の洗腸の5割増しの時間がかかってしまった。楽をしては良い結果は得られない。これ人生のセオリーだった。
まあ急ぐこともない、ゆっくりやるさ。

かくしてまたいつもの平に戻りました。


≪2001.08.05≫
やっぱり我が家はリラックスできる。
ストーマちゃんも緊張が解けたせいか、昼ころウンコちゃんが出てきた。いつものコロコロではなくて立派に一人前のウンコだ。洗腸からまだ1日と20時間ほどしかたっていないのに、これは何とも予定外に早いお出ましだった。
考えて見れば、3日に帰宅してからこれまでの分を取り返すようにビールも飲んだし、それになんてったってこの暑さ、北海道帰りにはことさら辛い。そこで冷たいものが欲しくてジュース、牛乳、麦茶・・・次々と飲みまくった。
朝からデカオナラが連発で出ていてイヤな予感はしていた。
これじゃあ仕方ないよね。

暑くて洗腸をする気にもなれないし、パウチで明日の夕方まで(20数時間)頑張ることにした。
●パウチの中には食用油を2CCと、便の臭いを消す消臭液(便を分解して臭いのない状態にするバクテリアらしい)を数滴入れます。確かに効果はあるようです。
食用油を入れるのは、便がパウチのストーマ付近にへばりついて下に落ちないと、やがて接着部分にもぐりこんでいって、パウチを剥がしてしまいます。パウチ内面に油幕を作って便をスムーズに下へ落とす潤滑油です。

≪2001.08.06≫
昨日の昼から丸一日パウチをつけて過ごした。
汚い話しだが、ウンコちゃんの入った袋をぶら下げて生活するというのは、あんまり気分良いものではない。でもこれが人工肛門となった者の宿命、しかたないよね。

パウチを取り替えずに24時間、どれどれどのくらい溜まったかな。1日1回ウンコをする人の量と比べるとずいぶん少ない感じがする。人工肛門になる前は、どのくらいのウンコをしていたか思い出せない。もう14年も昔だからね。それに自分のウンコまじまじと見つめたことなんかなかったもん。

夕方の洗腸を予定していたが、ガス抜き孔からかすかにただようウンコちゃんの臭いも気になるし、結局正午前に洗腸を始めた。水切れならぬ「ウンコ切れ」が悪いと言うのか、もう出ないだろうと思ったのに、またちょっぴりということを3回も繰り返してしまった。北海道の野洗腸の方がよっぽど順調だった。

ところで使用済みのパウチの処理はイヤだネエ。
パウチをハサミで開き、便器の中の水で、使い捨てビニール手袋をはめてきれいに洗う作業。今は汚いという感覚はなくなったが、面倒なんだよね。用便の後でチョイチョイッとお尻を拭いて、紙をポイッと捨ててハイおしまい。そのころが懐かしいよ、本当に・・・・

さて今度はいつものように3日サイクルに戻れるか。気がもめる3日間になりそうだ。

≪2001.08.07≫
きのう洗腸をしたばかりだから、今日はウンコちゃんとは無縁の一日になるはず。
北海道山行記の整理でもしてのんびり過ごそう。
それにしても暑いネエ。奈良ッてどうしてこう暑いの?まったく死にそうだヨ。

久々に今朝はジョギング30分でたっぷりと汗を流した。飲んだビールをしぼり出そうと思うのだけれど。
これでウンコちゃんに良い影響が出て、洗腸3日サイクルにうまく戻れるかなあ・・・・ちょっと甘いような気もしないではないが、まあ様子を見てみるか。

やたらとガスが多いネエ。それもボリュウムたっぶりでかなり臭いヤツ。北海道ではこなんな堂々としたオナラちゃんはなかったなあ。原因はビールとわかっているけど、この暑さで控えろというのも酷だヨネ。
ともあれ今日はウンコなしで終ってよかった。


≪2001.08.08≫
北海道から帰ってもう6日、どうも調子が戻らない。

さて今朝起きて見ると、ティッシュの中にウサギちゃんのコロコロウンコが二つ、おやおやもうですか・・・。ちょっと、かわいいストーマちゃん、洗腸から1日半しかたっていないんだよ。
昨日から臭くてデカイオナラちゃんが出ていたものね。ガスに押し出されて来たのだネ。

奥様が「お父さん、シーツの上にコロンと一つ落ちてますよ」だと。合わせてコロコロが3個出ていたわけだ。
今までも、そうとは知らずに朝起きてトイレへ行く途中でコロコロが廊下に落ちていたりなんて言うこともあったし、まあ驚くにはあたらない日常茶飯事ってとこ。

ということで仕方なく48時間(昼の12時過ぎころ)で洗腸をするハメになっちゃった。この洗腸がまた終わり際が悪くてすっきりとしない。この調子だと次のウンコもどうやら早い予感がする。

ビールをはじめとして次々と冷たいものを飲み、夜はクーラーをかけてお腹出しっぱなしで寝ているし、これじゃストーマちゃんをいたわるなんていう気持ちはかけらもない。世の中すべて努力、努力もせずに報われようなんて、そんなことが許されるはずもない。
しょうがない、もう少し涼しくなるのを待つとしよう。


≪2001.08.09≫
まあ何とか無事に一日が暮れた。

ただオナラちゃんだけはめっぽう多いネエ。
何とて言うのか、湿っぽくて陰気なオナラ・・・・この表現わかるかなあ。少なくても快活でカラッとしたヤツではない。
ストーマの出口に溜まったウンコちゃんを、奥の方からかき分け押し分け、ようやく出てきたオナラ。ため息にも似た切なそうな音、おまけに臭いったらない。全くやんなっちゃうヨ。

こう言うときは景気よくて元気なデカイのが懐かしいね。

●ビールを飲むということは泡、つまりガスも一緒に飲んでいるわけですよね。そのガスを上(口)から出すか下(肛門)から出すか、どっちにしろ永久にお腹にしまっておくなんて言うことは松嶋菜々子ちゃんだって田中真紀子大臣だってゼッタイにできない。
だから私はビールを飲んだときは無理しても口からゲップするように心がけているのです。だけど全部は出し切れない。結局かなりのものがオナラちゃんに化けてしまうのです。
思い出した。定年退職するまでは、真夏でもほとんどビールは飲まなかった。炭酸系の清涼飲料もご法度だった。そりゃあどんなに飲みたかったかしれない。とにかくオナラを出さないためのいじましい努力を続けていたのです。
退職したらガンガン飲んでヤルッ〜〜、と言うことで今があるってわけヨ。

≪2001.08.10≫
朝起きたら、またコロコロが二つ分ほど出ていた。まだ丸2日も経っていないんだけどなア。
今回はかぶせてあるティッシュの中におとなしくおさまっていて、シーツにこぼれたヤツもない。
いつものパターンだと、出番を待っていたウンコちゃんたちが、このあとひきづづいて出てくるのだけれど果たしてどうなるか。

ストーマにティッシュをかぶせ、サージカルテープで押さえてジョギングに出た。30分ほどだったがウンコちゃんは出なかった。シャワーを浴びて、あとはまたティッシュ4つ折りをかぶせただけで様子をうかがう。昼前に親指ほどの量が一度出たが、その後はウンコちゃん出るのを忘れてしまったのかおさまっている。
このままいけば明日の昼、つまり丸3日もつかもしれない。これは何日ぶりかの希望の光・・・

結局パウチなしで一日過ごした。

●ウンコちゃんが出ないのは嬉しいが、ちょっと困ったことも・・・・
ストーマ出口に詰まったウンコちゃんの隙間をかき分けて出てくる臭いオナラ。思わず何でこんなに臭いのヨー、と言いたい。これが他人様のだったら1分30秒は息を止めてガマンしちゃう。電車やバスの中だったらさあ大変、場合によっては悪臭騒動でおまわりさんが駆けつけるおそれもある。
それを犬みたいに臭いを確かめる行為は、わが身から出たヤツだから出きる芸当。だけど何か切ない気分にもなるなあ。

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