「何かそれって、ドラマですね。」母が溜息を漏らす。 「当日、ホンの一瞬だけど空港へ向かう彼女に会えたんだ。その時、私は彼女にある約 束をした。」 ゆっくりとみんなの顔を見渡し 「君がドイツへ旅立つ瞬間、僕はあの飛行機で必ず飛び立ってみせる。だから、窓から 空を見ていて欲しい。君の横をきっと飛んでみせるから…。そしてその時、窓から君に 花束を渡そう…。」 「何か、今の山地からは想像もつかんな。」じいさんが照れくさそうに頭を掻く。 「それで…それで、どうなったんですか。」キテレツが興奮した様に聞いてくる。 「あのな…キテレツ。」ポンと院長がキテレツの肩をたたく。 「飛行機の窓は開かないんだ。」 呆気にとられている皆をよそに、悠々と院長は病室を後にした。ページをめくる