劇団110SHOWインターネット公演 〜院長の場合〜 page5

前に戻る


「何かそれって、ドラマですね。」母が溜息を漏らす。

「当日、ホンの一瞬だけど空港へ向かう彼女に会えたんだ。その時、私は彼女にある約
束をした。」
ゆっくりとみんなの顔を見渡し
「君がドイツへ旅立つ瞬間、僕はあの飛行機で必ず飛び立ってみせる。だから、窓から
空を見ていて欲しい。君の横をきっと飛んでみせるから…。そしてその時、窓から君に
花束を渡そう…。」

「何か、今の山地からは想像もつかんな。」じいさんが照れくさそうに頭を掻く。

「それで…それで、どうなったんですか。」キテレツが興奮した様に聞いてくる。

「あのな…キテレツ。」ポンと院長がキテレツの肩をたたく。

「飛行機の窓は開かないんだ。」

呆気にとられている皆をよそに、悠々と院長は病室を後にした。
ページをめくるじじい