エジプト徒然草
 
其の7


1998.03.29(日)
色の意味[2]


 もう少し、古代エジプト人色に対する捉えかたについて、前回に引き続き『色』の話です。

 古代エジプトでは、基本色とされたのは、『赤(ジェセル)』、『黒(ケム)』、『白(ヘジュ)』、『黄(ケニイト)』、『緑(ウアジュ)』、『青(ケセベジュ)』の6色だったそうです。 それぞれは、下記の様に自然と結びついていました。

色の持つ意味(古代エジプト)
意味
 砂漠の色。 また、血や火の色であることから気持ちの昂ぶりとも関連。
 赤でも、顔色は「チェメス」、亜麻布の赤は、「イデミィ」、輝く様に赤い布の色は、「イネスイ」、紅玉髄の赤は、「メケンメト」と言うように呼び分けられていた。
 耕地の色。 また、闇の色(漆黒の闇)を示したことから、冥界の色と関連づけられアヌビス神をはじめとする冥界の神、死者の色とされた。
 日中の輝く太陽の光の色。 また、磨かれた石灰岩の白い輝き。
神々の衣服の色等とされた。
 『金』の輝きに近い色。 永遠の輝きを失わない金色として、神の肉体の色として使用された。
 樹木の色。 ナイルの増水が引いたあとの最初に黒い土に芽生える色であることから、生命、再生復活、若さ、繁栄などに結び付けられた。
 青(ケセベジュ)は、古王国時代に見つかった天然顔料らしい。
色そのものを示す「イレティウ」という語は、「ケセベジュ」とはまた違う青だった様である。 また、トルコ石の青緑色は、「メフェカト」と表された。


 各色が、日本人の言うところの各色とマッチしているとは限らないのですが、参考までに、日本人とってのの上記の夫々の色についてのイメージは、下記の様だとされます。
(参考:「新・カラーイメージ事典」)

色の持つ意味(日本人)
意味
 古代においては、赤は、特に真赤(朱に比較すると明るさに欠ける)は血の色、汚れた色として禁忌の色であった。 対して、炎の燃え立つ日輪を示す様な朱色(黄を含んだ鮮やかな赤)は聖なる「ハレ」の色とされた。
 暗闇の色。 日本人は農耕民族であるが、日が陰り、あたりが闇になってしまっては、稲が育たないことから闇は恐れられた。 白が日照として白浄とされたのに、対し、黒は、黒不浄として忌み嫌われた。 黒は、汚れて、死を意味する悪しき色、凶作の世界を表したのかもしれない。
 白い光は、澄んだ空に輝く陽光を示す。 白光が遮られると稲の発育が悪くなる為、白への真紅は、豊作への願いでもあった。
また、死出の装束が白であったり、切腹を命じられた武士が着るものが白の帷子であったりと、白は、非情できびしいイメージも持つ。
 「黄=金」のイメージから大阪等の商人には、艶やかな色としてもてはやされた様である。  しかし、基本的には、黄を配色に使わぬ嗜好を古くからもっていた様であり、タイ、インド、中国等で黄が使われる様な場面(寺院の装飾等)では、代わりに白が使われている場面が多い。 
 日本人に特に親しまれたのは、緑の中でも、稲の色にあたる萌黄色(黄緑系緑)とされる。 緑の資源に恵まれた風土からか、緑は明るい生活感のある色である。
 日本人には、青という言葉は、青、藍だけでなく緑も含む。 いずれにしても生命感を伝えるイメージである。 特に海の色でもある藍染めの青は、ジャパニーズ・ブルーと言われる程、日本の特徴的な青である。


 エジプトが、砂漠=赤い土地『デシェレト』と、耕地=黒い土地『ケメト』で、表されるのに対し、日本は、心の白に、恵まれた自然の青(緑を含む)という感じでしょうか?
 しかし、白=太陽光、黒=暗闇、赤=血、炎、緑=樹木、植物といった基本的な点は共通点が見られます。 ただ、実際にどの色を特に好むかという所に、風土や、文化が大きく影響する様です。

 色の話も、本格的に、はじめると、深みにはまりそうですので、今回はこの辺で(^。^)

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