ラインのしなやかさ(測定方法)


 強度と並ぶラインの重要な特性として「しなやかさ」があります。強度の測定だけでは片手落ちなので、しなやかさを表す指標として「曲げ弾性」の測定を試みました。ラインはカール(糸癖)が付いていますので、精度のある測定をするためにはカールの影響を除去することがポイントでした。
試行錯誤した末、折り曲げた2本に束ねたラインの曲げ弾性を測定することにしました。

1.カールの影響の除去

  ラインのカールの程度、反りの向き(上反り/下反り)では曲げ弾性が大きく異なる。ラインを引張ってもカールを完全に取り除くことは難しく、精度良い測定は望めない。カールの向きが水平になるように ラインを固定すれば測定は可能のはずだが、カールのために真っ直ぐなラインとはならず、カールの程度、方向を一定に保つのも難しかった。結局1本のラインの曲げ弾性を測定するのは諦めた。


 そこでカールの向きが逆となるように2本のラインを束ねて測定する方法を試した。この方法もいくつか問題はあったが、ある程度精度が得られたので、採用することにした。

採用した測定方法は、まず右の写真のように約14cmのラインの中央をカールの円弧をたたむ方向に折り曲げる。

 


 次に右の写真のように折り曲げた部分に
ハリスのガン玉傷防止で使用したビニールチューブ(5mm)を通し、ラインの反対の端を揃えて指でつかむことにより、そこそこ真っ直ぐなライン(2本の束)とできた。

さらに折り曲げ部分の穴は錘を吊すのに好都合であった。

 

 

2.錘

 曲げ弾性を測定する錘として重さが違う 5種類の錘を用意した。バッカンのサイドポケット改に使用したステンレス金網のワイヤーを2,4,6,8,10cmに切ったものを使用し、吊り下げるために端を曲げた(右写真)。
錘は軽い方からNO.1〜NO.5とし、その重量は下図の通り。尚、ラインを束ねるためのビニールチューブの重量は0.003gで、無視できるような?できないような ?微妙な重量だった。

長さ(cm) 重量(g)
No.1 2 0.014
No.2 4 0.028
No.3 6 0.040
No.4 8 0.057
No.5 10 0.070

3.測定方法

(1)ラインの束は垂直(上下2本)ではなく水平(左右2本)になるように持つ。

(2)「そこそこ真っ直ぐ」なラインの束と言ってもやはりカールの影響が残っており、下の2枚の写真のようにラインの束の持ち方によって反りの方向[上反り(下の写真左)/下反り(下の写真中央)]が異なったので両方の場合について測定する。最初に上反りから測定することにする。

(3)指がゼロ点、先端が 5cmになるように持つ位置を調整し、両端が水平となるように固定した。
  *5cmは端から端の水平方向の変位であり、反りがあるとライン(束)の実際の長さは
   5cmより長くなることに注意。

(4)錘を吊り下げ、曲がり(縦軸の変位:cm)を測定する(下の写真右)。測定の順番は最初に上反りでNO.1錘→2→3→4→5、次に下反りに持ち替えてNO.1錘→2→3→4→5の順に統一した。

(5)ラインを替えて計3回測定し、3回の平均値で曲げ弾性を計算した。

 

4.測定精度の検証

 曲げ弾性の測定例としてフロロカーボン1.2号の測定結果を図に示す。カールの影響が残っているため、上反り/下反りで曲げ弾性が大きく異なる結果(下図左)であった。しかしその平均値(下図右)を取るとある程度再現性があるデータとなった。平均を取ることによりカールの影響を概ね除去できた。

  
 

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