7.デカン(十分角)



 エジプトの天文学に関する最も古く、詳細な文献は、中王国時代(前2055-1650)初期の木棺の蓋に描かれた「対角線暦」あるいは「星時計」と呼ばれるものである。 同様のものは末期王朝にも見られる。 これらの暦では36の行があり、夜空の星が36のデカン(十分角)に分けられて列挙されている。 天空で太陽が1年間に動いていくコースは黄道と呼ばれるが、季節によって変化する星の動きを知る目安として、黄道の南側の星を36のグループに、すなわち10日毎に夜明けに地平線上に現れる星のグループに分割したのである。
 また、各デカンには、地球の回転方向に番号が付けられている。 先に述べた、中王国時代の木棺に描かれたデカンでは、水平の線が夜を各12/40の部分に分けている。 これは、各デカンの出が、1年の1/36の期間(ほぼ10日強)につき40分づつ前方にずれるからである。 これらの座標の上に各星の移動が表示されていたことからこの星図が星によって時間を知るために用いられた可能性があるとされ、『対角線星時計』とも呼ばれる様になった由来である。

 デカンは、これらだけではなく、セネンムトの墓(前1460頃、現在知られている天井天体図としては最古のものと言われる)、ラムセウムの天井画(前1300頃)をはじめとして、墳墓や神殿の天井にも多くみられる。 下の写真は、デンデラのハトホル神殿の天井に描かれた天体図の一部であるが、天を旅する神々の姿でデカンが描かれている。

デンデラ ハトホル神殿のデカン


 各デカンを表す図について、 "THE GODS OF THE EGYPTIANS" (E.A.WALLIS BUDGE)を元に、一覧を下記に作成してみましたので、どの図がどのデカンにあたるのかご覧下さい。(注:ただし、各デカンの神々について私の知識不足で、一般にどう呼び習わされている神かつかめなかったものは原文のままとしました。) 表中にもコメントしたが、天井の図の下段の右から二番目の何かに座って指を咥えている子供が恐らくデカンの27番目にあたるであろう。


古代エジプトのデカン
デカン 各デカンの図 各デカンの神々
1 頭に太陽円盤を載せた男性、手にヘカ(牧民の杖)と呼ばれる杖を持つ ゲブ神
または、HAPI-ASMAT、
または、Hapi-Mestha
2 指を咥えた子供が蛇とともに船に乗っている。 バー
または、イシス女神
3 鳥のような顔をした人物が二重冠を被っている。 KHWNRWR-KHET
または、イシス女神
または、ホルスの息子達
4 鳥のような顔をして、アテフ冠(ダチョウの羽根と山羊の角で飾られている)を被り、ウアス杖を持つ人物 NEBT-TEP-AHET
またはホルスの息子達
5 白冠をかぶりウアス杖を持つ男性 MESTHA-HAPI
または、ドゥアムテフ
6 アテフ冠を被りウアス杖を持つ男性 MESTHA-HAPI
または、ドゥアムテフ
7 太陽円盤と山羊の角を頭にのせた鳥の様な人物、ウアス杖を持つ ケベフセヌエフ
または、ドゥアムテフ
8 太陽円盤とコブラを頭にのせウアス杖を持つ男性 ドゥアムテフ
9 二重冠を被りウアス杖を持つ男性 ドゥアムテフケベフセヌエフ
または、ハピ
10 太陽円盤を頭にのせウアス杖を持つ鳥のような顔の人物 ドゥアムテフ
またはハピ
11 アテフ冠を被り右手にヘカ(牧民の杖)、左手にネケク(農民の杖)を持つ。 ホルス
12 星4つが一番上、その下に人の横顔、次に前腕(ヒエログリフの"a")、その下に水差し立ての形のヒエログリフ セト
13 大きな円盤の中に動物が座っている ホルス
14 鳥の様な顔の人物がウアス杖を持つ イシス女神
15 太陽円盤を頭にのせウアス杖を持つ鳥の様な顔の人物 セトまたは、Ur
16 コブラを頭にのせウアス杖を持つ男性 ホルスまたは、Ur
17 顔が太陽円盤(?)で、ウアス杖を持つ人物 MESTHA、ハピドゥアムテフ
ケベフセヌエフ
18 二重王冠を被りウアス杖を持つ男性 ホルス
19 二重王冠を被りウアス杖を持つ男性 ハピ
20 アテフ冠をかぶりウアス杖を持つ鳥のような顔の人物 イシス女神
21 ウアス杖を持つ女性 ドゥアムテフケベフセヌエフ
22 ウアス杖を持つ男性 ケベフセヌエフ
23 ウアス杖を持ち犬の様な顔をした人物(アヌビス神?)
24 アテフ冠を被りウアス杖を持つトキの様な顔の人物(トト神?) ドゥアムテフケベフセヌエフ
25 鳥の様な顔で何かを被っているウアス杖を持つ人物 MESTHA、ハピ
26 山羊の角を被った、ウアス杖を持つ鳥の様な顔の人物
(ハトホル神殿の天井図の下段の一番右の人物)
ホルス
27 ロータスの上に腰掛けた指を咥えた子供
(ハトホル神殿の天井図の下段の右から2番目)
ホルス
28 頭に円盤を載せ、ロータスの上に座っている指を咥えた子供
(ハトホル神殿の…上手の下段の右から3番目 ・・・以下続く)
ホルス
29 アテフ冠を被りウアス杖を持つ男性
30 頭にパピルスの冠を載せウアス杖を持つ男性(ハピ神?) MESTHA,ハピ、ケベフセヌエフ
ドァムテフ、ケベフセヌエフ、ハピ
31 二重王冠を被りウアス杖を持つ鳥の様な顔の人物 ハピ
32 白冠を被りウアス杖を持つ男性 MESTHA
33 頭にコブラを載せ、ロータスの杖を持つ、顔がライオンの女性(テフネト女神?) ドゥアムテフケベフセヌエフ
34 アテフ冠を被りウアス杖を持ち椅子に座る男性 MAAT-HERU、ホルス
35 アテフ冠を被り、ウアス杖を持つ朱鷺頭の人物(トト神?) MAAT-HERU、ホルス
36 船の上には、舳先に指を咥えている二重王冠を被った子供、次に、羽根のついた山羊の角で囲まれた太陽円盤を頭にのせロータスの杖をもって椅子に座る女性、最後にマートの羽根のついた山羊の角で囲まれた太陽円盤を頭にのせロータスの杖を持ち椅子に座った男性。
 さらにその後ろに小さな船があり、その上のロータスから蛇(?)が浮んでいる。
MAAT-HERU
37 頭に太陽円盤とコブラをのせウアス杖を持つ鳥の様な顔の人物 MAAT-HERU、イシス女神


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